岐阜県白川町では2つの川の合流地点で水の逆流=「バックウォーター現象」が発生し、住宅およそ30棟が浸水しました。

専門家が調査したところ、実は合流地点とは別の場所でもバックウォーター現象が起きていたことがわかりました。

 7月8日、浸水被害のあった白川町。茶色に濁った本流と濁りの少ない支流。そのコントラストがはっきりとわかります。氾濫の原因はバックウオーター現象です。

 バックウォーター現象は川の流れが逆流したりせき止められる現象で、今回氾濫したのは本流の飛騨川とそこに流れ込む支流の白川が合流する地点のすぐそばです。

大雨により飛騨川が増水し水位が上昇したため、そこに流れこむはずだった白川の水が停滞、行き場所をなくした水がどんどんたまり水位が上昇し、氾濫しました。

このバックウオーター現象は、2018年の西日本豪雨で大きな被害を出した岡山県倉敷市の真備地区や、5年前の関東東北豪雨での鬼怒川の決壊などで大きな水害の要因になってきました。

 ところが、飛騨川のバックウオーター現象には別の特徴がありました。

田代特任教授:
「飛騨川そのもののバックウオーターと、飛騨川と白川の合流による白川側から見たバックウオーターと、2つの河川でのバックウオーターが(飛騨川の狭窄部をきっかけに)起こったと考えられます」

河川工学が専門の名古屋大学・田代特任教授は、発生翌日に現地を視察し、合流地点の下流にある飛騨川の地形に注目しました。

田代特任教授:
「このあたりは、飛水峡と呼ばれる渓谷区間が、かなり長く続いている。(大雨の後など)非常にたくさんの水が一度に押し寄せる状況になると、水位が高まった時に流れられる場所が、周辺が開けた環境の時に比べると大分少なくなる。水が流れにくくなって、水位が上昇してしまう。いわゆるバックウオーターが起きる」

 今回、2つの川の合流地点からさらに下流の飛騨川の様子。両岸に山や岸が迫る地形が続きます。

この辺り一帯は「飛水峡」と呼ばれる飛騨川屈指の景勝地、上流部より川幅が狭くなった地形が10キロ以上にわたって続いています。

田代特任教授の分析では川の流量が上昇し、まずはこの飛水峡のすぐ上流でバックウォーター現象が発生。合流地点の水位が上昇したため白川の水が飛騨川に流れず、そこでまたバックウォーター現象が起きることに。

つまり2つのバックウォーター現象により、合流地点付近の白川から水があふれたと見られています。

 こうした現象はデータにも現れていました。飛騨川の水の勢いで横を走る国道がえぐり取られるなどの被害が出た下呂市の上呂地区。

2つの地点の水位の変化を比較すると、上流にある上呂地区に比べ白川町の水位の上昇幅が大きくなっているのがわかります。

田代特任教授もデータを見て、「この高まりはバックウオーター、飛水峡によるバックウオーターの影響出ていると思われる」と説明しています。

 過去の水害でもたびたび起きていたバックウォーター現象。田代特任教授は、今後も雨の降り方や川の水位次第で再び起きる可能性はあると警戒を呼びかけています。