コロナ禍の中で外出が難しい高齢者施設の利用者に、気兼ねなく買い物を楽しんでもらいたい…。三重県にある衣料品店の粋な取り組みを取材しました。

 年配のお客さんで賑わう衣料品店。そのワケは…。

店員:
「いきいきキャンペーンといたしまして、2時から3時の間、お店を貸し切り状態にさせていただきます」

 1時間お店を丸ごと貸し切り。お客さんは高齢者施設の利用者です。

女性:
「施設に入っとるもんで(いつもは)来られません。自分で(服を)選べるというのは良いです」

別の女性:
「本当に(買い物は)久しぶり。こんなことまたやってほしいな」

 思う存分、買い物を楽しみます。

綿清商店の社長:
「コロナ禍になってからというのは、施設に入ってみえる方ご本人のお買い物の姿っていうのは本当になくなってしまった。手に取るワクワク感というのは、絶対どなたにも味わっていただきたい」

 新型コロナで外出が難しくなった高齢者。店を貸し切りにすれば、心配なく買い物を楽しんでもらえるはずと考え、松阪市の高齢者施設と協力して今回の企画が実現しました。

 三重県内に8店舗を展開する衣料品店「わたせい」の松阪店。この日、貸し切りが始まる30分前、スタッフが準備を進めていました。

マネージャー:
「車いすの方もみえると思います。邪魔なものとかは一旦(倉庫に)引きたいなと。しっかりとみなさんをお迎えできるように頑張りましょう」

 この日はスタッフの数をいつもの3人程度から12人に増員。車いすが通りやすいように通路を広げたり、年配の人向けの服を見やすい場所に配置したりするなど、まだ通常営業中の店内をスタッフ総出で手際よく準備します。

 そして…。

マネージャー:
「この抗原検査キットで検査をしたいと思っています」

 スタッフ全員の陰性を確認。「貸し切り営業」に切り替えます。

 施設の利用者と職員など、30人ほどが来店しました。

90歳女性:
「実際に見て買うのは一番よろしいな。たくさん欲しい、アハハ」

 生地の質感を手で確かめながら品定めをしていました。

90歳女性:
「これお買い上げしますわ。これな、これからの夏らしい涼しそうな色とかわいい花、私に合っているかな」

 普段、利用者に代わって買い物に来る職員にとっても…。

特別養護老人ホーム「いこいの家」の管理者:
「(買い物に)自分が行けないからって職員に色々頼む人がいて、その人のために買いに行ったけど『これは違う』と。ご本人が思っていたことと聞き取ったものとの中で差がある」

 手間取ると後ろで待っている人が気になってしまうレジも、貸し切りのため気兼ねする必要がありません。

綿清商店の社長:
「皆さんが笑ってみえたのもすごく嬉しかったし、私たちができることってわずかですけど、それでもこういうことが一歩一歩広がっていったらなと思っています」

90歳女性:
「短時間でしたけど楽しゅうございました」