愛知県豊田市で起きた水漏れの問題では依然、農業用水の供給が止まったままです。東海農政局は「5月中」を目指すと再開時期に言及しました。

 復旧が近づいているようにも感じられますが、農家にとっては焦りや不安の日々が続いています。

 仮設ポンプの設置が進む大規模漏水の現場。発生からの7日間で工業用水の供給は一部再開した一方、農業用水は現在も停止した状態が続いています。

 その農業用水について、東海農政局は22日、「近日中に試験的な供給を始めたうえで、今月中の全面再開を目指す方針」を表明。しかし、農家にとってはその「近日中」をも待っていられない状況です。

 水の出ないバルブをひねる、豊田市の農家・野田美香子さん(50)。曾祖父の代から続く田んぼで稲を育ててきましたが…。

野田さん:
「15日に田植えして、16日には多分苗のこの辺りくらいまでは(水)あったと思うんですよ」

 漏水に加え、連日の強い日差し…。田植えを迎えたはずの田んぼはもはや「水田」とは呼べず、ひび割れ干からびてしまっています。

野田さん:
「諦めしかないですね…」

 一方、野田さんの別の田んぼに行ってみると、こちらではなぜかバルブから水。21日から少しずつ水が出始めたといいます。

 野田さんによると、近所の人の田んぼでも土地の高さや場所によっては、同じような現象が起きています。周辺の川の水を取り込む過程で、パイプラインの中のわずかな水が一部では出てきているとみられています。

 東海農政局では、パイプライン一杯に水を満たした上で供給を再開したいとして、今は水の使用を控えるよう呼びかけていますが、農家にとってはまさに「命の水」。それも決して十分な量ではありません。

野田さん:
「近日中っていつ?とか。(水を)今止めちゃって、またなくなったらどうしようって思います。これをまるっきり止めることは怖くてできない」

 水不足に悩む農家の助けになろうと、安城市の浄水場が水道水を、無償提供を始めました。23日から市内の農家を対象に3か所の浄水場で給水を行っていて、午後3時までで合わせて延べ21件・1万2980リットルが供給されています。

提供を受けた農家の男性:
「今日たまたま農協に行ったら、浄水場で水を配っているということを聞いたので、じゃあもらいに行くかと。これはありがたい」

 水道水を水やりに使う場合、塩素を抜く必要はあるものの、やはり大事な命の水。安城市は当面この取り組みは続けていくということです。

 しかし、これらはいずれも応急処置。JAあいち中央は23日、東海農政局や愛知県などに対し、緊急の要請書を提出。詳細な復旧計画の提示や農家への補償などを求めています。