2022年3月に「1億人のなごやめし総選挙2022」が実施され、“ひつまぶし”が堂々の1位に輝きました。そんな名古屋めしの代表格“ひつまぶし”の定番の食べ方は、1杯目はそのまま、2杯目は薬味で、3杯目はだし茶漬けでいただくのが一般的です。しかし最近は、“卵黄”や“とろろ”、“梅干し”などと一緒に食べる、4杯目の食べ方を提案する店が増えています。

■4杯目は“卵黄”と“とろろ”をかけて…新たな食べ方“ひつまぶしの卵かけごはん”

 3通りの食べ方に加えて、4杯目の食べ方があるという名古屋市東区にある「うなぎのしろむら」へ。

【画像20枚で見る】そのまま→薬味→だし茶漬けに続く…名古屋めし代表格ひつまぶしに新たな『4杯目の食べ方』

この店の「活ひつまぶし(上)」(4890円)には、薬味や漬物の他に2つの見慣れないものが付いています。

うなぎのしろむらの担当者:
「1杯目そのまま、2杯目に薬味をつけて、3杯目におだしですけど、当店は、『卵黄』と『とろろ』をつけて、“卵かけごはん”のように食べていただく」

この店の4杯目は、「卵黄」と「とろろ」で楽しむスタイルです。まずは「しょうゆ漬けの卵黄」をかけていただくと、うなぎの旨味に卵黄のコクが加わり、何とも“贅沢”なひつまぶしの卵かけごはんが楽しめます。

同・担当者:
「まかないを食べているときに、時間がなくて卵をかけて食べた(のがきっかけ)」

続いては、卵かけごはんの上に「とろろ」をかけて…。卵が絡んだうなぎにとろろが加わり、食感がよりまろやかになりました。

■4杯目は“ニンニクたっぷりの塩だれ”をかけて…塩カルビ丼が好きな店主が考案した食べ方

 4杯目を楽しめるお店は他にもあります。

西区にある「うなぎ家 しば福や」の白焼きのひつまぶし「スタミナまぶし」(5400円)には、ブラックペッパーがかかっています。気になる4杯目の食べ方は…。

しば福やの店主:
「ニンニクベースの塩だれで…。ブラックペッパープラスにんにくで、さらにパワーアップ」

この店の4杯目には、たっぷりのニンニクが効いた塩だれが用意されていました。白焼きのうなぎの香りと、塩だれのニンニクの風味が口の中で混ざりあい、まさにスタミナが湧く食べ方です。

同・店主:
「塩カルビ丼が大好きで、牛肉でよく食べていたんですけど、うなぎでやってみたいなと…」

 ニンニク風味の塩だれでいただく白焼きは、まさに進化系のひつまぶしです。

■4杯目は“梅干し”を添えた梅茶漬け…実はうなぎと相性が良い梅干し

 続いて向かったのは、中区にある「ひつまぶし花岡」。

この店の「ひつまぶし(上)」(4510円)の4杯目の食べ方は、うなぎと相性が悪いといわれる“梅干し”です。梅干しは、うなぎと食べ合わせ、実はとても良いそうです。

ひつまぶし花岡の女性:
「うなぎと梅干しの相性はとってもよくて、梅干しの酸味がうなぎの脂をさっぱりと落としてくれる。安心して食べていただいております」

梅はうなぎの脂の消化を助け、胃を整えてくれるため、相性が良いことがわかっていて、この店ではその相性の良さを知ってもらうために梅干しを提供しているといいます。うなぎと梅干が一緒に出てくることに抵抗を示すお客さんもいるそうですが…。

同・女性:
「まず、最初に疑われます。特にお年を召した方は心配されまして…」

そんな時は、うなぎと梅干しの食べ合わせは問題がなく、むしろ理にかなった相性の良い組み合わせであることを説明しているといいます。

 梅干しを添えた梅茶漬けスタイルでいただく4杯目。口の中に広がる梅の香りが、うなぎと相性抜群です。

■うなぎのサクッとした食感を残すために…3杯目はだし汁の代わりに“あんかけ”をかけて

 最後は、3杯目が定番の“だし茶漬け”でない店があるということで、東区にある1930年創業の「うなぎの西本」へ。

この店の「ひつまぶし」(3700円)には、薬味は付くものの、定番のだし汁がありません。

うなぎの西本の担当者:
「2通りの召し上がり方をしていただいて、声をかけていただければ3つ目があります」

 定番の2通りの食べ方を楽しんだ後に声をかけると出てきたのは、お茶漬けにするためのだし汁ではなく、和風だしベースの“あんかけ”。トロっとしたアツアツの“あんかけ”をかけると、あんの中に包み込まれたうなぎの旨味がより際立ちます。

同・担当者:
「うなぎの香ばしさも残りますし、ごはんの一粒一粒も際立ちます」

この店では、ひつまぶしを始めた2013年以来ずっと、うなぎのサクッとした食感を残すためにお茶漬けではなくあんかけにしているといいます。

■おひつ内で4等分した最後の1杯の食べ方に各店の個性が…ひつまぶし“4杯目文化”が生まれたワケ

 “ひつまぶし”の4杯目以降の食べ方を提供する店が、なぜ増えているのか。名古屋めし専門の料理研究家Swindさんによると、他の地域から来た人が食べ方がわからず、店に食べ方を聞いたことがきっかけだといいます。

食べ方を聞かれた店は「おひつの中で4等分して食べて」とアドバイスすることが多く、そうすると3杯目まで食べ進めた客が、4等分した最後の1杯を「どうしよう…」と悩むケースが…。

そこで、店側もせっかくならと4杯目の味つけを考えるようになったとSwindさんは推測しています。ちなみに、Swindさんオススメの4杯目の食べ方は、”のり巻き”。焼きのりで巻いて食べると香ばしくて美味しいといいます。

名古屋にあるうなぎの名店を取材すると、どの店もうなぎの素材のよさを引き出した、個性豊かな4杯目の食べ方を提供していることがわかりました。