愛知県の大村知事へのリコール運動を巡る署名偽造事件について、新たな証言を入手しました。署名集めを行った男性がカメラの前で告白したのは、「愛知県でも行われた」という署名偽造の実態でした。

署名集めの受任者:
「『愛知県産』に関しては、佐賀で作成されたものではなく、愛知県で作成されたもの」

「愛知県産の偽造署名が存在する」こう証言したのは、実際に署名集めを行っていた「受任者」の男性です。

署名集めの受任者:
「上手に書いたり、下手くそに書いたりとか。指に関しては、(両手10本で)1個1個こうやってやるとか」

 去年11月ごろに偽造に関わったと、カメラの前で告白しました。

河村名古屋市長(2020年10月):
「大村知事リコール署名、ちゃんとやってってちょーよ」

 高須クリニックの高須克弥院長が主導し、河村市長も支援したリコール運動。県の選挙管理委員会の調査で、提出されたおよそ43万5000人分の署名のうち、8割以上に「無効」の疑いがあるとされました。

 そして、これまでに無効となった署名の一部は、佐賀県でアルバイトが偽造したという疑惑が浮上しています。

署名簿書き写しのアルバイトをした男性:
「名簿見ながら書き写すようにと指示がありましたね。なんで佐賀でしたのかというのが疑問に思いますね」

 関係者への取材から見えてきた署名偽造の構図です。

 去年、田中孝博事務局長らで構成されるリコール団体の関係者が、名古屋の広告関連会社に「代筆のため人を集めて欲しい」と現金数百万円で発注。その後、下請け会社から人材紹介会社を通じて「署名偽造」のアルバイトが募集され、佐賀県で大規模な書き写し作業が行われたとみられています。

 しかし、今回取材に応じた男性は、佐賀での偽造だけでなく「愛知県で偽造されたものがある」と証言します。

署名集めの受任者:
「愛知県産に関しては、佐賀で作成されたものではなく、愛知県で作成されたもの。修正手直し、拇印捺印をした」

 男性によると、自治体ごとに集めなければならない署名用紙に複数の自治体の署名が混ざっていたため、白紙の署名用紙に名前を書き写したうえで、自ら指印を押したといいます。

 そして、この作業は去年11月はじめごろ、名古屋市東区のリコール団体事務所で行われたといいます。

署名集めの受任者:
「試行錯誤しながら臨機応変に。筆の進め具合とか、拇印の仕方とか、違う指を使うとか、そういう作業をしました。上手に書いたり下手くそに書いたりとか、特徴を丸文字にしたりとか、そういう感じでしました。指に関しては、(両手10本で)1個1個こうやってやるとか」

Q.何人分ぐらいやった?

署名集めの受任者:
「数えてはいないけど、(署名用紙)100枚くらいはやったと思いますよ」

 男性が偽造した分だけでも、署名用紙およそ100枚、数百人分にのぼるといいます。

署名集めの受任者:
「本気で調べてもらったらバレバレなんだけど。パッと見分からん感じで、上手にやっとるんですよ」

「佐賀県産」の偽造署名に加え「愛知県産」まで…。偽造を指示した人物について、男性は…。

Q.誰の指示でやった?

署名集めの受任者:
「それは田中ですよ。私以外にも、すでにそういう作業をしていた名古屋事務所の方々がいて、その方々も『田中の指示のもと書いている』と」

 男性から名指しで指摘された田中事務局長は、取材に対し…。

田中事務局長:
「全くしてないですよ。とにかく彼に直接指示なんてしてない。(Q.何をしていた?)署名の仕分けですよ。事務所の方に、街頭で集めたもの、基本的な署名というのは特定の場所に置いてあったから、そこで仕分けして。その部分はある特定の人たちに手伝ってもらってやったわけだよね」

 いまだに全貌が見えない署名偽造事件。

 愛知県警は、リコール団体が使っていた事務所を家宅捜索するなど、地方自治法違反の疑いで捜査を進めています。