愛知県常滑市の常滑駅の駅ビルに、この秋「こども食堂」がオープンしました。この食堂は、かつて仮面ライダーなどを演じた元特撮ヒーローの男性が立ち上げました。誰でも入店できるため、老若男女様々な年齢の人たちが集まってきます。

■「憧れの人」に会いに来る人も…地元を元気にするため元特撮ヒーローが開いた食堂

 愛知県常滑市。名鉄「常滑駅」の駅ビルに、食堂「知多原共同店(ちたばるきょうどうてん)」がオープンしました。12月末までの期間限定の営業です。

【画像20枚で見る】店主は“仮面ライダー”…元特撮ヒーローが「地元の為に」立ち上げた『こども食堂』

 店の看板メニューは、地元産の豚肉を使った沖縄料理。軟骨をトロトロになるまで煮込んだ「ソーキそば」(880円)や…。

オリジナルの「沖縄そばの焼きそば」(880円)など、常滑で本格的な沖縄料理が味わえると人気です。味目当ての客だけではありません…。

男性客:
「ゴーゴーファイブが大好きで…」

 店主の原田篤さん(43)は、かつて戦隊ものや仮面ライダーなどの主役を演じた元特撮ヒーロー。客の中には、原田さんに会うためにやってくる人もいます。

かつて放送されていた「救急戦隊ゴーゴーファイブ」の大ファンで、憧れのヒーローがこども食堂を開いたと聞き、会いにきた男性がいました。

男性客:
「こども食堂を始められて、人間的に憧れます。自分もがんばろうという気持ちになりました」

原田さん:
「Uターン移住してきて、地域に仲間が欲しい。町が明るくなればいいなって」

 特撮ヒーローの新たな使命は、「ふるさとを元気にすること」です。

■「故郷の知多半島が沈んでるから」…後輩からの要望でUターンし”こども食堂”を開いた男性

 愛知県半田市で生まれ育った原田さんは、大学1年の時にスカウトされ俳優の道に。戦隊ヒーローものを皮切りにドラマなどで活躍し、女優の秋本奈緒美さんと結婚しました。

東京で飲食店をオープンさせ一時は5店舗まで増やしますが、コロナでいったん休業。その後に出かけた日本一周の旅で、地域のための活動に興味を持ちました。

原田さん:
「(後輩から)知多半島が沈んでるから、地元でそういうことやってもらえませんかって…」

 地元のために…。ふるさとに戻ることを決意した原田さんは、俳優として地元の半田を舞台にした映画に出演しながら、10月から毎週月曜日にこども食堂を開いています。

■地元の人たちも食材を提供…たくさんの人たちの善意に支えられる“こども食堂”

 運営資金は募金頼みという誰でも無料で食事ができるこども食堂。可能な限り地域のものを使っているという食材は、時には地元の人たちが提供してくれることもあるといいます。この日は、南知多町の水産加工のお店が、大量のはんぺんを持ってきてくれました。

水産加工会社の代表:
「決してうちも楽ではないけど、頑張ってる方を微力ながら応援できたらいいなと…」

さらに、地元ホテルのレストランからはお惣菜が届きました。農家の人たちも、野菜を持ち込んでくれます。

この日のメインメニューは、提供されたはんぺんと前日から煮込んだ大根の「おでん」です。原田さんの母親も助っ人として、おにぎりを作ってくれました。

たくさんの「4種類のおにぎり」と「そば稲荷」。毎回約40人分の食事を用意しています。

■「目を見て挨拶」「残さない」…こども食堂の2つのルール

 午後5時。週に一度のこども食堂がオープン(毎週月曜日午後5時~9時 誰でも入店可 食事は無料)。開店と同時に、子連れのお母さんやカップルなどたくさんの人がやって来ます。お店には原田さんが決めた2つのルールがあります。

原田さん:
「ちゃんと目を見て。ルールは『こんばんは』をちゃんと言えるか」

「目を見てちゃんと挨拶できれば、世の中なんとかやっていける」。原田さんは、これまでの人生で学んだことを子供たちに伝えたいという思いで“挨拶”を約束事にしました。

女の子:
「おにぎりもう1個ください」

 最初は恥ずかしがっていた女の子も、目を見てお話できるようになりました。そしてもう1つのルールが、“食べ物を残さない”です。食べる量を自分で判断するという当たり前の意識を持ってもらうためです。

母親:
「なかなか外食が今できないから…。こんなパクパク食べてくれてうれしいです」

女性客:
「大人にとっても、コミュニティの良い場所になるなって」

別の女性客:
「嬉しいですね、作ってもらったものをいただけるって。子供たちがいっぱいいるのが楽しい」

 子供たちの明るい声と楽しげな姿に何かを感じてほしい…。原田さんが“大人歓迎”のこども食堂にした理由です。

■ライトアップに紙芝居の読み聞かせも…地域の人たちに支えられる”こども食堂”

 こども食堂には、食事だけではなく様々なエンターテインメントも…。ボランティアの男性による「紙芝居の読み聞かせ」や、常滑焼の作家が飾る光のオブジェ「常滑焼 植木鉢ランプシェード」など…。

町の人たちがそれぞれの得意分野で食堂を盛り上げてくれます。

男の子:
「ごちそうさまでした」

原田さん:
「ちゃんと目を見て!OK!」

 きちんと挨拶できた子どもたちには、お菓子をプレゼント。

原田さん:
「挨拶ができる街って活性化していくと思うし、コミュニケーション能力豊かな人が知多半島にどんどんくれば、おもしろい」

「1か所だけでなく、いろんな所で活動を続けたい」と話す原田さん。2022年1月からは、愛知県武豊市に新店舗を構える予定です。(常滑の店舗は12月末まで)