日本でのオミクロン株が勢いを増していますが、海外では新たなウイルスの拡大が始まっています。「ステルスオミクロン」とはどんなウイルスなのか、専門医に聞きました。

 感染症専門医の愛知県がんセンター病院・伊東直哉医師にインタビューの冒頭、病院の近況を聞きました。

伊東医師:
「今、感染したり濃厚接触者になって出勤できない人というのは、看護師さんだけで50人以上います。子供が濃厚接触者になったり感染したりで、職員が出てこられないという事例は非常に多い。うちの病院だけの話ではなくて、多分全国的な話です」

 28日に愛知県で確認された新規感染者は、またも過去最多の5267人。オミクロン株の急拡大が続くなか、新たな不安要素があります。

伊東医師:
「オミクロン株の亜種『BA.2』です。ヨーロッパで『ステルスオミクロン』と呼ばれている。SGTF(海外で主流の検査)だと検出できない、これがステルスということですね」

「ステルス戦闘機」などで耳にする、「発見されない」という意味の「ステルス」。従来型のオミクロン株から派生した亜種「BA.2」は、特に海外で主流のPCR検査では検出されにくく「見つからない」=「ステルス」との異名がついたといいます。

伊東医師:
「国外、特にデンマークに関していうと、『BA.2』系統が占める割合が急激に増加している。日本においては、検疫でインドやフィリピンに渡航歴のある方から『BA.2』系統が検出されている」

 国立感染症研究所の集計では、国内で少なくとも27例が見つかったといいます。各地で広がり始めた「ステルスオミクロン」。気になるのはウイルスの「力」です。

 京都大学の西浦博教授らの分析では、感染力は現在主流の「オミクロン株」よりも18%高いとしています。

伊東医師:
「オミクロン株自体がもともと感染力が高いので、それよりも恐らくちょっと感染力は高いのかなと。どんどん置き換わっていくという現象が、日本だけでなくて世界で起きている」

 伊東医師によると、3回目接種率が60%という高い水準の中、「ステルスオミクロン」への置き換わりが進むデンマーク。ワクチンの効果は期待できるのでしょうか?

伊東医師:
「オミクロン株自体の特性で(感染予防効果が)落ちているということが影響しているのかなとは思います。特別、重症患者さんが増えているということはないので。ベースにワクチンをしっかり打っているというのも影響していると思います」

 伊東医師によると、データが少ないため「ステルスオミクロン」が第6波の更なる拡大に繋がるかは現時点では不明。一方で、今の爆発的な感染状況はウイルスの変異を引き起こしやすく、改めて基本的な感染対策を呼びかけます。

伊東医師:
「ステルスオミクロンだったとしても、今まで続けてきた感染対策は無効になるわけではない。ゼロリスクというのはなかなか難しいかと思うんですけれども、こういった基本的な感染対策を積み重ねることで、感染してしまう確率を下げることはできる」