
例年の夏休み期間、岐阜県の世界遺産「白川郷」は多くの観光客で賑わいますが、この夏は更なるコロナ感染拡大の影響で観光客が激減しました。
白川郷では村民が使える地域商品券の発行や、村の名物がお得に買えるイベントを企画するなど、地域で支え合っています。
■“我が町の魅力”を再発見…村民を対象とした地域商品券を発行

去年の秋から少しずつ活気が戻りつつあった白川郷ですが、この夏の“コロナ第5波”の到来により再び観光客が激減しました。
【画像20枚で見る】観光客激減の世界遺産・白川郷 地域で支え合い待つ“アフターコロナ”

8月21日。夏休み期間にも関わらず、観光客の姿は数えるほどしか見当たりません。国の重要文化財・合掌造りの和田家も、感染対策のお願いをしながら営業をしています。
館長の和田正人さん
「コロナがこれだけまん延し始めると、来ていただくことに恐ろしさもあったりし、複雑な思いでいます」

観光が大きな収入源の白川村は、人口が少ないこともあり12歳以上の村民は希望者全員がワクチン接種を済ませています。それでも、他県からのお客さんを手放しで喜べない状況にあり、村民を対象とした『白川村を元気にする商品券』の販売を始めました。
地元の人たちに“我が町の魅力”を再発見してもらおうと発行された“地域商品券”です。

この商品券は、1冊1万円で2万円分の買い物ができます。村のスーパーでは、この商品券を使って買い物をする村民の姿がありました…。
男性客:
「助かります、全部使えますので。ガソリンとかお土産にも使わせていただいています」

お店側は…。
飛騨農業協同組合の担当者:
「コロナになってから観光客も少なく、三割弱(売上ダウンの)影響を受けております」

商品券の恩恵はありつつも、観光客が減った分を取り戻すまでには至っていないようです。
■特産品をお得に購入できるイベント計画も…感染急拡大により8月開催は見送りに

村では、さらなる追加の経済対策も企画しました。
白川村役場の担当者:
「白川村の新しい産品であります、“結旨豚” (ゆいうまぶた)や“白川郷産品”を紹介する機会としまして、7月8月と郷フェスというイベントを開催しています」

地元の18店舗が参加する特産品を割安に購入できるイベント「郷フェス」を計画していましたが、コロナの感染急拡大により8月の開催は見送ることに…。白川郷のメインストリートにある郷土料理のお店では…。

白川村の郷土料理店の女将:
「カレーと麻婆豆腐と2種類予定でした。(今は)お店の存続すら、危ぶまれているくらい大変です」

この店は、イベント用に旨味が強い地元の特産豚を使った「結旨豚カレー」(880円)と、名物の少し硬い“合掌とうふ“を使った「麻婆豆腐膳」(1000円)を用意していたといいます。店は週末でも厳しい状況が続き、今は県内からの観光客頼りです。

岐阜県内から来た男性:
「コロナなので県内ですませようと…。娘が白川郷来たことがないので、初めて(連れて)来ました」
同・娘:
「授業とかで聞いていたんですけど、きれいな建物で心が落ち着く感じで良かったです」

同・女将:
「人が動くとコロナも動くと言われていますので…。何とか皆さんにご協力いただいて早く終息して欲しいです」
■今の村の光景信じられない…帰省した地元の女性大生も驚く村の閑散ぶり

土産物店に併設された飛騨牛の握り寿司店では…。
握り寿司店の女性:
「全然人がいないですね。コロナになる前の20分の1とか…」

村主催のイベントは中止になってしまいましたが、この店では炙った結旨豚の塩ワサビと焦がしニンニク醤油の「結旨豚にぎり2種盛」(600円)や…。

飛騨牛の炙りに軍艦、結旨豚の塩ワサビの「飛騨の至福3種盛」(1000円)を用意。

さらにイベントのチケットや地域商品券を1000円分使ったお客さんには、梅ソーダをプレゼントしています。
同・女性:
「今年は梅が豊作でしたので、みんなの沈んでいる心が少しでも…と思って」

店を訪れていた地元に帰省した2人の女子大生は…。
村出身の女子大生:
「こんなに道が見える白川村はないよね。(以前は)車とか通れないもんね、人がいすぎて」
この地で生まれ育った彼女たちにとっても、今の光景は信じられないようです。
別の女子大生:
「美味しかったです。久々に帰ってきて食べられて幸せです」
■クラウドファンディングで資金集め…アフターコロナ見据え檜風呂作りを計画する老舗旅館

明治末期から続く、白川郷の中でも屈指の老舗旅館「城山館」。去年の秋には、客足が戻りつつありましたが…。

四代目の松古卓也さん:
「冬に向けて緊急事態宣言がありまして、白川郷のメインイベントのライトアップも中止ということで…」

イベント中止の影響で観光客は激減。そこで村民限定で、飛騨牛ステーキをお値打ちに提供、裏メニューのラーメンをランチで出す試みもしました。

それでも売上が補填されるほどの効果は得られず、アフターコロナに向けてより魅力的な宿にする計画を立てています。

約15年前に雪の被害で長年使っていなかった、内風呂の改修計画です。クラウドファンディングで資金を集め、年末までに完成させる予定です。

松古さん:
「今は耐え忍ぶ時だと。できることをしっかりと、勇気をもって力強く進むことが大事かな…」
「今は耐え忍ぶ時」。そこには、地域で支えあう白川郷の姿がありました。