愛知県豊田市に、2020年12月に地元の農家の若者たちが立ち上げた「産直市場」がオープンしました。この市場が扱うのは、野菜だけではありません。本マグロや蟹などの新鮮な魚介類に、お米で作ったジェラートなど、地元の人たちに是非食べてほしい商品を集め人気となっています。

■地元だけでなく全国の美味しいモノ集結…農業の若者たちが立ち上げた“直売所”

 愛知県豊田市に、2020年12月に産直市場「おいでん市場」がオープンしました。

女性客:
「地元の農家さんの野菜とか、地元の牛肉とか、豊田のものが食べられる事が一番ですかね」

別の女性客:
「大玉の黄色いトマト、珍しい品種の割にはお値打ちですよね」

【画像20枚で見る】海はないけど“鮮魚が名物”…豊田市にできた『産直市場』名店信頼の目利きの店

 この産直市場は、豊田市とその周辺で農業を営む若者たちのグループ、「夢農人(ゆめのーと)とよた」が作った“農家が営む直売所”です。

このグループの会長であり、「おいでん市場」の社長を務める大橋鋭誌さんも、トマトやお米を作る農家の5代目です。

大橋さんのおすすめは、トマトで1番人気の黄色いトマト「桃太郎ゴールド」(大玉3個 267円)。糖度が高くあっさりしていて、まるでフルーツのような味わいです。

大橋さんは、桃太郎ゴールド100パーセントのジュース「桃太郎ゴールド100%トマトジュース」(1058円)も製造しています。

大橋さん:
「豊田市って実は農業が盛んで、特に米が多いんですけど、お茶ですとか果樹、野菜で言うとナスだとかネギだとか、畜産も数軒になってしまいましたけど頑張ってる農家がいますので…」

大橋さんは、豊田市で約5年間カフェとマルシェを併設したお店『ころも農園』をやっていました。しかし店舗の契約満了にコロナの感染拡大も加わり、2020年2月に店を閉じました。

大橋さん:
「自分たちの直売所がなくなってしまった。若手農家が声をあげてPRしていかないと、この先の農業の未来に不安を感じるっていう、そんな時だった」

 直売所がなくなった直後にやってきた新型コロナ。マルシェやイベントでの販売もできなくなりました。そこで2020年12月に、自分たちの直売所「おいでん市場」を立ち上げました。

 最初は地元の農作物だけを置いていましたが、“仲間の輪”はだんだんと広がり、栃木の梨や…。

山梨のぶどうなど、今では日本全国のおいしいものが集まるようになりました。

大橋さん:
「全国にも優秀な農家さんは沢山みえますので、そういう農家さんが作ったおいしいものを、地元の人にも食べてもらいたいという思いでやってます」

■海がない豊田に本格的な鮮魚店…名古屋の台所“柳橋市場”の目利きが出店

 野菜と並んで人気なのが魚介類のコーナーです。

女性客:
「魚とかさ、欲しいだけ作ってくれるから。そこがいい」

別の女性客:
「ここに来るときは魚をメインに来ます。なんか、名古屋の市場から仕入れるんですか?」

 質が良く新鮮で、しかも値打ちと評判です。この魚が届けられるのは、“名古屋の台所”と呼ばれる柳橋中央市場に店を構える、高級マグロの専門問屋「こじま」から。店主の小嶋英史さんは、ミシュランガイドに掲載される名店をはじめ、「食のプロ」達に信頼されている目利きです。

 しかし、小嶋さんのお店の取引先のほとんどが飲食店のため、ここ1年は注文が大きく減り売上は約6割減に。

小嶋さん:
「この市場全体がそうなんです。廃業されるお客さんも何軒もあるので…。違った形を考えながらやっている状態です」

 生き残るために小嶋さんは、卸売りとしてではなく、「魚屋 おいでん」という店名で「おいでん市場」に出店。経験のない「小売り」に挑戦しています。

マグロはもちろんのこと、今まで扱ったことのない種類の鮮魚や、加工品も手がけています。

 愛知県産の「ワタリガニ」(3杯1058円)に、口に入れた瞬間に溶けてしまう三重県産の「本マグロ 大トロ」(5切れ 950円)など、新鮮な魚介類がお値打ちに並びます。

 しかし、なぜ名古屋でマグロの店を営む小嶋さんが、海から離れた豊田市の産直市場に出店したのでしょうか。

小嶋さん:
「私も豊田市出身で、豊田市に住んでいる。大橋君とは小さい頃からご近所付き合いで『先輩もし良かったら鮮魚をやってくれないか』と依頼がありまして…」

大橋さん:
「自分たちが、自信を持ってオススメできる商品ばかりを並べるというポリシーで…」

 地元に何か貢献したいという先輩と、その先輩の目利きを信頼して誘った後輩。今では市場の名物コーナーになりました。

■子どもたちにお米を食べてもらいたい…米ジェラートなどスイーツも人気

「おいでん市場」では、スイーツも人気です。その一つが、地元でとれたお米と西尾産の牛乳で作った「米ジェラート舞」(302円)です。

mama’s農園の女性:
「お米の消費が減ってきているので、子ども達に食べてもらうにはアイスにしたら食べていただけるのかと思って」

 1本734円という北海道産の牛乳「放牧牛乳」(734円)もあります。

大橋さん:
「北海道の牧場に行かないと飲めない味。皆さんにも飲んでもらい、この感動を味わってもらいたい」

 大橋さんは、北海道・十勝にある土からこだわっている牧場でとれた牛乳の濃厚さに衝撃を受けたといいます。

その牛乳で製造したソフトクリームを、焼きイモに乗せたスイーツ「うめちゃんのまるごとおいもソフト」(580円)も人気です。

■トロトロながら程よい弾力で人気のわらび餅…バンテリンドーム側で評判の元中日投手の店も出店

 市場の駐車場に店舗をかまえるのは、「喜来もち 豊田店」です。このお店は、元中日ドラゴンズのピッチャー山田喜久夫さんが、バンテリンドームの側で営業するわらび餅のお店です。

元中日ドラゴンズの山田さん:
「豊田で(店を)出さないかという話だったので、僕の喜来もちを知ってもらおうと思いまして…」

 国産の本わらび粉を使い、秘伝の製法で作ったトロトロのわらび餅。これを口にした柳橋のマグロ問屋の小嶋さんが出店をお願いしました。

 トロトロながら程よい弾力もある「わらび餅 きな粉」(6個入950円)は、今では市場に欠かせない看板商品の一つに。豊田店では、地元で作られたお茶を使った「わらび餅 ほうじ茶」」(6個入 1200円)や「わらび餅 抹茶」(6個入 1200円)も販売されています。

大橋さん:
「農業をやっている人間が楽しそうじゃなかったら農業が魅力的に見えない。まず自分たちが楽しんでやれるように、仲間たちといい店にしていきたいと思っています」

 仲間たちで作った「おいでん市場」は“おいしくて楽しい”産直市を目指しています。