「PTA」は本来、子供たちのための「ボランティア」のはずが、強制的に役員を引き受けなければならなかったりして、ときに理不尽に感じる家庭も増えている。変化を求められているイマドキのPTAについて取材した。

■「ぜひやりたい」は0%…誕生から70年 変化迫られるPTA

 2022年10月1日、名古屋市熱田区で開かれた、東海北陸地方のPTAの大会。

【動画で見る】役員選びの“免除の儀式”で泣き出す母親も…『PTA』強制からエントリー制にして起きたコト

1951年に発表された、伝統の「PTAの歌」とともに開幕したが…。

名古屋市PTA協議会の会長:
「PTA活動の存在意義が問われるようになりました」

分科会で話し合われたのは、担い手が少なくなっているPTAの改革だ。

名古屋市のPTA会長:
「委員・役員やりたいですかという質問に対しては、『ぜひやりたい』は0%、『やってもいい』が11.2%、『やりたくない』が61.9%」

清須市のPTA会長:
「うちもいま強制というか、もとから決まった役員の決め方になっているので、変えていきたいなと思っている最中で…」

戦後まもなく生まれ、70年以上の歴史をもつPTAが、いま変化を迫られている。

■「免除の儀式」で泣き出す母親も…活動が“ノルマ”化するPTA

 運動会などの行事の手伝いや、1点が1円分の寄付になる「ベルマーク」の回収など、子供や学校のための活動をしてきた「PTA(Parent-Teacher Association)」。アメリカの学校にあった、親たちのボランティア活動をモデルに始まった。

しかし、保護者からは…。

PTA役員未経験の母親
「くじびきで当たったら(役員を)やる感じです。割りばしに当たりがついていて…。(引くときは)『当たりたくないな』ですね」

現役PTA役員の母親:
「選ぶときに仕事で出席できなくて、『当たりました』って紙がきて、『引き受けます』っていうしかなくて引き受けてやっています。6年生で当たりました、逃げ切れませんでした」

過去にPTA役員を経験した母親:
「(活動に)仕事が終わってから行くってなると、時間も5時過ぎとか6時過ぎ…。ご飯もあるし、そういうときに集まるのが(大変だった)」

PTAの運営・活動の内容は学校によってさまざまだが、子供が卒業するまでに必ず一度は役員や係を担当しなければいけないなど、活動が「ノルマ」のようになっているところが大半だ。

共働き家庭も一般的になっているいま、負担に感じるという人も多いようだ。

全国のPTAの取材を続ける専門家に聞くと、役員選びのときは「免除の儀式」という、異様な手続きをとる学校も少なくないという。

PTA問題に詳しいライターの大塚玲子さん:
「本来PTAはやりたい人がやるものなので、そう考えると免除っておかしいんですけど、必ずやってくださいって言っている中で、やらないのには理由が必要になっているPTAがすごく多いんです。なかにはみんながいるところで理由を言わせる、その理由に納得しますかと他の人に手を上げさせる、人数が多かったからあなたやらなくていいですよ、とか…」

PTA役員のくじ引きを「免除」してもらうために、病気や家族の介護などの深刻な事情を大勢の前で言わされ、泣き出す母親が出ることも珍しくないという。

理不尽に思えるやり方が続く背景には、PTAならではの事情もある。

大塚さん:
「同じ人がやっていれば、去年こうだったから『今年こうしたほうがもっといいよね』とか『もっと楽になれるよね』とか、工夫が積みかさねていけるんですけど、(卒業などで)どんどん人が入れ替わっていくので継承されないんですよね。次の人がやってきて苦労してやるというのが繰り返されてしまう」

■問い合わせは毎日の様に…近ツリが始めたPTAのアウトソーシング事業

「PTAが大変すぎる」という声を受けて、新しいサービスが登場し、話題となっている。旅行大手の近畿日本ツーリストが2022年8月に新規事業としてスタートさせた、PTAの「業務」の外注を引き受けるビジネスだ。

KNT-CTホールディングスの担当者:
「『PTA業務アウトソーシングサービス』というものになっております。お問い合わせは毎日のようにいただいておりまして、想像以上にお困りごとあるんだなと実感しております」

広報誌や専用のウェブサイトの作成など専門的スキルが必要なものから、学校行事の受付の手伝いなど、とにかく人手がほしいときの人材派遣まで、幅広い「外注」を想定しているが、反響は想像以上だという。

同・担当者:
「その年にITに強い保護者の方がいらっしゃるとか、印刷会社とコネクションある保護者の方がいらっしゃるとかであれば、あまりお困りごとはないかもしれないんですけど、その方々が卒業されたときに引き継ぎが難しかったりとか、持続可能な活動が難しいという声をいただいておりますので、お力になれればと思いました」

■「旗当番」のための負担増「構わない」が6割超…活動ごとに“エントリー制”導入したPTAも

 改革に取り組むPTAも出てきている。名古屋市瑞穂区。陽明(ようめい)小学校の保護者が交代で通学を見まもる「旗当番」。

以前は「子供が小さい」「仕事がある」などの事情は関係なく、全ての家庭が月に1回程度担当。参加できなくなったら代わりの人を探さなければいけないなど、強制性の強いものだった。

しかし…。

旗当番をしている父親:
「子供たちが安全安心で学校行けるよう、ちょっとでも協力できたらなっていうのは思っています」

別の父親:
「僕はどっちかというとできれば参加したいなと。会社の都合も出勤が遅いほうなので、そうもいかんところ(家庭)もあるでしょうから、そこは持ちつ持たれつかなと思っていますけどね」

陽明小PTAでは段階的にやり方を見直し、この2学期からは完全に希望する保護者だけで当番を回すようになっている。欠席時も代役は不要だ。

陽明小学校の保護者を対象にしたアンケートの結果では、旗当番が子供たちの安全のため「重要」だと答えたのは、約9割と圧倒的だった。

そのために負担が増えても構わないという回答も6割に上った。

浮かび上がったのは、「子供たちのため、できることなら当番をやりたい」という思いだ。

では「できない事情」があったらどうか。「事情があれば免除の家庭もあっていい」という回答が80.7%。

子供の急な発熱などなら欠席も仕方ない(98%)、代役は立てなくてもいい(73.8%)といった回答が圧倒的多数派だった。

陽明小学校のPTA会長:
「(旗当番を)決して簡素化するわけではない。だけど、できない人はやっぱりできないと思うんですよ。お仕事であったり家庭の事情であったり、いろんな事情で(当番に)いない方も実際いらっしゃる。だからちゃんとみなさんのご希望を伺って、やれる方でちゃんとやりましょうという試みだったんですね。ふたを開けましたら、ほとんどの世帯のみなさまにご協力いただきまして、従来以上の制度が維持できています」

子供のため、学校のために協力したい人は多い。だったらできる人が、できるときに、やりたいことを…。

このPTAでは強制的な役員の割り当てを廃止し、活動ごとに参加希望者を募る「エントリー制」を導入。

保護者の声をベースに、学校を会場にした「子ども食堂」など新しい活動にも取り組んでいる。

陽明小学校のPTA会長:
「(会員の)共感がえられず、活動ができない領域は、もしかしたらやらないという決断も必要かもしれないですね。世の中が変わってきているのに(PTAの)活動が変わらないわけがなくて、世の中が変わりはじめているからこそ、われわれも環境とともに変化していく。それはどんな組織でも必然的なことだと思うんです」

東海テレビ「かわるPTA」で取材を続けています。pta@tw.tokai-tv.co.jpまでご意見・情報をお寄せください。