魅力の“ふれあい”困難に…苦境続く水族館が踏み切った『オンライン有料会員サービス』培った関係をリアルへ
愛知県美浜町の「南知多ビーチランド」ではここ2年の来場者数が新型コロナの影響を受けて半減し、厳しい経営状態が続いています。そこで、コロナで来場できないお客さんと繋がろうと、2020年10月からオンラインの有料会員サービスを始めました。その取り組みを取材すると、オンラインでの繋がりをリアルにも活かそうと試みる“新しい水族館の姿”がありました。
■コロナ禍で来場者数は半減…保てなくなったお客さんとの近い距離
1980年にオープンした「南知多ビーチランド」は、ペンギンやアザラシなどと触れ合える体験型イベントに加え、スタッフとの距離の近さも売りで、年間40万人ほどが訪れていました。
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しかしこの2年は、コロナの影響を受け来場者数が半減。収益も大きく落ち込み、施設の修繕費用を運営費に回すなどギリギリの状態が続いています。そして、ビーチランド一番の売りも…。
南知多ビーチランドの所長:
「近い距離感で動物に触れることができたり、イベントを通じてお客さまと我々スタッフとのふれあいが今まで魅力だったんですけど…」
コロナ禍で「ふれあい」が困難に…。大切にしてきたお客さんとの距離の近さが保てなくなってしまいました。
■オンラインでも“ふれあい”を…ビーチランドが新たに始めた会員への「限定コンテンツ配信」
2020年10月から始めたのが、有料の会員専用アプリ「南知多ビーチランドサポートプログラム」(月額550円~)です。
入会すると、動物たちがショーに向けて練習する様子や、水族館の仕事の裏側の紹介など会員限定のコンテンツを見ることができます。
動物たちの日常を飼育スタッフが中心となって投稿し、その投稿に会員がコメント。そのコメントに対してスタッフが返信し、オンラインでお客さんと繋がる試みです。200人ほどでスタートしましたが、現在は540人と着実に会員数を増やしています。
飼育スタッフ:
「密なファンが増えた。『ビーチランドを応援したい』『頑張ってほしい』ってお声も沢山いただくので」
当初は有料サービスとすることに不安もありましたが、今は逆にメリットを感じているといいます。
同・所長:
「(通常のSNSは)無難な内容を発信しなければみたいな…。(有料アプリは)応援してくださる方が見ているので、温かい目で見ていただけているのかな」
■アプリを通して飼育員と直接やりとりも…ビーチランドの状況を知り会員登録した一家
名古屋市に住む山口さん一家は、コロナ禍でビーチランドが大変な状況だと知って入会を決めました。
父・浩司さん:
「飼育員さんの苦労というか裏側というか、面白おかしく紹介してくださっていて、興味深いというか…」
母・小翠さん:
「アプリを通して、飼育員さんと直接お話できたりもするんですよね。向こうも顔を覚えてくださったりして」
娘・円歌さん:
「早く行きたい。園にいる動物を全部見て、お土産買って帰りたい」
■スタッフと客が顔の見える関係に…オンラインでできた関係性をリアルに繋げる
11月上旬。緊急事態宣言が明けて1か月が経ったビーチランドでは、ようやく「ふれあい」が戻ってきました。
女性客:
「さっきアザラシ触れたんで、嬉しかった」
中には緊急事態宣言中にアプリを見て、来園を楽しみにしていたという人もいました。
別の女性客:
「アプリを通して、動物たちの様子を見て元気をもらえたことはあったので…。ずっと来たかったので嬉しかったです」
賑わう園内には、山口さん一家の姿もありました。
父・浩司さん:
「新人トレーナーが(イルカショーに)出てましたけど…。アプリでは『こういう練習してます』っていうのが出てて、実際に頑張ってるのを見てよかったなと」
母・小翠さん:
「(会員になって)身近になったかもしれません。スタッフの皆さんが描いている未来図に向かって行くのを見守る、応援するのかな、アプリを通じて」
売店では、お母さんがスタッフへ差し入れ。アプリでやりとりをしていたことで親近感も増しました。
南知多ビーチランドの所長:
「オフラインで、現場でやれることの良さも改めて実感したところなので。今までやってきたことは大事にしながらも、新しい取り組みにどんどん取り組んでいきたい」
コロナ禍でオンラインによる“新たなふれあいの形”を作り出した南知多ビーチランド。ずっと好きでいてもらうために、オンラインで作った関係をリアルに繋げます。