航空業界は新型コロナの影響で、苦境に見舞われました。その真っただ中の2020年12月、LCCの「ピーチ・アビエーション」は、中部国際空港に新規就航しました。「Peach」はその他にも、「航空券ガチャ」や「乗り放題チケット」など、苦しい環境だからこそ斬新な企画で「攻めの姿勢」を貫いています。

■コロナ禍の“航空不況”真っただ中に中部国際空港に新規就航した「Peach」

 LCC(格安航空会社)の「ピーチ・アビエーション」は、2020年12月に中部国際空港に新規就航しました。

【画像20枚で見る】LCCピーチのトップが貫く“攻めの姿勢” 航空不況の今だからできる仕掛けを

 新千歳、仙台、那覇、石垣の国内4路線を続々とスタートさせると、2021年10月31日からの「冬ダイヤ」では新千歳便など3路線を増便し、コロナ禍でも攻めの姿勢を続けています。

「Peach」を引っ張るのは、森健明代表取締役CEO(最高経営責任者)です。森CEOがトップに就任した2020年4月、コロナの感染拡大が始まり予約率や搭乗率は一気に落ち込んだといいます。

森CEO:
「1年通してほぼ固定費分の赤字で、総額約300億円を超える創業以来の大赤字。そういう中で、セントレアは新規の拠点の開設」

 航空大手各社も減便や運休になるなど中部国際空港での船出は、まさしく“航空不況”の真っただ中。そんな逆風でもPeachが選んだのは、“仕掛けること”でした。

森CEO:
「反対する人はいなかった。飛行機を動かさないことには収益が上がらないから。国際が飛べないからと止めておくよりも、新しいチャレンジで国内線をやるということに理解いただいた」

「国際線の機材や乗員を国内線に投入し少しでも利益を稼ぐ…」。森CEOは、「よく攻めの経営と言われるが、自分は守りのつもりでやっていた」と話します。

■搭乗率も徐々に回復…来年以降のセントレア国際線就航も検討

 コロナの国内の感染状況が落ち着きつつある最近は、徐々に乗客が戻って来ているといいます。

森CEO:
「10月で全線平均70%台に達して、11月、12月はそれを更に上回る勢いで予約が入っている」

 さらに、Peachは早ければ来年にも中部国際空港に国際線の就航を検討するなど、その果敢な姿勢は驚きと話題を集めています。

森CEO:
「当然セントレアも国際線を出さないという選択肢はないと思っていました。(この地方では)ジブリパークも来年オープンするし、26年にはアジア大会がある」

 国際線の就航先としては、韓国や台湾、香港などが候補として上がっています。

■知ってもらわないと利用してもらえない…「航空券ガチャ」など様々な仕掛けが話題に

 その“仕掛け”は、ただ飛行機を動かすだけではありません。大阪・東京に続き、11月から名古屋でも始まったのが、「旅くじ」(1回5000円)です。

 ガチャガチャから出てきたカプセルの中には、行き先、旅先までの航空券購入に使える6000円分のポイントが入っています。

 旅先を自分では選べない「指定」チケットにも拘らず、SNSを中心に話題となり、長い行列ができるほどの人気に。

 他にも、国内全路線が“1か月乗り放題”という異例のチケットや、日帰り旅行限定の割引航空券など、利用客を呼び込む企画を発信し続けています。

森CEO:
「待ってたら何も起こらないですよね。こういう商品を出して、『Peach』を知ってもらわないと乗っていただけない…」

■気兼ねなく旅行ができる日に向けて…SNSで常にユーザーとの接点を持ち続ける

 関西国際空港の近くにある「Peach」のオフィスでは、新たな仕掛けがありました。入念にスマホのカメラワークをチェックし“インスタライブ”でつないだ先は、北海道・知床のリゾートホテルです。

知床のホテルの担当者:
「昨日は町の方に雪が降ったので…」

Peachの担当者:
「えっ、もう雪が降ってるんですか?」

「世界自然遺産のあるまち」をテーマに、新規就航先の観光地と結ぶSNSでの“トークライブ”。コロナの影響で大々的な就航イベントができなくなったため、それに代わるふれあいの場として、一度に多くのユーザーとつながるSNSでの発信を考えました。

Peachの担当者:
「SNSでつながり続けるのが大事。(コロナが明けて)『そういえばPeachがおすすめしていたな』というきっかけづくり」

 気兼ねなく旅行ができる日に向けて…。関係性継続のために、常にユーザーとの接点を持ち続けます。

■日本全国・アジア各地の空港にPeachを…“航空不況”だからこそ挑戦を続ける

 Peachが次々に仕掛ける新しい企画。アイデアは、社内から次々に出てきたといいます。

森CEO:
「いっぱいで出てきましたね。例えば我々は『チャーターフライト』をやったことがなかったんです。たまたまコロナ禍で機材があるので、遊覧飛行をやろうじゃないかと」

 他にも、子供向けに何かできないかと、パイロットと客室乗務員による機内での「航空教室」も開催。少しでもPeachを知ってもらい、好きになったもらうための努力を続けます。

森CEO:
「各地にお住まいの方々にピーチを使ってもらうためには、就航地点を増やしていかないと。日本各地、アジア各地の空港に必ず止まっているという姿、これは必ず達成したい」

 未曽有の“航空不況”の今だからこそ、Peachはあっと驚くような企画を仕掛け続けます。