2023年は新型コロナが緩和されて街はにぎわいを取り戻したが、食料品の値上げなどの「物価高」や「円安」に翻弄された1年となった。2024年は物流業界を始め、“待ったなし”の問題が山積みだ。泣いた人、笑った人、東海地方で様々な人の声を聞いた。

■活気戻った年末の名古屋の繁華街…物価と為替に翻弄された1年に街の人は

 忘年会シーズン真っ只中の2023年12月中旬、名古屋の繁華街、錦の居酒屋は忘年会が復活し、活気が溢れていた。

女性客:
「来年頑張りましょうという忘年会です」

男性客:
「今週ずっと飲み会ラッシュ」

【動画で見る】円安で逆風の2023年…定価値上がりで販売苦戦の輸入車販売会社 中国のEVメーカー『BYD』が救世主に

2023年はどんな一年だったか聞くと「物価高騰」や「円安」をあげる声が相次いだ。

建築業の男性(50代):
「毎週のように材料の価格が『値上がりします』と。“マックス”がおくられてきまして」

別の建設業の男性(50代):
「安くなるもんなんて一個もないですもん。ありました?」

食品加工業の男性(60代):
「原料は海外依存ですから」

情報・通信業の男性(50代):
「ちょっと遊びで株をやっているんですけど、ガンと下がっちゃって」

2023年は、物価と為替に翻弄された、激動の一年となった。

■1日の売上は“過去最高”も…「材料高」「人手不足」で尽きぬ悩み 名古屋が本社の寿司店

「や台ずし」は、名古屋市東区に本社を置く『ヨシックスフーズ』が運営する寿司店だ。

コロナの5類移行によって賑わいが戻り、12月16日の売上が全国316店舗の合計で1億円を超え、“過去最高”となった。

ヨシックフーズ 伊達富夫常務取締役:
「金曜日、土曜日の売り上げが非常に好調になってきておりまして、当日のお客様も多いですし、非常に盛り上がりがかなり強くなっているなと感じています」しかし、止まらない“値上げ”の波に、頭を悩ませる一年でもあったという。伊達取締役は、「食材は一通り値上がりしたのではないか」と振り返った。

伊達常務取締役:
「特にマグロは数割ぐらい上がったりする時期もあったり、油の価格が上がっているインパクトも結構大きいかなと。手羽先の唐揚げとかありますし、手羽先自体も上がって、油も上がってなので」

全国展開するスケールメリットを生かして少しでも安い仕入れ先に変更するなど、対策を進めたが、2021年と比べると、油は最大1.5倍、鮮魚は全体で1.2倍ほど上がり、一部メニューの値上げを余儀なくされた。

伊達常務取締役:
「トヨタさんの工場の方とかでも非常に雇用環境がいい会社、グループがあるので、飲食業界で名古屋は結構、人手不足と言われているエリアなんですけど、今年は一段と厳しい状況でもあります」

■同じ“車事業”でも円安で明暗…輸入車販売店は「ダメージ」救世主も

 トヨタ自動車は2023年11月、通期の業績予想を上方修正し、売上高は43兆円、営業利益は4兆5000億円になると発表した。いずれも“過去最高”だ。半導体不足の緩和で新車の生産が回復していることに加え「円安」が大きな要因だとしている。

2023年の始めには円相場は一時、1ドル=127円台の円高水準だった。しかし11月には1ドル=151円台まで値下がりし、トヨタなどの輸出産業には、追い風となった。

ロイヤルの神谷和憲社長:
「円安はすごくダメージになっています。定価の値上がりが起こっていまして、ここ1年で10万円とかそれくらいは上がってきているのかなと」

原料高と円安の影響で、輸入車は2022年に続き値上げとなり、販売に苦戦する1年になった。

ただ、落ち込んだ売上を補った「救世主」がいた。中国の大手電気自動車メーカー『BYD』だ。

神谷社長:
「私たちの大黒柱になる車種ですね」

『BYD』は2023年から日本での販売がスタートし、神谷社長もいち早く「ディーラー」として名乗りを上げた。魅力は、その「安さ」だ。カーナビや音声認識、安全機能を標準装備して440万円で、国の補助金を使えば300万円台で購入できる。

