12月4日、岐阜県養老町の廃業したホテルで火災がありました。警察は放火の可能性があるとみて調べています。街中に残る廃墟の危険性と、どのような対策ができるのかを取材しました。

 国道258号線から一本入ったところにあるホテル。

 入口にはフェンスが置かれていて立入禁止と書かれていますが、入ろうと思えば簡単に入ることができる状態で、奥には落書きのようなものが見えました。誰かが侵入して落書きをしたのでしょうか。

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 ホテルには多くの落書きやゴミが散乱しています。辺りを調べると、今回の火元なのか、窓が割れ外壁にはススが目立つ部屋がありました。

 裏側に回ると、酒の瓶や靴などが置いてあり、奥に見える扉は開いていました。

付近の住民:
「人がいることは分かっていた。たまにいるなということで、1回警察に通報したこともあったんやけど」

「怖いですよね。取り壊してほしいと思っています」

「廃業してからエアコンの室外機とかを取りに、そういう人が来とったみたいで」

 近隣の人によりますと、ホテルは2013年頃に廃業し、それ以来、若者や外国人が出入りするようになったといいます。

 こうした廃墟は放置すれば犯罪の温床になる恐れがあります。過去にも、愛知県春日井市の廃旅館ではたびたび火災が発生したこともありました。

 豊山町の廃ホテルでは、男性の遺体が発見されたこともありました。

 解決策はないのか、養老町役場に話を伺いました。

養老町役場の担当者:
「管理者はいます。その管理者とも連絡が取れる状態になっております」

 ただし、すぐに取り壊しとはいかないようです。

養老町役場の担当者:
「(取り壊しは)現在のところ考えておりません。ホテルの構造上、当然あれだけ固い構築物になりますので、その辺(倒壊)の心配がまずございません。(管理者と)侵入防止対策、または監視カメラ等の設置について今協議していて、対応するという旨の返事も聞いております」

 このホテルは構造上、倒壊する可能性は少なく、また管理者が改善する意向を示しているため、行政としてはこれ以上手が出せないといいます。

 こういった問題をどうすればよいのか、「NPO法人 空家・空地管理センター」に伺いました。

 空き家の問題が起きた時の大まかな流れは、まず危険な建築物などを「特定空家」に指定し、その後に指導などを行い、改善されない場合には解体といった最終手段「行政代執行」が行われます。

 特定空家というのは、放置すれば著しく「倒壊の恐れがある」「衛生上有害となる」「景観を損ねる」「周辺の生活環境へ悪影響を及ぼす」といった恐れがあるとき、不適切と認められる空き家を自治体が指定します。

 その後、改善が見られない場合に「行政代執行」を行います。

 例えば、名古屋市西区にあった空き家は、倒壊などの恐れがあるとして解体・撤去されました。また、愛知県蒲郡市の空き家では、敷地の周りにゴミが山積みにされて異臭を放ち、苦情が相次いでいたため撤去されました。

 費用は初めに自治体の税金で賄われ、その後に所有者に請求されますが、そう簡単にはできない事情があります。

 行政代執行はあくまで緊急性が高いときのみ行います。仮に頻発してしまうと、所有者が「解体は行政が勝手にやってくれる」と考え、放置・逃亡してしまう恐れがあることが考慮されているためです。

 また所有者がいない場合は、かかる費用が自治体の負担になってしまいます。

 今回の養老町の廃ホテルについては、不審者が侵入するという問題は他の空き家でも多く見受けられるため、特定空家の条件にあてはまらないといいます。

 また、管理者が改善の意向を示していることもあり、現段階ではすぐに解体など手を加えることは難しいということです。