
年末を迎え、名古屋市熱田区の場外市場で、「師走の買い出し」を取材すると、スーパーでの買い物とは違う、市場ならではのテクニックを続々と発見した。
■“オープン前”に入店…プロばかりの7時前に買い物をする夫婦

1969年(昭和44年)に創設された、名古屋市熱田区にある「大名古屋食品卸センター」。一般の人も買い物できる民間場外市場だ。
【動画で見る】料理人等プロひしめく中で品定め…『年末の買い出しお得術』民間場外市場の“半値市”

約40店舗がひしめくセンター内には、鮮魚に精肉、野菜に果物まで、市場価格のお値打ち品が並ぶ。

特に毎週土曜日は「半値市」と銘打ち、各店舗イチオシの食材が、通常の半額で並ぶ。

この「半値市」で、年末の買い出しをする人を取材した。ポスターには“朝8時から”とあるが…。

6時半の段階ですでにお客さんの姿が。

リポーター:
「あれ何?魚ですか?なんでしょう?これ一体何ですか」

70代の女性客(妻):
「これ?初めて見た?サメの皮よ」
リポーター:
「サメの皮?」
70代の女性客:
「酢みそ和え(にする)」
スーパーではほとんど見かけない食材を買っている夫婦。
リポーター:
「いま、まだ7時前じゃないですか」
70代の女性客:
「今の時間はプロの人が多いよね。新鮮なものばっかりだもんね。
オープン前に来ることで、料理人などプロが買い求める鮮度抜群の食材を手に入れることができるという。

発泡スチロールの箱に魚を詰めている客がいた。

店で出た発泡スチロールの箱が、買い物カゴ代わりだ。

市場で買い物するために、わざわざキャリーバッグを買ったという女性も。様々な魚介類の他、乳製品、野菜にフルーツなど、夫婦で1週間、総額1万円分の食材を収めても、キャスター付きなので移動は楽だ。

リポーター:
「家までどのくらいかかりますか」
70代の女性客:
「片道40分はみといたほうがいいわね」
リポーター:
「そこまでかけても来る意味がある…」
80代の男性客:
「だって、おいしいもの食べたいでしょ」
リポーター:
「はい、食べたいです」
80代の男性客:
「それだけのこと」
■マグロの頭は予約で購入 「頼んどかないとなくなっちゃう」

マグロの頭を買いに来た夫婦。正月用を買うには少し早い気もするが…。

買い物客(妻):
「年末の予約で」

買い物客(夫):
「頼んどかないと、年末なくちゃっちゃたりするんで」

買い出し客が詰めかける前に「予約」をする。欲しいものを確実に手に入れることができる買い物術だ。

買い物客(夫):
「何年か前に来た時に、頭あるんだと思って買って…」
買い物客(妻):
「お店の方に聞いたら『(予約)いいですよ』ということで(予約した)」
■“クーラーボックス”を用意して買い込む客も

クーラーボックスを用意して訪れていたのは、医師の男性だ。
クーラーボックスの男性客:
「明日、クリスマスパーティーを子供たちとやるんで、海でとれて冷やした瞬間から口に入るまで、食べ物の温度を上げないために凍らせず冷やして持っていく」
この男性、“子供たちにおいしいものを食べさせたい”と、クーラ-ボックスで鮮度を確保。優しい買い物上手だ。

買い物翌日は、お手製の料理で楽しいパーティーになったそうだ。

クーラーボックスを持っている女性も発見した。
クーラーボックスの女性客:
「便利です、これはね。モノが悪くならないし。市場に来るときはいつも(持って来る)」

買い物についていくと…。
クーラーボックスの女性客:
「いつもここで買うんですよ。タコお願いします。ヒラメは?シジミお願いします。(家族)2人分だけなんですけど」
リポーター:
「結構、量買われますね」
クーラーボックスの女性客:
「冷凍したりとか、たくさん買えば安いし」
6種類、約2週間分をまとめ買いして、冷凍保存。おなじみの買い物術だ。

さらに、青果店でも…。
リポーター:
「爆買い、すんごい量」
野菜の持ち運びには、お店に備え付けのダンボールを使用。買い物袋に収まらない量を買った時に便利だ。

リポーター:
「帰り、すごい荷物になりますね」
クーラーボックスの女性客:
「自宅マンションに着いたら、カートを借りて乗せていってます」
自宅に同行させてもらうと、マンションに台車が常備されていた。大量の食材も難なく部屋へ。

ただ、冷蔵庫に収まるのか。
リポーター:
「結構すっきりされてますね」

クーラーボックスの女性客:
「あとね、そこにある冷凍室にも」
別にもう1台、冷凍庫を持っていた。コロナ禍で食品保存のためにセカンド冷凍庫を持つ人が増えたが、この女性の家では10年以上前から2台持っているという。

買ってきたものは下処理をして、冷凍保存をフル活用。食品ロスを極力減らす、買い物上手だ。

クーラーボックスの女性客:
「これはカニです」
リポーター:
「和菓子も入っていませんか?」
クーラーボックスの女性客:
「そうなんです。これ、冷凍にしておいとくと日持ちするから」
■男性「結構値切りますけどね」…結果は?

