感染拡大を食い止めるためワクチン接種が進んでいますが、今「針を刺さない」「痛くない」ワクチンの開発が三重県で行われています。

 オンライン形式で研究室の様子を紹介してくれるのは、三重大学大学院の野阪哲哉教授。

野阪教授:
「これがデルタ株に対しますワクチンの種となります」

 冷凍庫から取り出した、開発中だという新型コロナワクチン。ある特徴があります。

野阪教授:
「これは注射するワクチンではなくて、鼻からスプレーで入れる画期的なワクチンです」

 三重大学が菰野町のベンチャー企業「バイオコモ」と共同で開発中の、この「鼻ワクチン」。鼻にシュッとスプレーして投与するタイプで、「次世代型ワクチン」として今開発に注目が集まっています。

 現在接種が進められているコロナワクチンは、筋肉注射をして体内に抗体を作り、それを全身に行き渡らせて発症や重症化を防ぎます。

 一方、野阪教授らが開発を進める「鼻ワクチン」では、スプレーすると鼻や喉などの粘膜に抗体を多く形成。ウイルスを「入口」でブロックし、感染を防ぐ可能性が高まるといいます。

野阪教授:
「痛みは全くないです。動物実験だと副反応は全然みられていないです」

 野阪教授によると、この鼻ワクチンを接種した上で新型コロナウイルスを投与したハムスターの肺を調べたところ、ウイルスの量はなんと『ゼロ』。注射でのワクチンに比べ投与量が少ないため、副反応が起きるリスクも抑えられるといいます。

 さらに、注射針を使わないことで医療従事者への負担が大幅に減り、注射時の緊張やストレスから、失神などの「血管迷走神経反射」を引き起こす可能性も低いといわれています。

野阪教授:
「開発途上国などで使うにしても非常に利便性が高いのではないかと。保存も輸送も楽ということで、世界中に(ワクチンを)送って同時に鼻から投与すれば、2週間後には少なくとも数か月は一切感染しない状況を作り出すことができますので」

 保存温度4度で半年から1年間保管も可能。実用化に向け早期の治験開始を目指していますが、そこには大きなハードルがあると話します。

野阪教授:
「非常に純度の高い状態につくらないといけなくて。研究予算の関係で、その前の(動物)実験が終わった段階で少し止まっていますので。スタート地点には立っているので、あとは予算だけ」

 現在は県や国からも支援を受けていますが、さらに規模の大きな予算獲得が急務だというワクチン開発。

 三重大学と「バイオコモ」では今後、1年以内の治験開始と2年後の実用化を目指すとしています。