名古屋では「大判焼き」と呼ばれる、生地にあんを入れ焼き型で焼き上げた和菓子は、他の地域ではどのように呼ばれているのかを調べると、関東では「今川焼き」、関西では「御座候(ござそうろう)」、「回転焼き」など、全国各地で100以上もの名前で呼ばれていることがわかりました。

■出身地によって呼び名が違う?…名古屋で「大判焼き」と呼ばれる和菓子

 まずは名古屋市中区にある「大潮屋」で話を聞きました。

【画像20枚で見る】関東は“今川焼き”関西は“回転焼き”…餡入れて型で焼き上げたアレ 全国に100以上の名前

店員:
「すごく売れています。大判焼きのドラマがあって、普段買わない方も買ってくださる」

ドラマの影響もあり、お年寄りから若い人まで幅広い年齢層に人気になっているといいます。大判焼きには色んな呼び方があることを知っているのでしょうか。

店員:
「知っています。名古屋の方が多いので、『大判焼き』が多いけど、『回転焼き』とか色々言われるので…。多分、出身地によって呼び名が違うんじゃないかな」

名古屋では大判焼きという人が多いようですが、出身地によって呼び名が違うのか。そこで、栄の街で大判焼きを見せてみると…。

男性:
「大判焼き」

女性:
「大判焼き…。あっていますか?」

やはり大判焼きと答える人ばかり。ところが…。

女性:
「うちの近所に『東海道』って名前で売っています。商品名です」

大判焼きではなく、なじみの商品名で呼ぶ人もいました。

■関東では「今川焼き」、関西では「回転焼き」が主流?…名古屋城で観光客に調査

 では、他の地域の人はどう呼ぶのか。名古屋城で観光客に聞いてみました。

神奈川から来た女性:
「今川焼き。(大判焼きは)聞いたことあるけど、言わない」

千葉から来た男性:
「今川焼き」

関東の主流は「今川焼き」のようです。では、関西の人は…。

大阪から来た女性:
「回転焼き」

兵庫からきた男性:
「ござそうろう。お店の名前が御座候。(兵庫では)みんなそうだと思います」

大阪から来た女性:
「御座候。『御座候買ってきたで』って言う」

「御座候」とは兵庫に本社のある和菓子店で、関西ではこの御座候という呼び名が主流なのでしょうか。ちなみに、大阪からきたこの家族は…。

父親:
「太鼓焼き」

母親:
「回転焼き」

長女:
「大判焼き」

次女:
「御座候」

母親:
「世代の違い…」

見事にバラバラでした。

ここまでの調査で名古屋は「大判焼き」、関東は「今川焼き」、関西は「御座候」、「回転焼き」と呼ぶ人が多いことがわかりました。

■埼玉では「甘太郎焼き」長野では「じまんやき」…全国で100以上あるとみられる呼び名

 他にも呼び方があるのでしょうか。方言学の専門家でこのお菓子の名称についても詳しい、奈良大学の岸江教授に聞きました。

奈良大学の岸江信介教授:
「例えば山形に行けば『あじまん』、富山に行くと『七越(ななこし)焼き』とか。兵庫県で『人工衛星饅頭』とか…。全国に100以上あるんじゃないか」

岸江教授は、100以上の呼び名があるといいます。他にも北海道では「おやき」、埼玉では「甘太郎焼き」、長野では「じまんやき」、大阪は「太鼓焼き」、広島では「二重焼き」、熊本は「蜂楽(ほうらく)饅頭」など、全国には我々の知らない名前がたくさんあるようです。なぜこんなに呼び名が多いのでしょうか。

岸江教授:
「大判焼きや回転焼きから、屋号(会社名)に変わるケースが結構ある。その呼び名で、地元で愛されるのが実情」

元々は今川焼や大判焼きが定番だったところ、見た目も中身も同じお菓子を他店と差別化するために、あえて屋号をそのまま商品名にする店が現れ、それが地域で定着していったのではないかと岸江教授は推測します。

■三重にあった“進化系”大判焼…さつまいも感が強い「へこきまんじゅう」

 東海地方にはユニークな大判焼があります。愛知県西尾市の「カテキン堂」には、抹茶の産地ならではの抹茶生地で作る「カテキン焼き(つぶあん)」(150円)があります。

女性客:
「毎週来ています。(西尾の大判焼きといえば)緑色」

かき氷の宇治金時を食べているような、抹茶の香りが口いっぱいに広がる大判焼きです。

 さらに、三重県には変わったネーミングの大判焼きがありました。

三重県名張市にある「たまきや」を訪ねると、店先でたい焼きのようなものを焼いていました。

店員:
「さつまいもの生地で焼きあげている。名前は『へこきまんじゅう』」

さつまいもがたっぷり入った粘りのある生地に、あんをのせて焼きあげた「金のへこき(つぶあん)」(250円)。

作り方は大判焼きそのものですが、形はオリジナルの忍者のキャラクターです。なぜこの様なユニークな名前なのでしょうか。

店主の娘:
「試作しているときに、父が食べたらおならが出て、『これは“へこきまんじゅう”や』という感じで、家族みんな大笑いで…」

たまきやの店主:
「天から神様が降ってきたような感じで、“プッ”と…。『これや!』って思いました」

女性客:
「名前がね…1回聞いたら忘れないですよね」

20年前に店主のおならがきっかけで誕生し、今では名張の名物菓子になりました。

名古屋で「大判焼き」と呼ばれるお菓子の他の呼び名について調べてみると、全国に100以上の独自の名前があることがわかりました。