岐阜県土岐市の「曽木公園(そぎこうえん)」は、東海地方屈指の紅葉の名所で、夜のライトアップの眺めが自慢だ。

町のボランティアが毎年ライトアップの準備をしてきたが、メンバーの高齢化が進み、2023年で最後を迎えた。25年間続いたライトアップ最後の年、町の人の思いを聞いた。

■“日本一”の紅葉ライトアップ 4年ぶり開催へ

 東海環状自動車道・せと品野(しなの)インターチェンジから、国道363号線を東へ20分、土岐市の「曽木公園」。

【動画で見る】50代中心で始めた実行委員が高齢化…紅葉の名所で25年続いたライトアップが今年で見納め「町が元気になった」

広い園内には、カエデやイチョウなどおよそ300本があり、「飛騨・美濃紅葉33選」にも選ばれる東海地方屈指の紅葉の名所だ。

水面に映し出される「逆さもみじ」が一番の人気で、夜のライトアップは全国の紅葉ライトアップランキングで1位になったこともある“町の宝”だ。

2023年10月22日、木々がまだ色づく前の曽木公園に大勢の人の姿があった。総勢30人、町の人たちで結成した「ライトアップ実行委員会」のメンバーだ。

メンバー全員がボランティア。25年間続けてきたライトアップは、地元有志の力を借りた“手作り”のイベントだ。

実行委員会の委員長、水野健一さんが、町の宝を来場者に楽しんでもらえるように、スタッフに呼びかける。

もみじライトアップ実行委員会の委員長・水野健一さん
「素晴らしいライトアップと言ってもらえるように頑張りたいので、よろしくお願いします」

この日は11月18日の初日に向けて、草刈りに落ち葉拾いなど、公園の清掃作業を行った。

ボランティアの男性:
「曽木町のためやし、田舎やもんでみんなで手伝って協力しあってやらないとできないもんですから」

別のボランティアの男性:
「やっぱりきれいだし、守っていかなきゃいかんところはある」

また別のボランティアの男性:
「私たちは大変…。3年分の草や木を切らないかんけど、やっぱり皆さんに喜んでもらいたい」

新型コロナの影響で、ライトアップの開催は4年ぶり。公園へと続く歩道の草も、入念に刈ってキレイにする。地元の人にとってこの公園は特別な場所だ。

水野さん:
「使命感というと大きなことですけど、これだけの公園があるということはなんとしてでも維持したい。やっぱり曽木町の宝、土岐市の宝」

■実行委員会メンバーの高齢化が進みライトアップは今年が最後

 ライトアップは、たまたまライトで紅葉を照らしていた地元の若者が、水面に映った美しい「逆さもみじ」に気づいたことがきっかけで始まったという。

今や東海地方を代表する紅葉の名所として全国にその名を知られるまでになったが、ライトアップは今回2023年が最後の開催だ。

当初50代が中心だった実行委員会のメンバーは高齢化が進み、ほとんどが60~70代になった。公園の整備やライトなどの維持管理が難しくなり、やめることになった。

水野さん:
「今までも抜いていませんけど、今年は最後だから手を抜かずに最後のライトアップを、来ていただいた方におもてなしをしようということをみんなに話しています」

ボランティアの女性:
「みなさん楽しみにして来てくださるでしょ。最後やでがんばろうっていう感じです」

別のボランティアの女性:
「やっぱりきれいにしたい、みんなが来てもらうのに」

紅葉が徐々に進んできた11月12日。この日はライトアップに向け、最後の準備を行っていた。電源ケーブルを伸ばし、ライトを設置。手際よくこなしていく。

ライトの設置方法にもこだわりがあった。

水野さん:
「もみじが池に映る(ライトの)方向はどこがいいか。葉っぱにきれいに(ライトが)映ると池にきれいに映る。それは経験でやらんとすごく難しい、セッティングが一番大事」

8時間かけてみんなで300個のライトを設置した。

■迎えた初日 昼から公園の入口には紅葉目的の行列

 そして11月18日、土曜日。地元の人たちで準備をしてきた「ライトアップ」の初日を迎え、公園の入口には長い行列ができた。

真っ赤に燃えるもみじが観光客を迎える。

昼の「逆さもみじ」は夜とはまた異なる趣がある。

愛知県長久手市から来た男性:
「昔ちょっと来て、雰囲気が良かったのでみんなで来ようと」

一緒に来た女性:
「ライトアップ用に池の水とかも張ってあるのかな。夜は混むかなと思って昼間に来ました」

名古屋市から来た男性:
「ライトアップが今年で最後なのでやって来ました。子供たちにも見せてあげたいなと思って」

西尾市から来た男性
「池に映った逆さもみじがキレイで、もう一周しようかなというぐらい」

一緒に来た女性:
「ライトアップが今年で終わりっていうのをテレビで見たので、せっかくなので」

ライトアップの見納めに、と訪れていた人も大勢いた。

公園内にも長い行列ができていた。

毎年恒例「おかあさんの店」の豚汁だ。

地元の人たちが手作りした野菜たっぷりの豚汁は、1日1000食も出る人気メニュー。

紅葉を愛でながら食べると、おいしさも格別だ。

■ライトアップは終焉も…この素晴らしい紅葉はこれからも

 そして、いよいよライトアップの時刻を迎えた。

カウントダウンで点灯すると、拍手と歓声が広がった。

公園内の木々が夜の闇に浮かび上がり、一気に幻想的な雰囲気に。

来場した女性:
「逆さもみじが有名って聞いていて、楽しみにしていたので見られてよかったです」

来場した別の女性:
「ライトアップでめっちゃキレイになっていて、ほんとに神秘的でした」

午後6時、駐車場はいっぱいになり、多い年では1時間待ちの車列ができたというが、これも今年で見納めだ。

この日はライトアップが終わる午後9時まで、大勢の人が足を運んだ。

大阪府から来た男性:
「残念ですけど今年で最後とっていうのがあったので、こんな美しい景色を見られないのはもう嫌やというので、是非とも1回見ようと。もう感動です、感動です」

実行委員会の委員長・水野さん:
「4年ぶりに開催して心配でしたけど、これだけのたくさんのお客さんが来て車も渋滞してますけど、なんか感動しています。ライトアップは町の活性化をやろうと思ってやってきましたけど、今年で終わってしまうけども、活性化に少しでも役に立ったかなと」

実行委員長を務めた水野さんは、25年続けたこのライトアップで「曽木」の名前を知ってもらい、町が元気になったと振り返る。

水野さん:
「やっぱりいつまでもこの公園はみんなで守っていきますので、ライトアップはなくなりますけど公園はずっと続きますので、ぜひこの素晴らしい紅葉を見に来ていただきたいと思います。今夜はたぶんゆっくり眠れるかもわからん」

2023年11月21日放送