三重県鳥羽市に、海洋プラスチックごみで作品を作るアーティストがいます。かつて航海士をしていたこの男性は、フィリピン海で見たごみでできた島に衝撃を受け、海洋プラごみで家具や生活雑貨を作ることを決意しました。海岸に流れ着いたカラフルな漂流物で作られたランプシェードやテーブルは、様々な色が交ざり合う、世界でたった一つのアートです。

■様々な色が複雑に交ざり合うランプシェードやテーブル…海洋プラごみをアートに変える男性

 三重県鳥羽市の廃業した水産加工場の中に、不思議な空間があります。

【画像20枚で見る】SDGs全面に出す企業から注文増…海洋プラごみでアート家具など製作「ゴミを価値に」

光と影…。様々な色が複雑に交ざり合うランプシェードに…。

テーブル、ボールペン…。これらの作品は、海に捨てられた海洋プラスチックごみから生まれました。

このギャラリーに並ぶ作品は、海洋プラごみで家具や雑貨を作る会社「REMARE(リマーレ)」の代表・間瀬雅介さん(28)の作品です。

間瀬さん:
「でかいオブジェみたいなものを作りたくて。最初にできたのがこれ。めっちゃ思い出の作品。宇宙みたいじゃないですか」

今世界では年間800万トンのプラごみが、海へ流れ出しています。このまま増え続けると、2050年には海にいる魚の数を上回る予測です。間瀬さんの手にかかると、このプラごみがアートに変わります。

間瀬さん:
「SDGsを全面的に出したいアパレルブランドとか、アクセサリーのブランドとか…。企業からの注文はすごく増えてきています」

■フィリピン海でごみが集まってできた島に衝撃を受け…海洋プラごみで家具や生活雑貨を作ることを決意

 冒険家になるのが夢だった愛知県出身の間瀬さんは、航海士としてクジラなどの生態調査のために南極にも行ったといいます。

間瀬さん:
「一つ大きなくくりで考えていて、航海士っていうものを。『海を考える人』って僕は定義している」

20歳で航海士になり、世界中の海を渡りました。海は、間瀬さんの価値観を大きく変えました。

間瀬さん:
「フィリピン海でごみが集まってできた島みたいなのを見て、結構衝撃でした。プラスチックもいっぱいありますし、色んなものが固まって漂っている」

 間瀬さんが、2019年に起業した「REMARE(リマーレ)」は、イタリア語で“海”を意味する「MARE(マーレ)」から作った造語。“海の循環”、そんな願いを込めて、家具や生活雑貨を作っています。

間瀬さん:
「海洋プラスチックっていう市場があまりないので、出口を作ることが一番大事かも。室内循環するものにしたいなと思って、家の中で使えるもの」

間瀬さんは、軽くて丈夫なプラスチックは、家の中で使えるものにするのが最適と考えました。

■流れ着いたごみは“宝の山”…カラフルな漂流物で世界で一つだけのアートを作る

 この日、間瀬さんはボランティアの大学生と一緒に、鳥羽市の海岸で月に一度行っているビーチクリーン活動を行っていました。

ペットボトルに、灯油のポンプ、サンダル…。このあたりはリアス式海岸の入り江で、どこから来たのか多くのごみが流れ着きます。

間瀬さん:
「見て、レア来た、紫」

カラフルなごみはレアもの。ごみ拾いが“宝さがし”に変わります。

漁師の男性:
「意外と漁業ごみが多い。例えば、洗剤の容器ですけど、ロープがついていますよね。たぶん、網とかカゴを海底に沈めて、獲りやすくするために浮きとして使っていた」

間瀬さん:
「(ビールケースの破片を見つけて)これめっちゃレア。みんなにはゴミにしか見えないのか。宝石より輝いている。この色でこの量はヤバいね」

 ごみは“宝の山”。細かく砕いて、作品を作る“絵の具”に変わります。

間瀬さん:
「ピザみたいな形で、ベースの色を今回は緑にしていますけど、それによって全然変わってくる。偶発を求めて…」

ホットプレートを作り替えたような機械で、160~180度の熱を約30分間加えます。

さらにプレス機で薄く伸ばして完成。光輝く赤、青、緑…。世界にたった一つのアートが生まれました。

■海洋プラごみの20%は“漁具”…網やロープなどを使いテーブルの天板をつくる

 鳥羽市浦村では、2022年1月に発生したトンガ沖の海底火山の噴火で津波が発生。カキの養殖いかだが壊れ、大量のロープがごみになりました。

ロープの撤去作業には、REMAREのスタッフも参加しました。

2019年度に環境省が行った調査によると、海洋プラごみの約20%が網やロープなどの“漁具”で、自然分解されにくく600年以上も海の中を漂い続けます。

 間瀬さんは、REMAREの新たな商品として、網やロープなどの漁具を使ってテーブルの天板を試作しています。

間瀬さん:
「ゴミを価値に変える一連の流れは大変かもしれないけど、僕はモノづくりが好きで…。表現方法としてこれやったら、結果、海洋プラスチックがどんどん減っていったみたいな…」

暮らしに“樹脂”の循環を。海洋ごみを価値あるものに変える間瀬さんの活動は、私たちの未来を変えていきます。