日本を代表する指揮者の佐渡裕さんらが先週、名古屋で開かれた演奏会に出演し、ウクライナへの支援を呼びかけ、平和の祈りを込めた楽曲も披露されました。

 ホールに響き渡る古典派の名曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番。指揮者は世界の楽団で活躍する佐渡裕(さど・ゆたか)さん。

 共演するのは、2021年「ショパン国際ピアノ・コンクール」で2位入賞を果たし、一躍時の人となった若きピアニスト・反田恭平(そりた・きょうへい)さんです。

大切な楽器を隠し身一つで戦火逃れる…ウクライナから避難してきたチェロ奏者の親子 演奏会で遠き母国の調べ

 先週名古屋で、佐渡さんがアドバイザーを務める新日本フィルハーモニー交響楽団の50周年記念のコンサートが開かれました。

佐渡さん:
「世界の反対側ではロシアとウクライナが戦争、考えられないことですけど、少しでも避難されている方たちが自分の夢を失わず未来を見てくれるような、そんな手助けになったらという思い」

 この日、観客に呼びかけたのはウクライナ支援のための募金。コロナ禍でもクラシック音楽の演奏の場が再開し始めている今、佐渡さんは音楽活動を通してウクライナへの支援を続けています。

佐渡さん:
「戦争という信じられないことが起こっていて、ウクライナにあるチャイコフスキー博物館も爆撃で破壊されたそうなんですね。こんな美しい音楽が生まれる場所で、たくさんの人が亡くなったり、避難されている。そういうことを言葉で伝えるよりも、音楽で伝える意味があるかなって思ったんですよね」

 コンサートの最後、佐渡さんがアンコールで選んだ曲は…。

佐渡さん:
「ロシアを代表する作曲家チャイコフスキーが、ウクライナの民謡を聞いて作った素晴らしく美しい弦楽四重奏。一日も早く戦争が終息することを願って、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレをお聴きください」

 ウクライナへのロシアの軍事侵攻に対する非難から、クラシック音楽界では今、ロシアの作曲家チャイコフスキーの楽曲を取りやめる動きもあります。

 郷愁を誘う優しく美しい旋律は、ウクライナとロシアが共存していたからこそ生まれたもの。佐渡さんはこの曲に、対立を超えた平和の祈りを込めました。

女性客:
「最後のチャイコフスキーが佐渡さんの思いがとっても伝わってきて、涙が出てきそうなぐらい感動しました」

男性客:
「僕はチャイコフスキーがとっても好き。チャイコフスキーは最近やめとけよみたいな風潮があったので。佐渡さんが両方絡んだのを選曲してくれたのは、すごい嬉しかった」

佐渡さん:
「(これまでのツアーで)200万円近い金額が集まりました。こうした行動を取ることで、今本当に起きている戦争というものに、助けようと共感してくれる方が1人でも増えたらなという思いです」

 佐渡さんの音楽が、平和の祈りの輪を広げています。