愛知県豊橋市で9月、区役所の職員を騙る男から「医療費の還付金がたまっています」などとウソの電話があり、60代の男性が現金63万円をだまし取られる事件がありました。

 男は還付金は「2万円程度」と話していましたが、なぜ63万円も振り込んでしまったのか…。千葉県警のHPで公開されている特殊詐欺の実際の電話の音声をもとに、具体的な手口をまとめました。

 愛知県警によりますと、9月14日、豊橋市に住む60代の男性の自宅に、区役所職員を名乗る男から「医療費の還付金が2万3000円くらいたまっている」などと電話があり、その後、金融機関の職員を名乗る男から「近くのATMへ行き、還付金を受け取る手続きをしてください」と連絡があったということです。

 男性は電話の指示に従って、商業施設内のATMで現金およそ63万円を振り込みましたが、現金を振り込んだ直後、金融機関の職員を名乗る男から「騙されてバカめ」などと電話があり、男性は騙し取られたことに気付いて、警察に被害届を提出しました。

 豊橋市では、今年に入ってから詐欺被害が17件あり、被害総額は3400万円にのぼっています。

 およそ2万円の還付金の話で、なぜ60万円あまりを振り込まされてしまったのか…。この事件とは別の、これまで起きた特殊詐欺の電話のやりとりから、その巧妙な手口を見ていきます。

 千葉県警のHPには「電話de詐欺」というページがあり、特殊詐欺の実際の電話の音声を公開しています。その中で、今回のような「還付金の特殊詐欺」にあたるものがありました。

 このケースでも、銀行員を名乗る者から「還付金の手続き」と称して、指定のATMまで被害者の男性を誘導する電話がありました。男性がATMに到着してからの、実際の電話のやりとりをまとめました。

犯人:「お電話ありがとうございます。○○銀行本店、営業部になります」

被害者:「今着いたんですけども」

犯人:「今、機械の前にいらっしゃいますでしょうか?」

被害者:「はい」

犯人:「そうしましたらですね、当行のカードを入れてください」

被害者:「はい(カードを入れる)」

 ATMを被害者に操作させ、暗証番号を入力させた後…。

犯人:「ご本人様確認をとりますので『残高照会』を押してください。そうしましたらですね、残高の表示が出てきたと思いますので、こちらの画面と照らし合わせますので、残高おいくらと表示がありますでしょうか」

被害者:「○○○○円です」

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「本人確認のため」と嘘をつき残高照会をさせ、いくら振り込めるか確認します。さらに…。

犯人:「こちらの方からお振り込み作業をさせていただきますので、『お振り込み』というボタンございますよね、押してください」

 銀行側からの振り込み作業と称して、被害者から犯人に振り込みをさせるよう誘導します。すると…。

犯人:「そうしましたら、暗証番号のご入力の画面になりましたかね」

被害者:「うーん…、振り込み金額と出ています」

犯人:「そうしましたら、そちらの方のお客様番号のご入力になります。998…」

被害者:「(復唱して)998…」

犯人:「はい、525」

被害者:「(復唱して)525」

犯人:「はい、確認を押してください」

被害者:「確認…、はい」

 実際は振込金額の入力画面ですが、「お客様番号」と称して、998525と入力させました。これが、限度額の100万円に近い99万8525円の入力になっていました。

 また、入力番号を復唱させることで気をそらしていました。こうした手口で、多額のお金をだまし取ろうとしていたのです。

 今回の男性は、ATMに行く前に怪しいと気づき、騙されたフリをして電話の様子を録音し警察に提供したということで、現金はだまし取られなかったということです。

 千葉県警によりますと、「銀行からの電話」ということを信じ込ませることで、被害者も気づきにくく騙されてしまうケースがあるといいます。

 愛知県警は、「ATMの操作で還付金は受け取れない」「還付金を受け取る手続きを携帯電話に指示することはない」と、注意を呼びかけています。