三重県松阪市で450年続く和菓子店の18代目店主が、創業以来の看板商品の最中をアレンジし、驚きの和洋折衷メニューを開発しました。地元の食材も使用した “最中アヒージョ”です。インパクトだけでなく、店主のこだわりが詰まった逸品です。

■創業450年の老舗も憂う「最中離れ」

 三重県松阪市の「柳屋奉善(やなぎやほうぜん)」は松阪駅から徒歩5分のところにあります。

【動画で見る】創業は1575年…三重県の老舗和菓子店・柳屋奉善 18代目が探る和洋折衷の可能性「看板商品を次世代に」

1575年に創業した、450年続く老舗の和菓子店です。

創業当時から続く看板商品が、最中の和菓子『老伴(おいのとも)』。

女性客:
「松阪ちゅうたら、老伴やさ」

別の女性客:
「ネーミングがいいですね、老伴」

お土産としても人気で…。

男性客:
「神奈川の方から来まして。こちらが歴史が古くて有名なので、一度食べてみたく…」

中国の瓦に描かれていた、長寿を意味する「延年(えいねん)」の文字と、幸せを運ぶといわれるコウノトリの絵が最中の表面にかたどられています。

その中に、赤く色づけた白あんの羊羹を流し込んだ名物です。

しかし、ここ数年はコロナでお土産需要が激減しました。18代目の岡一世(おか・いっせい 43)さんは、売上は最大で6割も落ち込んだといいます。

柳屋奉善の18代目 岡一世さん:
「コロナ禍当初は人が街にいない、本当に閑散とした状態でした」

また最中の店では、後継者の問題も深刻になっています。

岡さん:
「最中は日本独自の文化と関わりがありまして、おひなさまであったりとか、地元に根付いた郷土愛を感じる最中がたくさん地方にはあると思うんですけど、最近では後継者不足で残念ながらなくなってしまったりといったところもございます」

伝統的なイベントが廃れ、後継者不足で老舗専門店が撤退するなど、全国で“最中離れ”が進んでいます。

■「レシピコンテスト」で見えた“和洋折衷”…「ローズマリー最中」試作も商品化は断念

 伝統の最中を残していくために、新商品のヒントをもらおうと、岡さんが開催したのが最中のレシピコンテスト「おウチもなかコンテスト」です。

最中の皮だけを販売し、SNSで一般の人たちにオリジナルレシピを投稿してもらいました。

アップルパイ風や…。

カルボナーラを乗せたもの。

イチジクのマリトッツォ風など、これまでにない斬新なレシピが続々とアップされました。

岡さん:
「送っていただいた作品の中には、どちらかというと洋風の作品が多かったので、ローズマリーを入れた最中(の皮)を作りました」

“和洋折衷”の最中商品の第1弾として「ローズマリー最中」を試作しました。

岡さん:
「そのまま食べても美味しいですし、実はポテトサラダを乗せて食べると美味しいです。最初に華やかなローズマリーの香りがきて、野菜とポテトサラダの食感が大変美味しいです」

ポテトサラダとの相性もよく、イベントでテスト販売したところ好評だったといいます。

しかし、課題も見つかりました。

岡さん:
「このローズマリーの最中はお料理系の食材にはよく合うんですけど、和菓子屋さんのあんことかそういう物とは全く合わなかったんです。やはり老伴の良さを表現しきれてない、まだ不十分かなと感じました」

和菓子店の良さを生かしきれないと、商品化は断念しました。

■先代も客も外国人も絶賛…試作で得たヒントから遂に生まれた「アヒージョ」

 看板商品の老伴に並ぶようなものを作りたいと、試行錯誤をすること1年かけてできあがったのが「和菓子屋さんのアヒージョ」です。

岡さん:
「最中にジャガイモがよく合いまして、さらに小豆と伊勢茶を加えたアヒージョを作りました」

ローズマリー最中で、ポテトとの相性の良さに気付いた一世さん。和菓子店の良さをいかせる小豆を使って、地元食材の伊勢茶も組み合わせて、スペイン料理のアヒージョ風にしたメニュー「和菓子屋さんのアヒージョ」を開発しました。

最中とアヒージョの瓶がセットになっています(伊勢茶&小豆 2376円)。

アヒージョは、蒸したジャガイモと小豆を、ニンニクや塩胡椒で味付けしたオリーブオイルで煮込み、食材の旨味を引き出しています。

香り付けに伊勢茶の粉末を入れ、最中にあう、甘じょっぱい味に仕上げました。

最中はクラッカーをイメージして、通常の老伴のサイズを二回り小さくしました。

アヒージョを引き立てるため、裏面にオリーブオイルを塗って表面をもう一度炙ってあります。

岡さん:
「アヒージョは瓶詰めになっていて、自分で乗せて食べると最中をサクサクした状態で味わっていただけますので、一番美味しい状態の最中を味わっていただくことができると思います。小豆が和菓子で使っている材料ですので、クラッカー形の最中になってもすごく相性がいい味ですね」

この斬新な新商品に先代で父親の久司さん(72)も驚いていました。

先代の久司さん:
「私は料理としてアヒージョは作ったことありますけど、ビックリというか『そんなん無理やろう』って。だって、和菓子とアヒージョなんてまったく合わないですからね」

最初は半信半疑だったといいますが、今では太鼓判を押します。

久司さん:
「食べてみたら美味しかったんで。お家で楽しめる、自分でアレンジできるのがいいですね」

一世さんは、小豆の代わりに松阪産大豆を使ったバージョン「和菓子屋さんのアヒージョ」(まっつぁか大豆 2376円)も作り、地元・松阪のPRも。

開発して間もない「和菓子屋さんのアヒージョ」を、お客さんに試食してもらいました。

女性客:
「パリパリ。ちょっと塩気があって美味しいです」

別の女性客:
「そんなにオリーブオイルが強くないので、食べやすいと思います」

また別の女性客:
「まろやかというか…食べやすいですね」

そして、近所で英会話教室を開いているイギリス人の親子にも試食してもらいました。

英会話教室の先生(イギリス人):
「美味しい。ワイン欲しいな。これ合うと思う。すごく美味しい」

岡さん:
「今回できました和菓子のアヒージョを、もっとたくさんの人に知っていただいて、盛り上がっていただければなと思っています。さらにこのアヒージョの元となった老伴を、次世代に、そしてより多くの地域の方に知っていただきたいと考えています」

「和菓子屋さんのアヒージョ」は「伊勢茶&小豆」と「まっつぁか大豆」の種類があり、いずれも2376円です。

3月16日から販売を始めています。

2023年3月13日放送