急激に進む円安で、食料品からスマートフォンに至るまで、海外から輸入する製品は軒並み値上がりし生活を直撃していますが、逆に輸出には追い風となっています。円安に商機を見出そうとする動きを取材しました。

 日米の金利政策の違いから急速に進んだ円安。13日も1ドル=142円台で推移していて、1998年以来24年ぶりの“超円安”となっています。そんな中、円安の風に乗る動きが…。

DHLジャパンのトニー・カーン社長:
「このたび9月6日より週12便を増便しました」

 13日、中部国際空港で開かれた空輸物流大手DHLの会見。コロナが落ち着き、経済活動が再開したことや、円安を背景にした日本からの輸出増加が見込まれることから9月6日、中部国際空港と北米を結ぶ飛行機を増便しました。

 物流業界では、円安が更なる収益アップにつながることに期待を寄せています。

DHLジャパンのトニー・カーン社長:
「航空機・自動車・機械産業など、中部経済界からの輸送需要に応える体制を強化していきます」

 円安を追い風に…。海外向けの販売を大きく伸ばしているのが、三重県の真珠です。

 三重県志摩市の西甚パール。英虞湾などで養殖された真珠を、ネックレスなどに加工して販売しています。

 海外でも人気の高い、日本の真珠を使った宝飾品。輸出も30年ほど前から手掛けています。

 一時は新型コロナの影響で海外からのバイヤーが日本に来られず、輸出が落ち込んだ時期もありましたが…。

西甚パールの社長:
「経済的に伸びてきている中国から、かなりの量の需要があります。(円安は)我々にとって追い風が吹いてるような状況です。利益が出ている。輸出がメインになります」

 旺盛な中国市場。ドル建てで取引されるため円安が追い風となり、2022年は創業以来初めて、国内販売を輸出が上回る逆転現象が起きました。

 売上に占める輸出の割合は7割を超えるといいます。会社ではこの機を逃すまいと、海外から来られないバイヤーのためにSNSのアプリを使った取引も始め、売上はコロナ前の1.2倍になりました。

西甚パールの社長:
「それは今の方がいいいですわ、断然に。需要の強さが全然違いますんでね」

 円安が海外での需要に貢献しているのは、真珠だけはありません。

 JR岐阜駅前にある酒蔵「日本泉酒造」。地下100メートルから汲み上げる長良川の伏流水を使った日本酒を製造・販売しています。

 アメリカをはじめ、海外では「ライスワイン」として定着しつつある日本酒。

日本泉酒造の常務:
「今までは海外に販売というと、やはり一度は現地に行って直接商談してというのが頭にあったんですけれども、コロナ禍でオンライン商談が当たり前になりまして」

 酒蔵ではおよそ5年前から輸出に向けた準備をはじめ、今では北米や中国、それにシンガポールにも販路を広げています。

日本泉酒造の常務:
「まだまだこれからというところも弊社としてありますけども、少しずつですけれど堅実に伸びていっている実感はございます。円安の影響もあると思います。新しい商談のお話が増えたり」

 日本泉酒造の2021年度の売上はおよそ1億円。現在輸出は10%あまりですが、円安を追い風に倍に増やしたい考えです。

日本泉酒造の常務:
「コロナ以前のことプラス、輸出やインバウンド需要の開拓など、以前より良くなるんじゃないかなと期待しております」

 海外から見れば日本の商品が安くなる円安。販路を拡大し、日本の特産品を広く知ってもらうチャンスになっているのかもしれません。