名古屋市千種区の「覚王山日泰寺」の参道で20年以上続いてきた「覚王山祭」は、コロナの影響で休止になっていたが2022年7月末、「夏祭り」が3年ぶりに開催された。感染対策をして開催しようと力を合わせた商店街の人たちに密着した。

■3年ぶりの祭り開催…期待と不安の実行委員会

 名古屋市千種区の覚王山日泰寺。その参道で1997年から20年以上続いてきた「覚王山祭」は、春・夏・秋と年に3回開かれ、季節の風物詩として、地域の人たちだけでなく遠方からの客も楽しませてきたが、コロナの影響で、2019年の秋祭以来、開催されていなかった。

【動画で見る】直前で感染が急拡大…3年ぶり開催『覚王山夏祭』密着で見えた“商店街の力”

参道で98年続く老舗団子店「つる屋」を営む丹羽文秀(にわふみひで)さん。商店街組合の理事長だ。

覚王山商店街振興組合理事長の丹羽文秀さん:
「こちらへ訪れるお客さまも、『今年の夏はあるの?』という声は非常に多い。覚王山は覚王山の対策を取りながら進めていこうということで…」

商店街組合で話し合い、3年ぶりの開催を決めた。ところが、決断をあざ笑うように、開催直前でコロナの感染が急拡大した。

丹羽さん:
「感染者が増えてきていることに対する不安は、非常に感じています」

実行委員会のミーティングを重ね、開催時間を短縮、参加店舗も減らすなど、感染対策をより厳しくすることに…。

この日のミーティングでは、当日の進行を手伝ってくれるボランティアスタッフの割り振りや、イベントで使うヨーヨー釣りの水風船の作り方を確認した。

実行委員の女性:
「(水が)入ってない入ってない。この穴を水につけないといけないです」

別の実行委員の女性:
「そうやってやるんだ。私、指で穴を抑えてた記憶がある」

3年ぶりとあって思い出しながらの作業になったが、なんとか準備は整ったようだ。

■出店者たちも気合十分…祭り限定の特別メニューが続々と

 商店街の店も気合は十分だ。特別メニューで臨むのは、創業90年をこえる老舗卸問屋が2020年にオープンしたうなぎ専門店「四代目菊川」。

約300グラムの大きなうなぎを備長炭で焼き上げた「一本重」(4950円)が名物。

だが、祭りでは手軽にうなぎを味わってもらいたいと、祭り限定のメニューを考えた。

四代目菊川の店長:
「うなぎが入ったおにぎりと、今回が初めてなんですけど食べやすいようにうなぎの串をご用意させていただいてます」

四代目菊川の自慢のうなぎをタレと絡めたご飯でにぎった、うなぎのおにぎり「うむすび」(2個500円)と…。

「うなぎ串」(1本500円)を新たに用意した。

 張り切っているのは新しい店だけではない。

ひらきのオーナーシェフ:
「今は8月のオープンに向けて、お店の厨房機器とかいろんなものを入れてる感じです」

8月中旬にリニューアルオープンを控えた洋食店「ひらき」。1960年の創業で、覚王山では知らない人はいない人気店だ。

名物はベシャメルソースの仕込みに毎日6時間かける「カニクリームコロッケ」。地元はもちろん、遠方からも客が押し寄せる覚王山の名物グルメだ。

改築のため2021年の冬から休業していたため、リニューアルオープン直前の覚王山祭が久しぶりにコロッケを作る機会となる。

ひらきのオーナーシェフ:
「オープン前なんですけども、3年ぶりにやるってことで私たちも楽しみにしていた」

 2021年にオープンし、今回の祭りが初参加というバウムクーヘン専門店「ココトモファーム覚王山店」は、こんな協力も…。

ココトモファーム覚王山店のオーナー:
「覚王山の皆さん、本当に一生懸命頑張っていて、ボランティアみたいな形で活動されているもんですから、何かしら力になれればと。今回、(覚王山夏祭の)チラシの方を当社の方でお作りしました」

IT企業も経営しているオーナーが、グループ会社でチラシを安く作れると申し出てくれた。こうした助け合いも商店街ならでは。

祭りでは、こちらも祭限定の新作を出す予定でいる。「アイス縁バウム」(1本500円)だ。

ココトモファーム覚王山店のオーナー:
「当社の商品で『縁バウム』という串に刺したバウムクーヘンがあるんですけど、それを凍らせて食感がパリパリした、新しい商品」

■来場客「また来年も」…疲れも吹き飛ぶ参道の賑わいと感謝の声

 そして、祭り当日。午後4時の開始時間ギリギリまで、準備や感染対策の呼び掛けなどで走り回っていた丹羽さんの発声で、3年ぶりの祭りがスタートした。

丹羽さん:
「ただ今より、覚王山商店街夏祭を開始いたします。よろしくお願いいたします」

参道ではさっそく商店街の人たちが料理の腕を振るい始めた。

出店者の男性:
「もう待ちに待っていたって感じなんで、開催していただいて本当にありがたいです」

来場者の男性:
「毎回来ているんだけど、2年間中止でようやくやられた。人が集まるところに集まってないとお祭り気分が出ないんで、これが私は今は正解だと思っています」

別の来場者の男性:
「祭りがあって嬉しいですね。夏っぽくて」

 食べ歩きグルメを楽しむ人たちが徐々に参道に増え始めると、理事長の丹羽さんが動き出した。

丹羽さん:
「皆さんマスク着用してくださいね。マスクの着用お願いしますね。アルコール(消毒液)はどちらにありますか?前の方に出してください」

 日が暮れてもにぎわいは続いた。そんな中…。

四代目菊川の店長:
「この時間で完売してしまいました。さすがの夏祭りですね」

「四代目菊川」の新メニュー・鰻の串は、日が暮れる前に完売。「ひらき」のカニクリームコロッケや、「ココトモファーム覚王山店」のアイス縁バウムも順調に売れていた。丹羽さんの団子店「つる屋」も大盛況だった。

ゲームコーナーでは、実行委員会のメンバーが苦労して作ったヨーヨー釣りが子供たちの大人気に。

来場者の男性:
「すごく賑わってて子供たちが喜んでて…。また来年もやって欲しいなって思いましたね」

大人も子供も、久しぶりの夏祭りを楽しんだ。

丹羽さん:
「始まるまでは不安でしたね。でも、本当に暑いけどマスク着用ってこと何度も何度もお願いして、皆さんがそれに従っていただけたことが何よりだと思いますね。でも、これだけのお客様がおみえになって、これほどにぎわったっていうことで、正直疲れたけど、疲れもこのにぎわいでなんとか…」

 秋の祭は、11月5日と6日に開催を予定している。