2022年、愛知県警岡崎署で勾留中の男性が死亡した事件で、愛知県警は岡崎署の幹部らを、業務上過失致死や特別公務員暴行陵虐などの疑いで書類送検したことを明らかにしました。

 男性が死亡してから約1年、内部への捜査で明らかになった警察の留置場の実態とは…。

 2022年11月25日、愛知県岡崎市の店舗の前に集まったパトカーや警察官。パトカーの後部座席に1人の男性が乗せられようとしている様子が、映像に捉えられていました。当時43歳の男性です。

 男性は公務執行妨害の疑いで逮捕。岡崎署の留置場で勾留されていましたが2022年12月4日、息をしていない状態で見つかり、その後死亡しました。

【動画で見る】警察署で勾留中の男性が死亡…署の幹部らを業務上過失致死等で書類送検 遺族は報告受けるも「納得できない」

 当時、男性の父親は…。

男性の父親(2022年12月):
「気持ち的には、最初の時は人を傷つけずに警察に捕まってやれやれと思った。だけど大間違いだったということ。ペット以下の扱いをされた子供がむなしくて、悲しくて」

「警察の留置場で、息子は動物以下の扱いをされた」と訴え続けた父親。勾留中に暴れたため、保護室に隔離された男性は、延べ140時間にも渡ってベルト型の手錠などで手足を拘束されていました。

 また、横たわった状態で、幹部も含む複数の署員に足で蹴られていたことが監視カメラの映像から発覚し、警察の留置場内での暴行の疑惑が浮上しました。

男性の父親(2022年12月):
「人間扱いじゃない。本当に自分の子供だったらそんなことできるかって。日本の治安を守る警察がやることか、冗談じゃねえって本当に。陳謝して謝ってくれと言いたい」

 事件の発覚から間もなく1年が経とうとしていた2023年12月1日。

平松伸二警務部長:
「業務上の注意義務があるのに怠り、漫然と放置した過失により、高度脱水による急性腎不全により(男性を)死亡させた」

 愛知県警は、岡崎署で留置を担当していた警務課長代理ら6人を、業務上過失致死や特別公務員暴行陵虐などの疑いで書類送検しました。

 中でも警務課長代理は2022年11月28日から29日にかけ、男性を足で蹴り踏みつけるなど複数回暴行していたほか、糖尿病や統合失調症の持病を患っていた男性に医師の診察も受けさせず、薬を与えることもなく必要な医療措置を怠った疑いが持たれています。

 また2022年9月、この警務課長代理は、当時勾留中だった別の男性に対しても暴行を働いたことも判明し、県警はこの男性への暴行についても、4人の警察官と既に退職した元警察官1人のあわせて5人を書類送検しました。

 2つの事件で書類送検された警察官らは合わせて9人になりますが、県警は認否を明らかにしていません。

平松伸二警務部長:
「岡崎警察署署長、A警視正、60歳、国家公安委員会から減給100分の10、3月の処分となりました」

 署長や副署長については刑事処分は見送られましたが、監督責任を怠ったとして署長は減給3か月、副署長は減給1カ月となったのをはじめ、書類送検になった署員を含む11人が懲戒処分となりました。

 岡崎署長と警務課長代理は12月1日付で辞職していて、岡崎署長は「私の業務管理の不徹底こそが今回の事案を招きました」などとコメントしています。

 発表に先立ち、警察は男性の父親のもとを訪れ、報告をしていました。

男性の父親(2023年12月1日):
「警察が今日説明に来たのだって自己満足なんだわ。仕事で来とるだけなんだわ。全然納得できんよ」

 会見で「岡崎署の留置管理業務が、組織的に機能していなかった」と釈明した愛知県警。今回の事件を受け、医療が必要とする容疑者への対応を徹底するなど、再発防止に努めたいとしています。