【インタビュー】Vol.4 小川絹江役-藤田弓子さん

7月6日 更新

――絹江さんが、まさか恭子さんのお母さんだとは!? 5週目を見てびっくりしました。
 ですよね(笑) 血が繋がってなくても優しい人、面倒見のいい人はいるし、むしろ身内よりも近くにいる他人がすごく優しいことってあるじゃないですか。そういう感じだと思っていたら、実は…(笑) 私は最初から知っていましたけどね。

――それが明らかになる前から、その辺りを意識して演じてらっしゃいましたか?
 いいえ。逆に、人から見たら他人に見える方がいいと思いました。身内だと心配したり優しくしたりが当然になっちゃうから。絹江は自分の娘・恭子さんが苦労しているんじゃないかと思って見守っている、律くんを通して見守っているんですね。律くんがいい子に育ち、優しく人のことを思いやっている姿を見て、恭子さんも幸せなんだなと感じていたんだと思いますね。どこか贖罪みたいな感情を持ちつつ。
 夢にこだわりすぎると目の前の大事なものを見失うこともあると思うんです。若い時の夢に対する思いは矢も盾もたまらないものがあって、目の前に幸せがあることに気が付かない。すごく大事なものを捨ててしまうこともあるんですよね。恋人や友達ともったいない別れ方をしてしまったとか、ありませんか? 嫌いになったわけじゃないけど、その人を自分の人生の中で排除してしまったりして。年を重ねてみると、「あの人とちゃんと付き合っておけばよかった」と思うことがあるなぁと。
 絹江は彼女の考えがあって家族と別れたわけですが、それが原動力になる人もいるじゃないですか。捨てたものが大きいだけに頑張ろうと。女優さんとか、そういう人いますよね。子どもを産みたいと思う20代前半から30代後半が、ちょうど女優として花開く時期で、あの時に産んでおけば…と思う人、すごく多いと思う。だけど、そこはどっちかなんですよね。私も30代は会いたい人に会えたり、やりたい仕事ができたりしていた時期で。そんな時に「何もかも、両方を手に入れようとしなくていいんじゃない?」と言われたことがありました。普通に結婚して子供を育てた友達なんですけど「私はこれが幸せだと思うけど、私には芝居はできない。あなたはそっちの道で幸せになれるんだから」って。いろんな人がいていい。幸せの形はいろいろありますからね。
――絹江さんのエピソードが加わり、三代に渡っての深い親子の物語となりましたね。
 最近のドラマは、若い人が主役だから、若い人の目線だけの話が多いと思うんです。でも、今回の昼ドラは、実はお母さんにも若い頃があって、いろんな経験をして、今、お母さんになっています、というところまで描かれているんですね。お母さんも、おばあちゃんも、みんなそれぞれの人生を生きて、年を重ねていくんだということがよく分かる。そして、みんなが本当に大変なことから逃げないで真正面から向かっている。そこがいいと思いますね。今、律くんがこれだけのいろんな思いをしながら青春時代を送っていると、どんなステキな男、ステキな人間になるだろうと思うじゃないですか。それが面白いですよね。

――律くん役の高杉真宙さんの印象は?
 たいしたもんだと思いますね。本を読む力がすごくある人で、主役だと出番も多いし、忙しいし、見失いがちなんですが、作品の中での自分の立ち位置がものすごく理解できていますね。彼と話をした時に「ずっと出ていると、1話の中でどこにポイントを持ってくるか分からなくなるでしょ。だから、その一番のポイントを、自分で見つけておいてね」と言ったんですね。そうしたら、高杉さんはちゃんとそれを理解していて、話ごとの大事なところを分かっていた。彼はセリフもたくさんあるし、努力していると思うけど、余裕があるように見えるんです。しゃべってると普通の子みたいなんだけど、テレビの画面に映るとすごく輝いていて。これはたいしたもんですよ。スター性がありますよ。それは、すごく脚本が読めてる、理解できているということですね。
――恭子さん役の富田靖子さんの印象は?
 靖子ちゃんは、デビュー作の映画『アイコ十六歳』で、私が彼女のお母さん役だったんですよ。この前会った時、「アイコ◯十六歳になりました」って言ってましたけど(笑) その後にも映画『さびしんぼう』で、私の役の若い頃を靖子ちゃんがやって、その頃からピュアな感じは変わらないですよ。ずっと擦れないし、かわいいし、真摯で一途で日本の女性のいい部分を持ち続けている。珍しい感じの女優さんだと思っています。

――最後に、視聴者の方にメッセージを。
 私が子どもの頃は、母と2人きりの食卓でしたが、すごく豊かな食卓でした。必ず旬のものがあったし、何より会話がたくさんありました。そうすると、母が働いてくれたから食べられる、母が生んでくれたから食べられる、ありがたいということがよく分かるんですね。そして同じものを食べていると、この人は絶対に私の味方だって分かるんです。今は、主人と2人ですが、一緒にご飯を食べる時間が大好き。“同じ釜の飯を食う”と心が通じあいますよね。だから、まずは家族や大事な人と、おいしいものを一緒に食べてください。

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