次は、真剣に品定めをしている夫婦に声をかけた。
リポーター:
「よくいらっしゃるんですか」
50代の男性客(夫):
「そうですね、僕、市場好きだから」

リポーター:
「市場回るときって、どういうことに気を付けて回ったらいいんですか」
50代の男性客:
「結構値切りますけどね」
しかし、どうやって値切るのか。男性が目を付けたのは、1箱3600円の数の子。

店員:
「数の子?」
50代の男性客:
「うん、数の子」
店員:
「今年はね、高い」
50代の男性客:
「高い」
店員:
「ニシンがね、とれんかった」
店員がニシンの不漁をアピール。値切りを言い出しにくい雰囲気だが…。
50代の男性客:
「これ、もっと安くなんない?」
単刀直入に、潔く交渉を切り出した。

店員:
「ごめん、精いっぱい」
50代の男性客:
「精いっぱい?」
店員:
「精いっぱいで許して、私の愛で」
軽くいなされたが、支払いの時…。
店員:
「これで…気持ちね。私の愛だよ」
50代の女性客(妻):
「100円(安くしてもらった)」

市場では、コミュニケーションも大事な買い物術のようだ。

この夫婦の自宅にもうかがうと、キッチンには大きな冷蔵庫が1台と、リビングには冷凍庫があった。この夫婦も“2台持ち”だ。

やはり、セカンド冷凍庫を活用する人が増えているようだ。
■年末の贈答品を市場で選ぶ“買い物術”

メモを見ながら真剣にショーケースをみている女性がいた。
女性客:
「いただいてうれしいものというと、やっぱり手間のかからないものということで。忙しい時期ですのでね」
リポーター:
「贈り物ということですか」
60代の女性客:
「そうです、計画的に」

年末の贈り物にと、魚の西京漬け探していた。贈答用というと、百貨店のイメージがあるが…。

60代の女性客:
「やはり値段的にも(市場の方が安い)。頂いた贈答用の箱、処分に大変じゃないですか」
リポーター:
「SDGsですね」

安さだけでなく環境にもやさしく。これも、マネしたくなる買い物術だ。
■事前に“下見”して臨む年末の買い物…若い世代の買い物術は

赤ちゃんを連れて買い物に来た夫婦。若い世代の“買い物術”を見せてもらった。

市場を巡りながら、時々立ち止まるものの、何も買わない。

20分ほど歩き回ったが、買ったのは夕食用というカワハギ2匹のみ。
20代の女性客(妻):
「下見みたいな」
30代の男性客(夫):
「年末に向けて、初見でどうしようってなるよりかは」
リポーター:
「なるほど、今日は年末のための事前の勉強」

この日は“下見”だといい、翌週再び市場で合流し買い物を見せてもらった。

リポーター:
「もしや、メモですか」
20代の女性客:
「メモです」
必要なものをメモしていた。無駄なく買い物ができる買い物術。早速、下見の成果が出ていた。そして…。

20代の女性客:
「これだこれだ」
30代の男性客:
「次は」
20代の女性客:
「カレイかな」
30代の男性客:
「はまぐりゲットしました」
リポーター:
「下見されている分、順調ですね」
夫婦:
「順調です」
夫婦で声が揃うほどの順調さだ。さらに、青果店では…。

20代の女性客:
「ブロッコリー、今日高いね」
30代の男性客:
「先週来たときは、1個で100円だったっけ」
20代の女性客:
「違う!3個で100円」
リポーター:
「今日、1つで128円。今日はもう買わないですか?」
20代の女性客:
「買わないです」
前の週との値段の差を把握しているため、値打ちな商品だけを確実に手に入れていた。

1週間分の食材と年末年始用で、総額は約1万3000円。
リポーター:
「下見したのは生かされましたか」
30代の男性客:
「十分」
20代の女性客:
「かなり」

2人とも、大満足の成果となったようだ。