年末年始を迎えるこの時期に特に注意が必要な空き巣被害。空き巣の対策や、窃盗団に情報提供する情報屋について調べました。

■1件当たりの被害額は約100万円増加 背景に「情報屋」の存在

 愛知県警が発表した「住宅を対象とした侵入盗の認知件数と1件当たりの被害額」のデータでは、2010年と2020年を比べると件数自体はかなり減っているものの、1件当たりの被害額はおよそ100万円も増えています。

 こうした背景を、神奈川県警の元刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平さんに聞くと、窃盗団などにお金を持っている家を教える「情報屋」の存在があるといいます。

 情報屋は、例えば「あの会社には多額の現金がある」「お金持ちの○○さんが旅行に出ている」「××さんの家には高級時計が10本ある」といった、お金になる情報を提供してもらう幅広いネットワークを持っていて、その情報を窃盗団に売り、盗んだお金の何割かを入手するという仕組みが成り立っています。情報屋は2000年前後に首都圏で流行しはじめ、現在も続いています。

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 情報屋が増えた理由として、今はコンビニATMなどがあり、昔に比べて現金が置いてある家が少ないこと。またコロナ禍で在宅率も高いので、窃盗犯が情報なしで空き巣に入るのはリスクが大きく、確実にお金がある家を狙うためには情報屋の存在が欠かせないといいます。

 情報屋は現場に行かないので逮捕のリスクが低く、窃盗団も空振りを減らせるので、お互いにメリットがあります。こうした情報屋の存在で被害件数は下がり、被害金額は上がっているということです。

 情報提供は情報屋と窃盗団が直接ではなく、ほとんどはブローカーを挟ませるため、もし実行犯が逮捕されても情報屋まで警察が辿り着くことは難しいのが実情です。仮にブローカーを任意で取り調べても「あの家がお金を持っているという話はこの辺りでは有名ですよ」などと言われれば、追及ができないといいます。

■狙われやすい3つの仮説…侵入窃盗の認知件数が全国4番目の愛知

「令和2年の侵入窃盗の認知件数」を見てみると、人口の多い都道府県が多く、愛知は4位、岐阜や三重も平均よりは多い傾向にあります。

1位 埼玉 3637
2位 東京 3149
3位 千葉 3122
4位 愛知 2648
16位 岐阜 1033
17位 三重 957

 なぜ愛知が多いのか、警察とも連携し防犯対策に取り組んでいる「愛知県セルフガード協会」の和田茂男さんに伺うと、断言はできないと前置きした上で、3つの仮説を挙げました。

 1つ目は、組織窃盗グループによる富裕層狙いが多いこと。特に名古屋には富裕層が固まっているエリアがあり、そこを狙うグループが多いといいます。

 2つ目は、幹線道路が整備されていて、犯人が車で外から入りやすく逃げやすいということ。

 3つ目は、警戒心が薄い県民性。「うちは大したものはないから大丈夫」と思っている人が比較的多いと和田さんは感じているそうです。

 また犯罪ジャーナリストの小川さんによると、これからの時期は特に空き巣に注意してほしいといいます。

 空き巣犯や警察の間で使われる言葉に「宵の空き巣」というものがあります。秋以降は日が沈むのが早くなり、働いている人が帰る前に暗くなるので家が不在かどうかを判断しやすく、日が暮れて間もない宵の時間に空き巣が増える傾向があります。

 さらに、これから年末年始を迎えるこの時期は「旅行などで長期不在にすることが多い」「年越しやお年玉などお金が入用になり、家に現金が多くなる傾向がある」ことで、空き巣犯にとって一年で一番の狙い目だといいます。

■一番の敵は自身の油断!空き巣に遭わないためには…

 空き巣の対策は挙げればきりがありませんが、一番の敵は「油断」です。小川さんによると、近年は空き巣の侵入手口で「玄関や窓の無施錠」が4割にも上ります。コンビニやゴミ出しといったちょっとした外出でも、必ずカギをかけることが大切です。

 オートロックのマンションであっても油断は禁物で、住人の出入りする前後に紛れて簡単に入り込めてしまい、工事や宅配業者を装って一度中に入ればマンション内を自由に回れてしまいます。

 2階より上の場合でも、車庫の屋根などを伝って侵入、マンションの隙間を利用して上って侵入、屋上から降りてきて侵入などいろいろ考えられます。

 また愛知では、バールなどでドア錠をこじ破るという侵入手口が多発しています。「ドア錠のこじ破り」は組織窃盗グループが多く使う手口で、警察によると全国総数の41%が愛知で起きています。

 この対策でおススメなのが、ドアと枠の隙間をふさぐ「ガードプレート」。ホームセンターや工務店などで入手でき、商品代・工事代含めて1~2万円で取り付けることが可能です。

 そして、小川さんは「SNSなどで個人情報を綿密に集めた上で狙い撃ちするケースもあるので注意して」と呼び掛けています。「今旅行に行ってます」といった書き込みや、住所など個人情報が漏れるような投稿はしないこと、巡り巡って情報屋に伝わることがないよう高価な物は人に見せないこと、第三者を自宅に招くときは貴重品などを目に触れさせないようにするなど注意が必要です。