将棋の藤井聡太五冠は5日、棋王戦の第3局に臨みました。勝てば六冠達成でしたが黒星をつけ、六冠は「お預け」となりました。逆転に次ぐ逆転の大熱戦に、師匠は厳しくも温かなエールを贈りました。

 5日、新潟市で行われた棋王戦五番勝負の第3局。棋王、そして名人を持つ渡辺明二冠に2連勝している藤井聡太五冠は、今回勝てば棋王を奪取で、羽生善治九段に次ぐ史上2人目の六冠達成となります。

(リポート)
「瀬戸市文化センターでは、藤井聡太五冠を応援しようと多くの人が集まっています。藤井聡太六冠の誕生を祝うくす玉も準備されています」

 藤井五冠の地元・愛知県瀬戸市では、パブリックビューイングに多くの人が足を運びました。

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瀬戸市民:
「皆さんとこうやってお祝いしたいなと」

別の瀬戸市民:
「藤井君なら勝ってくれると思います」

 今回、藤井五冠は28連勝と好調が続いている先手番でした。得意の角換わり腰掛け銀で挑みますが、中盤からは徐々に押され気味に。

 しかし、AIの評価値が二転三転。絶体絶命のピンチとなったその時、まさかの大逆転のチャンスに盛り上がりますが、藤井五冠は珍しく詰みを逃してしまいます。

 何度もがっくりとうなだれる藤井五冠。午後8時13分、174手で渡辺二冠が勝利し、タイトル保持者の意地を見せました。

渡辺二冠:
「いやー、だいぶ追い込まれてしまったので、ちょっともう負けになってでもという感じでやってました」

藤井五冠:
「最後は一瞬チャンスが(あり)そこは少し残念ではあるんですけど、ただ全体的には負けの局面が続いていたとは思うので、仕方ないのかなという感じです」

 六冠は次回以降にお預け。しかし、5日の激戦を師匠の杉本昌隆八段は次のように振り返ります。

杉本昌隆八段:
「ずっと渡辺棋王のペースで進んでいたんですね。かなり入念に準備されていたなっていうのも分かりましたし、あのまま本来は圧勝して渡辺さんの勝ちで終わるはずだったんですよ。(藤井五冠が)もし勝ってしまうとあまりにも大逆転なので、そういう拾い勝ちというのは藤井竜王には似合わないかなと」

 藤井五冠は先手番の連勝記録も28でストップ。先日、渡辺二冠はこの勝率の高さをあるものに例えていました。

Q.渡辺二冠は藤井五冠が先手番で負ける確率を『ガリガリ君の当たりが出るのと同じくらいの確率』と話していたが?

杉本昌隆八段:
「ガリガリ君を何回か買っているけど多分1回も当たっていなくて、だから結構な(低い)確率だとは思っているんですけど。将棋でずっと先手番で勝ち続けるってことはありえないので、どこかで必ず負けるわけで。終わった後の感想戦がすごく楽しそうで、むしろ感想戦をもっとたくさんやりたいみたいな感じすら受けたので、体力が有り余っている証拠ですから全然そういうのは心配していないです」

 黒星とはいえ、依然六冠に王手がかかる藤井五冠。次の対局は8日、名人への挑戦がかかった順位戦A級プレーオフで、さらにその3日後には、初防衛がかかる王将戦も控えています。

Q.ベテラン勢が藤井五冠に襲い掛かってくるような状態だが?

杉本昌隆八段:
「タイトルを多く持つ棋士の宿命ですからね。たくさんのトップ棋士と対戦してきて、むしろまた今学んでいる状態なのかなと。あれだけの逆転負けをしてしまったということも、1つの大きな経験だと思います」