三重県の「熊野大花火大会」が29日、新型コロナでの中止や台風などによる延期を乗り越え、4年ぶりに開催されました。大輪の花の下には特別な思いで夜空を見つめる人たちがいました。

 29日の夜、夜空を彩った約1万発の花火。4年ぶりに熊野の夏の風物詩が復活しました。

観客:
「花火楽しかった」
「久しぶりなのでだいぶ近いなと。感動的ですね」

 この日を特別な思いで迎えた人もいました。その一人が、地元・熊野出身の西川まり子さん(69)です。

西川まり子さん:
「3年前に兄が亡くなりまして、その年に花火大会がなくなったんでぜひ(花火を)あげてあげたいなと思っていたんですけど」

 初盆に、亡くなった人の冥福を祈り打ち上げたことが起源とされる熊野の花火。西川さんも、兄をしのぶ花火が打ち上げられる日を待ち望んでいました。

西川さん:
「3年間って長かったんですけど、今思うと良かったかなと思いますね。兄も喜んでいると思います」

【動画で見る】延期に次ぐ延期で三度目の正直…『熊野大花火大会』4年ぶりに復活した風物詩 地元には“特別な思い”の人々

 やっとという思いでこの日を迎えた人はほかにもいました。

 花火師の伊藤章さん。船の上からもおよそ3500発の花火を打ち上げる熊野大花火大会。伊藤さんは「難しい現場」と言います。

伊藤さん:
「(熊野の花火は)海の上ですので波に影響されるのがあってここまで延期になったんですけど」

 今回の大会は8月17日に開催が予定されていましたが、台風などの影響で2度にわたって延期になっていました。

伊藤さん:
「延期になったんで調整お願いしますって言ったら、『週明けに連絡します』っていう感じで。お盆やったらお盆休みのうちやもんである程度は(融通が)利くんですけど、それ以外はどうしても…」

 大会当日は、設置作業などのため30人ほどが必要ですが、日程が変わったためアルバイトなどの確保が困難に。

伊藤さん:
「一応22~23人まで、もうあと2~3人手が欲しいなあっていうところですかね」

 迎えた29日の開催当日。伊藤さんは、早朝から尾鷲港で船への花火積み込みを始めていました。最終的に27人の人手が確保でき、一安心です。

伊藤さん:
「天気も良くなったし皆さんに楽しんでいただけるように頑張らせてもらいます」

 開催地の熊野では、2度の延期により次のような現象が起きていました。

(リポート)
「続々とツアーのバスも集まってきましたが、駐車場の半分はガランとしています」

 いつもは満車になるツアーバス用の駐車場。開催日がずれたことで、約140台の予約が70台ほどに半減してしまっていました。

 地元の精肉店では長年、花火の開催日は店を閉めていましたが、今回は店先で串焼きやすじ煮込みを販売して盛り上げることに決めました。

下岡精肉店の店長:
「2回延期しとるから盛り上げた方が良いだろうと。駅前でシャッター閉まっているより開いていて盛り上がっている方が雰囲気出るかなと思って」

 当初12万人が見込まれていた来場者は半分以下の5万人となりました。それでも、花火の開始時刻が近づくと次々と人が集まり、会場の七里御浜海岸はあっという間に人で埋め尽くされました。

 午後7時すぎ、いよいよ熊野大花火大会がスタートしました。

 直径90センチの花火を海の上で爆発させる「三尺玉海上自爆(さんじゃくだまかいじょうじばく)」に、世界遺産から打ち上げる「鬼ヶ城大仕掛け(おにがじょうおおじかけ)」。鮮やかな光は待ちわびた人々の脳裏に焼き付いたようです。

観客:
「めっちゃきれいやった」

別の観客:
「やっぱり一番良いと思いますね、三重県の中で。ちゃんとしたやつができて、楽しみで、我慢したかいがあったと思います」

 終了直後には、まだ船の上にいる花火師の伊藤さんから大迫力の動画が届きました。

伊藤さん:
「皆さんがケータイ振っていただいたのがものすごくよく見えていましたので、観客の方にお礼を伝えたいと思います。やりきった感がすごいです」