これから本格的な水のレジャーシーズンに入っていきます。その時に気を付けたい水難事故は、具体的にどのようにして起こっているのか。実際に死亡事故が起きた地点へ向かい、河川のプロに原因などを解説してもらいました。

■浅瀬から急に深くなる千鳥橋…川に入るときは膝下まで!

 案内をしてくれたのは、「川に学ぶ体験活動協議会」の北川健司さんです。岐阜県を中心に、川の見守りや救助活動をしています。その北川さんに、長良川で毎年多くの死亡事故が発生している現場を案内してもらいました。

1年間で全国の死者150人以上…身近な『用水路』に潜む危険 浅くても溺れてしまう事ある3つのケース

北川さん:
「あれが千鳥橋ですね。ジェットボートの人とかバーベキューの人とか、橋の下の辺りまで休日にはたくさんやっていますね」

 やってきたのは岐阜市の千鳥橋。休日にはバーベキューなどを楽しむ家族連れで賑わいます。一見、穏やかな川に見えますが、ここでは2003年から7年間で7人が亡くなっているということです。

北川さん:
「ここは5mくらいしか浅瀬がなくて、そこからドンッと深くなっています。バーベキューとかで川の水辺の近くで遊んでいて、暑いからちょっと入ろう、もうちょっと入ろうと…。深さに対する認識はたぶんないんですよね」

 バーベキューをした人が暑くなって川に入ったり、酒を飲んで泳ぐ人など、多くの人が油断して川に入り、気付いたら足がつかない場所にいて溺れることが多いといいます。

 水難学会が宮城県の白石川で行った実験映像では、川の中央へ歩いていくと、ひざ下程度だった水深が、腰や胸の高さを超えて一気に深くなっていきました。川底は上からは見てわからない急斜面になっているところが多くあります。

 水難学会会長の斎藤秀俊さんによると、「深い」と思ったときには、振り返っても砂の斜面に足をとられて、深い方へ落ち込んで溺れてしまうのだそうです。

 そのため、川の近くには「およがないで」と注意を呼びかけるのぼりが設置されています。

北川さん:
「膝から下なら流れは股の間を通ります。股の間を通る流れよりも深くなった途端に体で流れを受けることになるので、流れがある所では、膝より(水位を)下にしておかないと流れをもろに受けてしまう」

 川に入る場合の目安は、大人も子供も「ひざ下」まで。そうすれば、流される危険性は低くなるそうです。

■「アンダーカット」や「反転流」など、多彩な危険場所がある旧美濃橋!

 さらに、千鳥橋周辺より危険とされる場所もあるということで、取材に向かいました。

北川さん:
「旧美濃橋ですね。ここは複雑な流れとか深みとか、渦で吸い込まれるとか、多彩な危険場所があるところです」

 千鳥橋から上流に30キロほど行った、長良川・旧美濃橋。この周辺も、バーベキューを楽しむ多くの家族連れが集まる場所になっていますが、ここには複数の危険なポイントがあるといいます。

北川さん:
「対岸の方は水温が低いんですね。それで足をつったりする。焦るんですよ、やっぱり」

 実はこの川には、上流から引いている用水路が繋がっています。この用水路から冷たい水が川に流れることで、水温がぐっと低くなります。そして泳ぐ最中、急に水温が低い場所へ移ることで、足がつって溺れた人もいるそうです。

 さらに、こちらの岩も危険なスポットです。

北川さん:
「岩がぶつかっている辺りで複雑な流れがあるのと、あの岩自体がアンダーカットで(岩の)下がえぐれていて、(アンダーカットなどにより)複雑な流れができてちょっと吸い込まれる感があるので、それで焦ってしまう」

 一見、普通の岩に見えますが、この下は水の流れで岩がごっそり削れています。3年前には高校生が岩の上から飛び込み、その窪みに吸い込まれて亡くなった事故がありました。

 また、私たちの想像とは異なる複雑な川の流れも危険だといいます。

北川さん:
「あそこの入り江へ、水の流れが入っていくんですね」

 流れてくる水が岸にぶつかり「反転流」という逆流する流れが生み出されます。この流れに逆らって泳ごうとすると、なかなか前に進むことができません。3年前には、この川で「反転流」の中で泳ぎ続けた男性が体力を消耗し、溺れて死亡する事故もありました。

北川さん:
「川は安全な場所はないと思ったほうがいいです。川・水といったらライフジャケットと思ってもらうと、一番いいと思います」

 安全そうに見えても、川は見えないところに多くの危険が潜んでいます。