PTAと関わりがなくても、知っている人が多い「ベルマーク運動」。60年以上続いている「ベルマーク運動」の「いま」を取材した。

■地道すぎる作業も「なくしきれない伝統」…PTAが担う「ベルマーク」の仕分け集計作業

 名古屋市昭和区の松栄(しょうえい)小学校。

【動画で見る】「なくしきれない伝統」?…PTAが取り組む『ベルマーク運動』の今 多くの“仕分け済み”がフリマアプリに

年に2回の「ベルマーク週間」が学校で決められている。

子供たちが、廊下にならんだ小さな箱に家で集めたベルマークを入れていく。

男子児童:
「ベルマーク!15点の83番!」

女子児童:
「ベルマークの募金みたいなのをしています」

別の女子児童:
「ちょっと大変だけど楽しい」

教師:
「じゃあ、それ最後入れておしまい!ありがとう」

菓子や文房具など、協賛企業の商品についている「ベルマーク」。

集めているのは、小中学校のPTAや保育園・幼稚園の「父母の会」などだ。

ベルマーク1点が1円分。このポイントで学校の備品や教材を購入し、学校に寄付する仕組みだ。

このベルマーク、集めてからが結構大変で、PTAのみなさんの作業の様子を見せてもらった。学校の家庭科室に集まったのは、ベルマークを担当する「成人教育部」の母親たち6人だ。

PTAの母親:
「これはキューピーの7の3点になっているので同じものしか入ってないんですけど、たまに間違えて入ってるんで気を付けて」

ベルマーク運動に参加しているのは現在46社で、商品数は約2000種類。

マークは東京にあるベルマーク財団にただ送ればよいわけではなく、この46の会社ごとに仕分け、それぞれ集計をしなければならない。この日は6人のうち5人がベルマーク作業初体験。同じ会社のベルマークを、集計をしやすいように10個ずつセロハンテープで止めていく。

記者:
「結構地道な作業なところありますね…」

PTAの母親:
「ほんとだね…。でもこういう作業好きだから楽しいですけどね。生徒の数が多くってみんないっぱい集めてくれるから、すごい量ですよ」

別のPTAの母親:
「カラムーチョがくせもので…臭くてベタベタするし…点数も低いし(笑)」

PTAの母親:
「これって番号が無くても大丈夫ですか?」

別のPTAの母親:
「これダメですね」

きちんと番号が切り取られているか確認しながら、作業が続く。

PTAの母親:
「生徒数が増えている学校なので、毎年集まる量が増えちゃって…。『なくしきれない伝統』みたいな感じではありますね。皆さん協力してくださって成り立っています」

「なくしきれない伝統」というが、松栄小では仕分けを子供たちと分担していて、保護者の作業量はこれでもほかの学校に比べれば少なめだ。

2022年の前期にはPTAメンバー8人ほどが3回集まり、あわせて2万2886点をベルマーク財団に送った。

PTAの母親:
「こんなことまだやってるんだなって、正直思ったんですけど…。細かい作業なので、時間をとる割には点数も低かったりすると、いろいろ考えることもあるんですけど」

■「仕分け済み」がフリマアプリで売られている現実 やり玉に挙げられる“ベルマーク集め”

 ベルマーク運動が始まったのは1960年。

学校の設備が整っていない時代に「すべての子供に豊かな環境で教育を」と、新聞社を中心に財団がつくられ、活動が広がっていった。

2007年には参加校が2万8500校を超えピークを迎えるが、共働き家庭の増加などで、「昔ながら」のベルマーク集めがやり玉に挙げられることも増えてきた。

<SNSのつぶやき>
「わざわざ有給とって数百円のために集まるなんて」
「この時間で子供と遊んだほうが有意義」
「メルカリで売られてるくらいなら、ベルマーク廃止して募金募った方がいいんじゃ…」

「お金を払ってでも勘弁してほしい」という親も少なくないのか、フリマアプリには仕分け済みのベルマークが数多く販売されている。

名古屋の公園で話を聞いてみた。

PTA経験のある女性(60代):
「ベルマークでどれだけのものが買えるかって考えると、ちょっと効率が悪いかなって気はするんですけど…」

1児の母親(30代):
「ちょっとびっくりですね。令和の時代にまだそうなんだって。アナログですね、結構」

追い打ちをかけたのが新型コロナだ。学校に集まっての作業が難しくなり、「伝統」だったベルマーク集めをとりやめるPTAが続出。この4年で参加団体は1000校ほど減っている。

名古屋市内でもベルマークを集める学校は、すでに少数派だ。

■「目指せ1000万ポイント」あえて市を挙げてベルマークを集める愛知県豊橋市の秘策

 珍しい方法を使って、あえて市を挙げてベルマーク集めをしているところもある。

豊橋市教育委員会の担当者:
「豊橋市ではベルマークを学校だけの取り組みとするのではなくて、市を挙げて全体での取り組みを行っております。『ベルマーク日本一プロジェクト目指せ1000万ポイント』ということで」

 2016年から豊橋市が始めた「ベルマーク日本一」プロジェクト。そこにはある「秘策」があった。

生徒:
「これで100枚です」

教師:
「いいですね、OKです」

生徒:
「ありがとうございます」

市内にある「くすのき特別支援学校」。各小中学校などで集めたベルマークがここに運ばれ、障害のある生徒たちが授業の一環としてベルマークの集計作業に取り組んでいる。

ベルマークのポイントは3分の1が支援学校に渡るが、保護者の作業の負担軽減に繋がると、30あまりの学校が依頼。仕分けや集計の作業は、支援学校の生徒の学習にも合っているという。

市がここまでして力を入れる理由を聞いた。

豊橋市教育委員会の担当者:
「ベルマークは皆さんのご協力で、教育活動の充実した品が買うことができますので。学校で全てのものを市や学校の限られた予算で買っていくのもなかなか難しいので、市として取り組みをスタートしようという流れになった」

学校にかける市の予算が限られ、ベルマークの寄付に頼らざるを得ないのが実情だ。

PTAの負担軽減のため、市が音頭を取って始めたプロジェクトの開始から6年あまり、約700万点の回収を完了し、累計1000万点の目標へ近づいている。(※取材時点で699万7921点)

母親たちがベルマークを集めていた、名古屋の松栄小学校ではPTAが集めたベルマークで一輪車5台や…。

図書館の本126冊を購入した。一輪車は体育の授業でも使うという。

親たちの子供や学校への思いをもとに60年以上続いてきた、ベルマーク。2021年度に集められたのは、全国であわせて 3 億 2698 万点だった。

■デジタル化は「時間がかかる」と説明もWEBで貯まる「ベルマーク」のサイトも登場

 ベルマーク運動を運営する「ベルマーク教育助成財団」の岡部敦郎さんは、デジタル化については慎重に検討しているが、「実際に導入となると時間がかかる」と説明している。

2008年には63社あったベルマークの協賛企業も、22年には46社へと減少。21年にはファミリーマートなど4社、22年にはロッテが脱退した。脱退した企業のベルマークは残っていても無効だ。

新しい仕組みとして、「ウェブベルマーク」というサイトも登場している。

このサイトを経由して楽天やヤフーなどのネット通販を利用すると、購入代金の一部が広告手数料としてバックされ、指定した学校のポイントになる仕組みで、利用を呼びかけるPTAも増えている。

東海テレビ「かわるPTA」で取材を続けています。pta@tw.tokai-tv.co.jpまでご意見・情報をお寄せください。