2001年に開業した愛知県豊田市の「松坂屋豊田店」は、新型コロナなどの影響による売上の落ち込みもあり、9月いっぱいをもち閉店しました。開業から20年、最終日は多くの人が最後を見届けました。

■閉店セールには63万人もの人…「松坂屋豊田店」20年の歴史に幕

「閉店」という苦渋の決断を迫られた「松坂屋豊田店」で6月から行われた「感謝さよならセール」。3か月で63万人もの人が訪れました。

【画像20枚で見る】20年の歴史に幕…松坂屋豊田店の“最後の一日” 感謝と共に複雑な思い抱える人々

女性客(70代):
「大好きです、松坂屋さん」

男性客(70代):
「やっぱり寂しいよね、こういう百貨店が豊田から消えるってことはね」

 9月30日の午前9時30分。最後の営業日とあり、開店前には300人以上の列が…。午前10時の開店と同時に、店内は大いに賑わいます。

女性客:
「先週も、先々週も来たんですけど。最終日にも来ようと。今日は靴3足買いました」

別の女性客:
「靴です全部。4万かな、7足で。この前はカバンをいっぱい買ったので。」

■「松坂屋豊田店」での買い物は毎月の恒例行事…50年来のママ友の2人

 閉店セールで賑わう中、婦人服売り場には2人のご年配の女性の姿が…。

常連の女性(79):
「娘とか息子が幼稚園の時の友達です」

 50年来のママ友の2人。ここで一緒に買い物をするのが毎月の恒例行事です。

同・女性:
「これから名古屋の松坂屋さんまで行かなきゃいかんね。本当に困りましたね」

別の常連の女性(80):
「よそに豊田のお店いくらあっても、寄ったことないよね」

 地元の人には“なくてはならない場所”です。

■毎年誕生日と結婚記念日に…5年間夫婦で通った宝飾店

 宝飾店には、ダイヤのペンダントを購入する夫婦がありました。

夫(41):
「松坂屋も閉まりますし、お世話になったので記念に」

 地元が豊田市のこの夫婦は、5年以上この店に通ってきました。最近、夫は結婚5年目の記念に妻へ指輪をプレゼント。

妻(43):
「毎年、誕生日と結婚記念日に…。私が全然、宝石を持っていなかったので、結婚してからありがたいことに増えました」

夫:
「あげた時にどう喜ぶかなっていうのは、楽しみの一つではありますね」

 夫婦の記念日には必ず訪れる思い出の場所でしたが、この日が最後です。

夫:
「なくなっちゃうのは困っちゃいますね。他の店舗があるので…かなり遠いんですけど」

 この店の別の店舗は、鳥取県にあるそうです。ご主人は旅行がてら買いに行きたいと話します。

■地域の記録として残しておきたい…「松坂屋豊田店」最後の30日をカメラに収める男性

 午後1時。「別の形」で別れを惜しむ人がいました。豊田市の文化振興財団の写真部に所属する男性(75)は、閉店までの30日を一日一日、写真に収めてきました。

写真を撮る男性(75):
「残しておきたい、地域の記録として。20年30年あとに見て、こんなだったかと参考になれば…」

「松坂屋豊田店」は2001年に名鉄豊田市駅西口の商業ビルに開業。

2006年度には売上高100億円を誇りましたが、周辺の大型商業施設のオープンで売り上げは半分に低迷。新型コロナの影響もあり、閉店に…。男性は、最後の姿をカメラに収めます。

写真を撮る男性:
「地域の顔だったもんですから、誠に残念。これで三河地区の百貨店はなくなりますよね。本当に寂しい限りですね」

■すごく楽しく仕事ができました…18年間食品売場で働いてきた女性

 閉店まで3時間の午後4時。夕方は、食品売場が賑わいます。その一角のお菓子売り場で接客する牧みちるさん(54)は、18年間働いてきました。

牧さん:
「お客様もあったかい方が多いので、すごく楽しく仕事ができました。閉店の話を聞いた時は、『えっ』て言葉がでなくて…。皆さん、『これからどこで買えば』とかお声をいただいて、終わってしまうので申し訳ない気持ちもあります」

 牧さんは、退職し少しゆっくりするといいます。松阪屋豊田店の約100人の従業員のうち、20人あまりが退職を決めました。

■女房の知り合いと喋るのが楽しみだった…松阪屋豊田店で働いていた妻を亡くした男性

 松坂屋豊田店の20年。最後の時が刻々と近付きます。ここで5年間働いた妻を亡くしたという男性(76)は…。

松坂屋豊田店で働いた妻を亡くした男性:
「女房が6階に勤めていたんですよ。寂しいですね。1人暮らしでしょ。だからここに来るの楽しみなんですよ、女房の知り合いと喋るのがね」

 生前、妻が一緒に働いていた顔なじみの従業員に、最後の挨拶です。

同・男性:
「今日もね墓参りにいったんですよ。『きょう松坂屋最後だよ』って言って…」

 自分へのご褒美をいつもここで購入していた女性は…。

常連の女性客(68):
「いただく方も、お届けする方も松坂屋さんの包装紙に包まれていると、すごくリッチになった気持ちにね。コロナから抜け出して、明るい兆しになれば、松坂屋さんも存続できたのかな…」

 多くの人にとってここは、“街の顔”でした。

■たくさんの人たちに愛されていた松坂屋豊田店…また一つ消えた時代の象徴

 午後7時、閉店。慣れ親しんだお客さんと、最後の別れの時…。

最終営業日は、いつもの3倍以上の1万5000人が訪れました。

松坂屋豊田店の店長(54):
「この豊田市で商売をさせていただいたことは、私たち従業員にとって何よりもの宝となります。本当にありがとうございました」

「コロナがなければ…」感謝の気持ちと共に、複雑な思いを抱える人々…。

たくさんの人たちに愛されていた松坂屋豊田店。また一つ、時代を象徴が消えました。