役とは言え、“ウツボカズラ女”に翻弄される日々はいかがですか?
男は何と誘惑に弱い生き物だと痛感しています(笑)。自分は雄太郎とは違う、という男性もいるでしょう。きっとそれは、うまい具合にそういう場面を回避してこられただけで、要はタイミングの問題。魔が差すことなんて、いくらでもあるから。“ウツボカズラ女”に遭遇したら、誰でも雄太郎のようになってしまう可能性が…(笑)。
エリート街道を歩んできた男性が女性問題でつまずくことは、実際あると思います。
女性へのこだわりが強いか弱いか度合いが違うだけで、男は狩猟民族だし、収集癖もありますから。どんな職業の人でも、知識や常識があろうがなかろうが、欲求がある以上、根底にあるものは多分一緒。だから『え、あの人が!』ということが起こるんですよ。
作品について感想をお聞かせください。
原作も脚本も女性の方が書かれているから、“女性目線”のエグリ方が、ある意味ホラーのよう(笑)。きっと皆さん、ご自身の開かずの扉を開いて、作品に投影されているのではないでしょうか。男にしてみたら、怖い話ですよね。
雄太郎は常に女性が身近にいる男性です。もともとモテるタイプなのでしょうか?
立場上、接待されることも多く、そういう席で親しくなった女性と短い間、深い仲に…。なんてこともあったかもしれないですね。ただ雄太郎は、自分から女性に色目を使うタイプではないと思いますよ。あちこちの女性に声を掛けるのではなく、向こうから寄ってきたら拒みはしないだけ。女性にお金を使うのも貢ぐためでなく、親しくなった女性と良い関係を築くための“ツール”だと思います。
そんな風に女性と付き合うバックボーンはどこにあると思いますか?
心の底では女性に愛されたくて、認められたいのでしょうね。それは多分、母親の久子さんとの関係が影響していると思いますよ。久子さんがああいう人だから、雄太郎は女性をどこか怖いと思っている気がします。亡くなった父親がエリートで、小さい頃から『雄ちゃんも将来、鹿島田家を背負って立つ人に』と久子さんにたたき込まれてきたはずです。母親が厳しかった分、本当は女性に甘えたいし、自分の素顔を見せたいんじゃないのかな…。
尚子に自分をさらけ出すことはできないのでしょうか?尚子との夫婦関係はどんなものだと思っていますか?
結婚した当初は、うまくいっていたと思いますよ。なにぶん尚子さんってホワッとしているから、そこにやすらぎを感じていたはず。ただ、彼女みたいな人って、こっちのコンディションがいいときは平気だけれど、機嫌が悪いときにあの雰囲気で来られると、イライラしちゃう。料理も、『得意じゃないから作れるときに頑張ります』を認めたらいつの間にか作らなくなっていて。雄太郎も『おいおい、どういうことだよ!』と言いたいけれど、それすら言う気がなくなっているのがいまの状態。子供たちとの仲が悪いわけでもなく、奥さんと会話がなくてもそれも気にならず、家に帰れば自分の部屋で寛げればいいんですよ、雄太郎は。そういう結婚生活もどこかリアルに感じています。
そこを未芙由に付け込まれてしまった、と。
怖い話でしょ(笑)。ドラマだからデフォルメされているけれど、誰だって未芙由のように這い上がりたい気持ちが多少なりとあると思うんですよ。そのために未芙由は手を伸ばし、顔を上げ、獲物が落ちてくるのを口を開けて待っているわけで。志田(未来)さんとは今回が初共演だけれど、何のてらいもないストレートなお芝居をぶつけてきてくれるから、すごく面白いですよ。未芙由とのふたりの場面はゾクゾクする楽しみがありますね。
実際、未芙由のような女性がいたらどうしますか?
もしかしたら、これまでにも未芙由のような女性に遭遇していたことがあったのかもしれない。ただ、彼女みたいな人って、自分がそういう人間だと気づかせないから。分かっていたら近づかないですよ(笑)。若い頃、女性に振りまわされたこともないわけじゃないし、いまさら当時のように右往左往するのは嫌だけれど、困ったことに翻弄されていたときのことを思い出すと悪くないんだよね(笑)。そのときは大変だったけれど、いまにしてみればちっぽけなことでくよくよ悩んで、ドキドキして。
貴重な思い出話をありがとうございます(笑)。ところで女性だけでなく、“ウツボカズラ男”っていると思いますか?また、羽場さんご自身のウツボカズラ度は?
この共存社会、経済社会の中、男女問わず誰にでもウツボカズラの要素はあると思います。どうしたって見返りを求めるし、そのために今で言うなら、“忖度”をするものだから。僕にだって、ウツボカズラの要素は50%ぐらいの度合いでありますよ。俳優という仕事は一生もので、常に必要とされなくてはいけません。ニーズに応えるためには、いくつになっても自分を高めていかなくてはダメだし、今回のように若手の志田さんや子供役のふたり(上杉柊平さん、川島鈴遥さん)からも刺激という“栄養”をたくさんもらっています。それってある意味、ウツボカズラに似ているでしょ。