砂糖を一切使わない独自の製法で作られたドライフルーツが人気を呼んでいます。甘みと酸味のバランスが絶妙なパイナップルや、ワインのようなシャインマスカットを使ったものなど、体にも優しくておいしいと評判のドライフルーツは女性を中心に注目を集めています。

■まるでワインを食べているよう…国内外のフルーツで作った女性に人気のドライフルーツ

 ジェイアール名古屋タカシマヤのドライフルーツを製造・販売する「多々楽達屋」。およそ80種類のドライフルーツが並びます。

女性客:
「ちょっとお値段はするんですけど、砂糖不使用で自然な感じが気に入っています」

【画像20枚で見る】砂糖を使わない独自製法で作られた甘みと酸味のバランスが絶妙なドライフルーツ

「ヨーグルト用ミックス」(1401円)など、砂糖を一切使わず独自の製法で作られたドライフルーツは、体にも優しく美味しいと人気です。このお店はオープンからわずか7年で、百貨店を中心に全国で13店舗を展開しています。

 ジェイアール名古屋タカシマヤの担当者は、誘致した理由を「朝食ブームが起こった7年前にパンに合う素材を探していて、そのこだわりの素材や丁寧なものづくりにひかれて声をかけた」と話します。

 一番人気は、南アフリカ産の「スムースカイエンパイナップル」(1401円)。封を開けるといい香りがして、甘みと酸味のバランスが絶妙です。

 少し贅沢なものもあります。長野県産の「シャインマスカット」(2421円)は60時間以上かけて乾燥させて美味しさをそのまま凝縮した、まるでワインを食べているような味わいです。

■アイデア思いついたらすぐ取り掛かれるよう…工場内に住む創業者の男性

 ドライフルーツを製造・販売する「多々楽達屋」が拠点を構えるのは、美濃焼の産地として知られる岐阜県土岐市の駄知町です。陶器の工場が集まる一角に本社工場がありました。

 もとは陶器の倉庫だった場所に、外観からは想像できないオシャレな直売所が。

多々楽達屋代表の安藤誠さん:
「(ドライフルーツと同様)建物も中身が重要。外装は一切かまわず、中から防水処理をしながら装飾までこだわって作った」

「多々楽達屋」を興した安藤誠さん(50)は、創業当時から仕事のアイデアを思いついた時にすぐに取り掛かれるよう、工場の中に住んでいます。

 プライベート空間から見下ろせるのは、清潔な加工場。製造から出荷まで任されているのは9人の女性で、安藤さんが絶対の信頼を寄せる職人です。

■ドライフルーツは鮮度が命…社長自ら世界各国に出向きフルーツを仕入れ

 この日作っていたのは、アメリカから輸入したネーブルオレンジのドライフルーツ。仕入れ先の選定は安藤さん自身が担当しています。

 コロナ前の2019年まではインドやガーナ、南アフリカなどに自ら足を運びました。

安藤さん:
「生食ですとみずみずしいものが人気あるんですけど、ドライフルーツの場合、水が少なめで糖度の高いものが基準」 

「ドライフルーツは鮮度が命」と話す安藤さん。鮮度のよい状態で味や栄養分を閉じ込めるために、届いたらすぐに加工を始めます。オレンジの場合、乾燥した時にベストな状態になるという幅4ミリにカット。これらの作業は早くて効率がよい機械ではなく、全て手作業で行います。

安藤さん:
「(機械だと)果物の悪いところを見落としてしまう。わざわざ自動化までして雇用を減らすつもりはなかった」

 カットするとフードドライヤーへ。50度の温度で40時間。タンパク質が変性しないよう、できるだけ低い温度で乾燥させます。

安藤さん:
「栄養価、香りが非常に残るので低い温度で我慢して待つこと。これがおいしく作る秘訣」

 時間をかけてじっくり。長いものでは70時間かけるものもあります。扉が開くのは2日後です。

■従業員のために何かできないか…社長自ら味噌汁を振舞う

 お昼前、安藤さんはキッチンで豆腐を切り分けていました。お弁当を持ってくる従業員のために何かできないかと考え、思いついたのが味噌汁をふるまうこと。従業員に安藤社長について聞きました。

女性従業員:
「変わってますよね」

男性従業員:
「思い立ったらすぐ行動って。試作に関しても、こうした方がいいんじゃないかと思ったらすぐに作業にとりかかる」

 進んで新しいことに取り組み決行することが会社の行動指針だといいます。

■客「ドライフルーツだけちょうだい」…きっかけは美濃焼とドライフルーツのセット販売

 7年前に創業した「多々楽達屋」ですが、意外なことをきっかけにスタートしました。今ではこだわりのドライフルーツを手掛ける安藤さんですが、もとは美濃焼を作る会社の跡継ぎでした。

 しかし、美濃焼は安い海外産に押され既に下り坂…。そこで安藤さんは食べ物と組み合わせて販売することを思いつきました。

安藤さん:
「直射日光の当たるテントでも大丈夫なように、ドライフルーツがいいかなと。そうすると、お客さまが取って『おにいちゃん、これだけちょうだい』って言われるんですよ」

 13年前、陶器を売るために始めたのが、市販のドライフルーツとのセット販売。聞こえてきたのは、砂糖を使っていないドライフルーツを求める客の声でした。そこでドライフルーツを仲卸で探した安藤さんでしたが、見つからないため自らで作ろうと考えました。

 試行錯誤の末、砂糖を使わない製法を確立。その後、「多々楽達屋」を設立すると同時に、業務内容をドライフルーツ1本に絞りました。それから7年、今では全国の百貨店から出店依頼されるほどの人気店となったのです。

安藤さん:
「百貨店は味をすごく重視してくるので、美味しいか安全かどうか。こだわりをずっと曲げないでやっていかないとダメだと」

■地元に雇用をつくり貢献できる会社に…世界に売っていけるようなブランドを目指す

 40時間、乾燥させた「ネーブルオレンジ」(1401円)ができあがりました。砂糖を一切使わずに、厳選した果物本来の味と香りを生かしたドライフルーツ。安藤さんのこだわりがたくさん詰まった逸品です。

 ドライフルーツと出会ったことで、安藤さんの人生は大きく変わりました。

「全国に世界に売っていけるようなブランドとして地元の土岐市に雇用を作り、納税し、貢献できる会社になりたい」。安藤さんは地域のために奮闘しています。