学校の備品を「PTAからの寄付」として購入している実態が各地で問題になっています。香川県高松市では市が学校の予算を増やし、改善しました。名古屋市でも5年間で約1億8400万円の「寄付」が明らかになりましたが、「第二のサイフ」状態を変えることができるのか、河村たかし市長に考えを聞きました。

■子供たちの身を守るための備品もPTA会費で購入

 名古屋市東区の東白壁小学校は、PTA会費で多くの備品を購入していたことが明らかになった学校の1つです。

【動画で見る】子供の身を守る備品にも…PTAの“第二のサイフ状態”変えられるか 単独取材に河村市長「学校の予算増やす」

東白壁小学校の服部浩之教頭:
「ちょっとでも子供たちの外遊びが充実するようにということで、竹馬や一輪車が置いてある」

体育館で熱中症対策に使う「スポットエアコン」には、PTAのシールが貼られています。

服部教頭:
「子供たちの暑さ対策になればということで」

購入費用は3万4800円でした。

玄関には、子供がケガをした時に使う「車いす(1万7400円)」。

保健室の簡易ベッド(7109円)は、コロナ禍の隔離用で急遽必要となり、公費ではなくPTAの寄付で購入したといいます。

このほかにも、PTA会費で買ったものを集めてもらうと、コロナ対策の消毒液や除菌シートに、宿題チェック用のシールやスタンプ、学校で飼う動物のエサも。

不審者から子供の安全を守る「さすまた(19万6020円)」もPTA会費から購入していました。

この小学校では、PTAの寄付という形で買った備品は、5年間で198件、169万円あまりでした。市の予算で買うことはできなかったのでしょうか。

服部教頭:
「公費で買いたいけど買えないものというのは、たくさんあるんです。どうしても学校として必要性があるとなった時に、PTAの方から『寄付させてください』という形で頂いています」

■寄付は「年間数件」としていた名古屋市 全校調査で3640件1億8400万円分が発覚

 名古屋市は、これまでPTAから小中学校への寄付は年間数件しかないとしていましたが、東海テレビがPTA会長にアンケートすると「教頭先生から会費が余ったので備品を買っていいか相談された」「会計を学校側が握っており、事実上学校の経費になっている」といった、たくさんの寄付があるという情報や、学校への疑問の声が集まりました。

東海テレビが指摘すると市は全校調査に乗り出し、過去5年で3640件、1億8400万円分(高校・幼稚園含む)のPTAからの寄付が明らかになりました。

この調査結果を細かく見ると、寄付が全くないという学校もありましたが、200万円近いグランドピアノ(192万4000円)や、放送室の設備(165万880円)をPTAが寄付している学校もありました。

このほか給食の食器や教室のロッカーなど、学校に必要不可欠とみられるようなものや、来客用とみられる茶葉や、和菓子、職員室のLANの修理といったこまごまとした出費にも、PTA会費が使われていることがわかりました。

■予算を7000万円増やし改善…年間1億円以上の寄付があった香川県高松市

 学校の予算不足などからPTAをいわゆる「第二のサイフ」として頼る実態は、全国的にみられますが、大きな変化を遂げている地域もあります。

香川県高松市の木太南(きたみなみ)小学校も、2年前までPTAからの寄付で学校の備品を購入していました。

廊下に並ぶ棚には、「令和元年度PTA購入備品」と書かれたシールが貼られています。理科の実験器具や、CDプレーヤーなど、PTAに備品を買ってもらうのは「当たり前」だったといいます。

木太南小学校の真鍋康秀校長:
「寄付をお願いしていいのだろうか、いけないんだろうかって悩むぐらいなら、寄付を始めから受けない方が後で楽なんじゃないかと。2年前からPTA会長と協議して寄付をなくした」

毎年130万円あった寄付を一気にゼロに変えたといいます。

高松市では2021年6月、市議がPTAの寄付について問題提起しました。

植田真紀市議(当時 高松市議会2021年度6月定例会):
「教育委員会はPTA予算からの学校への寄付の実態について把握しているのでしょうか。学校運営費を充実させる考えについてお答えください」

市内69校への調査で名古屋市を上回る、年間1億円以上の寄付があることがわかり、市は公費が足りなかったと認め、予算を一気に約7000万円増やしました。

植田議員(現在は香川県議):
「基本的なロッカーとか傘立てとか、そういうものは何でもかんでもOKだったみたいな感じはしますよね。PTAが『任意加入の団体』だということをちゃんとしていくためには、税金をきちんと投入していくということが重要なんです。PTAの集めたお金はPTAの本来の活動に使う」

予算増を受けて、木太南小学校では寄付を一切受けないと決め、先生たちの意識にも変化が現れたといいます。

木太南小学校の教師:
「こういうものが使いたいからということで『PTA会費の方からお金をあてましょうか』というようなことがちょっと前にはありましたけれども、そういうことが無くなって。見通しをもって計画的に物を購入していくという意識が高まりました」

高松市が予算の大幅な増額とともに取り組んだのが、学校のお金の「見える化」です。

各学校で年度初めに保護者に負担してもらうものの計画を示し、同意を取ることをルール化しました。

真鍋校長:
「やっぱり保護者が知らないところで購入していて、後でお金だけ請求されるというのではいけないと思うので、先生方の意識改革と学校全体の会計に対する『見える化』や共通理解とか、そのあたりが大事なのかなと思っています」

「学校のサイフ」ではなくなったPTA会費はこれまでの半額以下になり、経済面の負担が減ってPTAへの加入率もアップしました。

■5年で1億8400万円寄付の名古屋 河村市長は「予算増やす」と明言

 名古屋市でもPTAを「第二のサイフ」にしないために学校の予算を増やすことはできないのか、河村たかし市長に単独インタビューしました。

名古屋市の河村たかし市長:
「PTAの寄付で学校の設備を直したりもしとるわけですよ。学校がきちんとせないかんですよ、P(PTA)の人を困らせてどうするのという話ですよ」

Q先生が使う消耗品とかもPTAが買っています
河村市長:
「先生が使うやつ?ほんなもんいかんよ、そんなのはちゃんと請求してくれないかんですよ。それひどいぞ、そりゃあ」

Q保護者の負担に頼ることがないように予算を増やしますか?
河村市長:
「増やしますよ。運用のルールみたいなものを定めますので、ほんなら。『これは気持ちだで』と言われてもよっぽど慎重になる態度を前提として、そこらへんを区分けして、学校の設備だとか先生の備品だとか。『先生の備品だって気持ちがあればいい』というかもわからんけど、そういうものは予算でちゃんとやると、私の仕事だがね、これ。予算は市長ですよ、言っておきますけど、責任は」

河村市長は教育委員会から必要な予算を示させたうえで2024年度、学校の予算を増やすと明言しました。実現すれば、15年ぶりとなります。

2023年12月20日放送