熊本産アサリの産地偽装の疑いが判明し、8日から出荷停止となりました。これを受けて、愛知産アサリの価格が高騰するなど影響が出始めています。

 これから旬を迎える安くておいしい「国産アサリ」が今後、手を出しにくい高級食材になってしまうかもしれません。

 8日から熊本県産のアサリの出荷が停止に。きっかけは、熊本産アサリをめぐる“産地偽装問題”です。

 農林水産省の調査で、熊本産として販売されていたアサリのうち97%が「外国産アサリが混入している可能性が高い」と判明。8日から4月2日までのおよそ2か月間、出荷停止に追い込まれました。

 食品表示法では、輸入したアサリを2か所以上で育てた場合、期間が長い方を「産地」として表示できます。

 今回は中国などからアサリを輸入し、熊本で育てた期間の方が短いにもかかわらず「熊本産」と偽装した疑いがあります。

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 農林水産省が2021年12月までの3か月間、全国のスーパーなどで熊本産のアサリを調査したところ、推計の販売量は2485トンでしたが、熊本県でとれた直近の年間の漁獲量は21トンにとどまるにもかかわらず、その100倍以上ものアサリが「熊本産」として販売されていたということです。

 熊本産アサリ出荷停止の影響は名古屋でも…。

中部水産の担当者:
「(全体のアサリ入荷が)8割から9割減となっております。かなり影響が出ております」

 名古屋市熱田区の名古屋市中央卸売市場では、アサリの取扱量が8割減の事態となり価格が高騰。

中部水産の担当者:
「愛知県産にシフトされている方が多いんですけども、もともと愛知県産は数量が減っておりまして、通年の2倍近い価格で推移しております」

 今回の産地偽装問題に、愛知県田原市の漁師からは心配の声もあがっています。

アサリ漁師の細田さん:
「全国のアサリ漁師は、本当に真面目に取り組んでいる方がほとんどだと思います。熊本の場合も一部の漁師が携わっているかと思いますが、(アサリ業界)全体として風評被害が出てしまうので懸念しています」

 プランクトンが豊富な三河湾、天然アサリを全国へ出荷しています。その漁獲量は愛知県が16年連続で全国一です。

 愛知産のアサリはすべて三河湾などで生まれた天然の稚貝を育てていて、中国産などの稚貝はないといいます。

アサリ漁師の中川さん:
「(愛知県との取り決めで)外国産どころか、愛知県産以外のアサリの移動が禁止されています」

 しかし、ここ数年問題となっているのがアサリの漁獲量の減少。愛知県ではこの10年で10分の1まで減っています。

 愛知産アサリを守るため、とりすぎない工夫もしています。

アサリ漁師の中川さん:
「アサリをとるための『マンガ』という道具で、かごの目合いが13ミリで設計されています。これ以下のアサリはとらない」

 渥美半島の沖合2キロの海上。

アサリ漁師の川口さん:
「渥美でとれた天然のアサリの中から、大ぶりの場所の良いアサリを選んで、実入りを良くして出荷する」

 1月27日に、田原市に認定されたばかりのブランドアサリ「渥美垂下アサリ」です。漁獲量が減る中、愛知産アサリをブランド化することで売上を伸ばし、漁師の担い手を確保したい狙いもあります。

 このブランドアサリ、1か月以上プランクトンの豊富な海で育てることで大粒になり、コクとうまみも増すといいます。

アサリ漁師の細田さん:
「やっぱり一番おいしいのは焼きでしょうね。何も調味料をつけなくても、ものすごくおいしいです。自分たちの生活にもかかってきますし、だからといって変なものを扱いたくないし。単価は上がってしまうんですが、美味しいアサリを味わってもらうのがこれからの漁師の為でもありますし、業界の為でもあります」

 これから旬を迎えるアサリ。熊本産の産地偽装問題をめぐる余波で、消費者にとってもしばらく厳しい時期が続きそうです。