未芙由が現れたことにより、美緒や知也の生活にも大きな変化が起きています。実際、このような状況に置かれたら、冷静ではいられないはず。役同様、現役高校生でもある川島さんと前田さんはどのような気持ちでそれぞれの役やドラマの内容に向き合っているのでしょうか? ふたりのコメントを紹介します。

川島鈴遥さん(鹿島田美緒役)

――美緒を演じての感想を聞かせて下さい。

美緒は難しい役ですけど、実際に演じてみると、私と変わることない“普通の高校一年生の女の子”だと感じています。美緒は芯が強いだけでなく、本当は優しい面もいっぱいあるし、子供でも大人でもない、はざまの中でいろいろな思いを抱いていることが理解できました。私も美緒と同じ年なので、私だからこそ美緒役で表現できるものがあると思っています。

――美緒の置かれた状況はとても大変ですよね。

いまの美緒は反抗期と思春期がいっぺんに来ている状況だと思います。私だっていつも家族に対して素直なわけじゃないし、ときどき親とぶつかることもあります。美緒も家のことでいろいろな問題がありますが、そういう環境にいるからぶっきらぼうになっているのでなく、私は年齢や気持ちの面からああいう態度を取っていると感じました。だから、決して美緒は特別な子ではないという気持ちで演じています。

――美緒の抱えている問題について、どう思いますか?

できれば隠し通したいはずです。美緒がどんな気持ちで過ごしているのかは、到底思いつかなくて、ずいぶんと迷いました。最終的には撮影現場であまり考え込むのはやめて、そのとき湧き上がった感情を大切にワンシーン、ワンシーンに臨んでいます。

――美緒を演じて大変だったことは?

撮影が始まったころは、美緒役がつかめなくて悩んでばかりでした。でも、演じていくうち発見をすることが多くありました。台本を読んだ時点ではハッキリしなかったものが共演者の皆さんと実際演じていると見えてくることもあって、いろいろなことをこの現場で学んでいます。

――作品の感想を聞かせて下さい。

未芙由という渦が、巻き込んだ人々の素顔を明らかにして、それを未芙由が利用していくという、あらすじだけ見れば怖い物語だと思います。でも、未芙由の行動は自分の居場所を作りたい一心から来ているので、意外とこういう感情はリアルなのかも、と感じました。私はこのドラマは怖いというより、どこにあってもおかくしない話だな、と思っています。

――川島さんは現在、高校1年生とのこと。川島さんの周りに“ウツボカズラ女”はいますか? また、美緒は“ウツボカズラ女”だと思いますか?

多分、私の周りに“ウツボカズラ女”はいないです。ただ、未芙由ってすごく孤独で、孤独な心は年齢に関係なくあるものだから、たとえ15歳、16歳でも人によってはウツボカズラ女になってしまうかもしれないです。美緒もいまは、ウツボカズラ女ではないと思いますが、いろいろ問題があって、普通ならこの年齢で経験しなくていいこともいろいろ経験したので…。大人になったら、ウツボカズラ女になってしまうかもしれませんね(笑)。

――今後の目標などを教えて下さい。

これからもまだまだ学ぶべきことばかりですが、『ウツボカズラの女』で得たものを大切に、“演技派女優”として認められるよう頑張ります。これまで美緒のように気が強かったり、あまり笑顔がなかったり、影のある役が多かったので、正反対の明るい役にも挑戦したいです。声が低いせいか大人しく見られがちですが、本当は明るい性格なので(笑)。

前田旺志郎さん(福本知也役)

――知也ってどんな男の子だと思いますか?

このドラマは、登場人物がそれぞれ闇を抱えている中、知也はそれほどの問題もなく、本当にどこにでもいる男子高校生だと思います。もしかしたら、『ウツボカズラの夢』の中で唯一の“普通の人”かもしれないです。

――その普通さゆえか、強烈な個性を持つ人々に翻弄されていますね(笑)。

知也は大変な事態に巻き込まれているにも関わらず、本当に優しいし、約束も破らないし、余計なことも言わないし、僕も『すごく良いヤツ』と思っています。だって、僕やったら、おかんにすぐ言います(笑)。知也は自分が関係ないのに、美緒のことで尚子さんたちに土下座までしてますから。僕は無理ですね。正直言えば知也のことを、アホやなって思うところもあります(笑)。友達を守ることは大切です。『でも、限度があるやろ』と言いたいですね。

――母親の仁美との関係について、どう思いますか?

仁美さんは全然、“おかん感”がなくて、国生(さゆり)さんとのお芝居も知り合いや友達と話しているような感覚で演じています。おかん(仁美)がああいう人なので、知也もきっとしっかりしなきゃという気持ちが多少あると思います。

――作品の感想を教えて下さい。

台本を最初に読んだとき、『うわ、女の人ってコワッ!』と思いました(笑)。出てくる女性みんなのキャラが濃くて、おかんが特にすごかったです。尚子さんとの関係性や、やりとりもうわべだけで、『おかん、尚子さんのこと利用し過ぎやろ!』と思いました。知也を始め、登場する男性はみな、女性にうまい具合に転がされているので、読めば読むほど、女性の強さを実感しました。

――知也と美緒の10代コンビの見どころは?

知也たちに起きている問題や置かれた状況っていうのは、同じ10代の未芙由との対比として見てもらえるとおもしろいと思います。美緒やおかんに振り回される知也については、『情けないヤツやなー』とツッコミを入れてください(笑)。

――前田さんの周りに“ウツボカズラ女”はいますか?

これは僕の偏見かもしれませんけど、どこがどうってわけじゃないんですけど、なんだか友達になりにくい子っているんですよ。それに親しくしてはいるけれど、はたから見ると友達を利用している子もいます。それは男女問わずで、そういう子にはウツボカズラの要素があるんじゃないかって気がします。

――では、前田さんは“ウツボカズラ女”ってどう思いますか?

“ウツボカズラ女”のことを認める気はないですけど、未芙由って見方を変えれば、自分の居場所を作ろうとして必死なだけだと思うんです。あそこまで自分のために力を注げるってある意味すごいと思っています。

――前田さんの中に、ウツボカズラの要素は?

僕自身はどうやろ?コンビニで買い物をするとき、本当は千円札をくずせばいいんですけど、一緒にいた友達に『10円貸して』って頼むことがときどきあります。それって友達を利用しているってことになっちゃいますか?

――いま、どんな気持ちで演技に取り組んでいますか?

ある監督さんから、表情やセリフだけでなく、例えば手の動きに気を配って演じると、より気持ちがリアルに伝わることがある、と言われたことがあります。この現場でも、いろいろ試行錯誤していて、さらに表現力を増したいと思っています。もっと演技の実力をつけて、いつか徹底的に明るい役を演じたいです。そこは関西人なので。ドラマ、映画だけでなく、舞台でも見てくれる人を笑顔にできるような演技をしたいです。