愛知県安城市の街の図書館「安城市図書情報館」は2017年にオープンしたばかりで、3つのフロアに渡る館内はまだ真新しさが残っている。ここには「一冊」との出会いを求め、年間100万人がこの場所にやってくる。本に囲まれながらそれぞれが図書館で刻む「人生の1ページ」を撮影した。

■2週間に1回40冊の絵本を借りる母娘…絵本を読むのは「大切な家族の時間」

 愛知県安城市の「安城市図書情報館」。

【動画で見る】本に囲まれて過ごす時間… “日本一の図書館”で刻まれる1人1人の「人生の1ページ」

年間貸出冊冊数は約160万冊。安城市が誇る“日本一の図書館”だ。(※同規模自治体比較)

 午前9時。開館と同時に次々と人がやってきた。お母さんと女の子の親子2人が向かったのは、本の返却口だ。

主婦(39):
「40冊借りて。2週間に1回(来ている)。(子供が本を)大好きなので、借りて」

1人10冊、家族4人分で40冊を2週間ごとに借りるという親子。この日も、返してすぐにまた新しい絵本を探していた。

主婦(39):
「これとこれで、もういっぱいかな…」

娘(3):
「ノンタン借りたい」

主婦(39):
「じゃあ、あとノンタン1つ借りておしまいにしようか?」

主婦(39):
「こんなに絵本を読んであげるっていうのが大きくなるとないと思うので、大切な家族の時間っていうか、大切な時間、それを過ごすための場所かなと思います」

■まだ見ぬ“世界の料理”を探すため 本が新たな興味の入り口に

 料理本のコーナーには、興味深そうに本を眺める女性がいた。

会社員の女性(28):
「私、いまスパイスカレー作るのにハマっているんですけど。普段買わない世界の料理とか借りてみて、面白そうだなと思ったら作ったりとか。最初の興味を持つために、ここから探しています」

普段は買わない本でも手に取ってページをめくり「新たな興味」の入口を探す、という人も多いようだ。

会社員の女性(28):
「来ても来ても、借りたいものがたくさんあります。秋、本たくさん読みたいなと思っていて、できれば忙しいながらも月3冊くらい読みたいなって思っています」

■おうち時間でDIYにどっぷり…家族のために大きな本棚を手作り

 絵本コーナーには、紙芝居もある。

女の子(10):
「何読もうかって迷っている時に、紙芝居があったから、みんなで紙芝居を読むことに決めました」

本が大好きな小学生の3姉妹。仲良く「読み聞かせ会」を始めた。

女の子(10):
「(紙芝居を読んで)今日はクリスマス。タツヤ君はお母さんとプレゼントをもって、おばあちゃんのお家へ出かけました。あ、電車だ!カンカンカンカン」

お姉ちゃんの上手な読み聞かせに、引き込まれる妹たち。お父さんも優しいまなざしを向けているが…。

手元にある自分の本が気になる様子。読んでいたのは、「DIY」の雑誌だ。

父親(37):
「面白そうだなって思って。もともと子供のキッチンの棚とか本棚とか作っていて、それの延長戦ですかね」

おうち時間を過ごすうちに、どっぷりハマった「DIY」。飼い猫のケージや、自転車置き場も手掛けてきた。

父親(37):
「(Q今度は何を?)小屋を…倉庫作りたいんですけど、いま本棚の優先度が高いので。(娘に)本、沢山あって入れるところないから、本棚つくらないとだもんね」

子供たちのために、大きな本棚を作る計画だといい、自宅を取材させてもらった。

父親(37):
「(娘に)ここ押さえててくれる?」

学校から帰ってきた3姉妹も、お父さんのお手伝い。横幅90センチの本棚を3つに分けて作る計画だ。本好き一家の大切な時間のために。

母親:
「あ、すごい。もうできたってよ」

本で学んだDIYスキルで手際よく仕上げ、まずは一つ目が完成した。

父親(37):
「(塗る色は)白じゃない?」

娘:
「白がいい!」

父親(37):
「子供たちも親も本を読むのが好きなので、大事にいろんな本を読んでほしいなって、子供たちに思います」

一家の「本棚計画」では、同じものをあと2つ。ここがまた本でいっぱいになる頃、3姉妹はもっと大きくなっていることだろう。

■将来は「英語のニュースレポーターに」…外国出身の女子高校生3人は“夢”に向かって一緒に勉強

 日本一の図書館には、自習スペースもたくさんある。

ひとり机に向かい、ペンを走らせる年配の男性がいた。

男性(66):
「あ、私毎日来てますね。復習っていうか、おもしろいですよ」

定年退職し、かつて仕事で使っていた英語を復習しているという。

男性(66):
「暇やもんでね。ひまひま。暇人って呼ばれとる、わたし。もう退職してね、することないじゃないですか。ルーティーンやもんで、趣味趣味。家におっても、うちの奥さんに邪魔者扱いされるじゃない?(笑)」

たしかに、ここなら没頭できそうだ。

 午後5時。学校帰りに立ち寄る学生も目立ってきた。

おしゃべりOKの「グループ学習室」を覗いてみると…。

女子高校生3人の会話は英語。安城市内の同じ高校に通う3年生のクラスメイト3人で、それぞれバングラデシュ、フィリピン、インドネシアの出身だ。

バングラデシュ出身の高校生:
「同じ学校に入って。テスト週間ですが、家で勉強できないと思って。分からなかったら友達に聞いて勉強するから」

3人は日本の大学への進学を目指し、テスト勉強に励んでいた。

フィリピン出身の高校生:
「大学に進学したいけど、とりあえず2年間くらい就職して、お金を貯めて大学に行く予定です。外国籍の企業で働きたい」

バングラデシュ出身の高校生:
「将来に英語の仕事をやりたいから。英語のニュースレポーターになりたいですけど。学校のテスト終わって英検も受けるし、そのあと大学の入試もあって、ちょっと忙しいと思います」

卒業まであと半年。夢に向かって共に励むこの時間も、青春の1ページに刻まれるに違いない。

“日本一の図書館”は、一日ごとにページをめくる、人それぞれの「物語」であふれていた。