ガソリンが高騰したことも注目を集めた要因だ。

神谷社長:
「エンジン車、ディーゼル車という選択肢から、さらに電気自動車という選択肢が合理的な値段で買えるようになった」

この販売店では、BYDをすでに65台、およそ2億5000万円を売上げたという。2024年1月6日には、新たにショールームもオープンし、更なる販売増加を狙っている。

■ドライバーは不安を口々に…「2024問題」に揺れる運送業界

 長距離トラックなどのドライバーたちは、不安を募らせている。理由は、物流業界を悩ませる「2024年問題」だ。愛知県岡崎市の新東名高速道路のサービスエリア「NEOPASA岡崎(ネオパーサ)」で話を聞いた。

ドライバーの男性(53):
「時代が時代やからフェリー輸送が増えてきた。労働時間を減らすために」

28歳の若いドライバーも不安を口にした。

ドライバーの男性(28):
「給料とかそのままならいいですけど、やっぱり下がると思うので。子供も嫁もいます。(子供は)1歳と2歳なので、これからお金がかかってくるので、やっぱり(給料は)減ってはほしくない」

ドライバーが不安を募らせる原因は、物流業界を悩ませる「2024年問題」だ。労働基準法の改正により、現在は上限規制がないドライバーの時間外労働が、2024年4月から年960時間に制限される。ドライバーの労働環境の改善を図るためだが、“思うように稼ぐことができなくなる”と不安の声も少なくない。

ドライバーの男性:
「運送会社は中堅から下くらいは、絶対給料ぐっと下がるはず」

別のドライバーの男性:
「給料が下がることが一番怖いかな。働けるうちにどんどん働きたい」

国土交通省の調査によると、このままの状態が続けば、2030年には日本の輸送能力がおよそ34%不足し、年間9億トン相当の荷物が運べなくなると推計されている。コロナ禍もあり、ネットショッピングが拡大して荷物の取扱数は右肩上がりだが、配達が滞って荷物が届かない可能性もある。

■実勢価格は“適正価格”の6割程度 苦悩続く運送業界

「2024年問題」を目前にして、運送会社も頭を悩ませている。

名古屋市港区の運送会社「信成(しんせい)」は、精密機械や飲料品などを運ぶ、従業員65人の会社だ。

信成の成瀬茂喜社長:
「現状の運賃でいくと厳しい部分があります。ドライバーの取り分も減ってきてしまう。(岐阜県)関市から大阪までっていうのがあります、これ大型ですね。5万円っていう金額です。4万3千円であったりとか、安いです。これが今まかり通ってしまっていますから」

中部運輸局から示されている「適正運賃」では、名古屋から大阪までのおよそ200キロを大型車で運んだ場合、本来は7万円ほどの運賃が適正とされている。しかし実際の取引は、その“6割”程度だ。「適正運賃」に法的な拘束力はなく、実際の相場と大きく乖離している。

単純な「時間外カット」となるこのままの状態では、長距離ドライバーの収入は月に数万円単位で減る可能性もある。

成瀬社長:
「ドライバーさんにも、今までみたい無理をしなくても稼げるような賃上げができるような体制をぜひとも作っていきたい」

2023年は物価高や円安に翻弄されたが、街では、2024年は明るい未来を描く声を多く聞かれた。

50代男性:
「来年は明るいと思いますよ。いろんな人が物価高に慣れてきて、どんどん活性化していくと思いますね」

20代男性:
「飛躍できような年に。会社をひっぱれるような人材になれるように」

60代男性:
「来年はいいことがあるでしょうと信じたいし、やっていかなかんなと」

2023年の年末、久しく聞けなかった「乾杯」の声が、繁華街に響き渡っていた。2024年は、もっと大きな声で乾杯できることを願う。

2023年12月18日放送