大切な楽器を隠し身一つで戦火逃れる…ウクライナから避難してきたチェロ奏者の親子 演奏会で遠き母国の調べ
ロシアの軍事侵攻から逃れ、ウクライナから日本に避難しているチェロ奏者の親子が先週、名古屋で開かれた演奏会の舞台に立ちました。日本で再び楽器を手にした思いとは…。
5月26日、名古屋市中区で開かれたウクライナ人道支援コンサート。ウクライナから避難中の2人のチェロ奏者も参加しました。
発案者のジドレさん:
「みんなで力を合わせれば強くなれる。そのために私たちは今日ここにいます」
ウクライナ人のチェロ奏者、テチヤナ・ラブロワさん(53)と娘のイアナさん(30)。
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ラブロワさん:
「私たちは避難できましたが、まだたくさんの人々が私たちが去った場所に残っています」
イアナさん:
「私は避難できただけ幸運でした。友人は避難しようとしたけれど、車が攻撃されてできませんでした」
ラブロワさんは首都キーウの国立歌劇場に所属し、娘のイアナさんは北部チェルニヒウで、それぞれ演奏家として活動していました。
しかし、ロシアの軍事侵攻が激化した2022年3月、音楽仲間を頼って日本に避難してきました。
ラブロワさん:
「チェロを3台持っていましたが、どうしたらいいか分からなくて、とりあえず毛布をかけて隠してきた」
大切な楽器を自宅に隠し、身一つで避難してきた2人。
そんな2人の存在知った日本在住のリトアニア人の演奏家がコンサートを発案。「音楽を通してウクライナを助けたい」と、国籍や立場、世代を超えて、様々な協力者が集まりました。
5月26日、名古屋市の宗次ホールで迎えた本番。300席の座席は完売し、多くの客が会場に詰めかけました。
この日演奏された17曲のうち、半数以上がウクライナにまつわる曲。演奏家としてウクライナの音楽を観客に届けたいとラブロワさんらが選曲し、出演者全員で平和の祈りを込めて旋律を奏でました。
客:
「素晴らしかったですね」
「とっても感激しました」
「とても面白いものでした。祖国がああいう状況の中で、こっちに来られているということで、いろんな思いが詰まっているんだろうなと」
会場には募金箱が設置され、コンサートの売上金などと合わせて全額がウクライナの避難民などに寄付されることに。
さらに…。
宗次ホール代表の宗次徳二さん:
「何かできることがあるだろう、しなければいけないという思いでずっといました」
会場となった宗次ホールのオーナー・宗次徳二さんから、ラブロワさん親子へ新しいチェロが無償で貸与されました。
多くの人たちが今、ウクライナに思いを寄せています。
ラブロワさん:
「今日は忘れられない日となりました。会場や観客、その場の空気も含めて素晴らしかったし、ウクライナの音楽を演奏できて楽器を手にできたこともうれしかったです」
イアナさん:
「この戦争を何とかして終わらせたいという気持ちでいます。戦争が終わったら家に帰って、またウクライナで演奏したい」