自宅の家の周りなどを歩いて危険な場所が無いか確認する「防災さんぽ」と呼ばれる取り組みがあります。普段見慣れた街並みにも、災害が起きるとどんな落とし穴があるのか、名古屋を歩いて調べてみました。

 名古屋市中川区の荒子地区。地下鉄高畑駅があり、およそ2万人が暮らす住宅街です。この街にどんな危険があるのでしょうか。

 今回は、企業防災や都市防災に詳しい名古屋大学の西川智教授と一緒に「防災さんぽ」しました。

西川教授:
「普段の生活の中からどういったところが危なそうか、どういったところが安全かと事前にちょっと見ておくと、いざという時にとても役に立つんです」

 歩き始めて数分、西川教授が何かを発見しました。

西川教授:
「あそこに、ここの地盤が海抜マイナス0.2mとありますね」

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 高畑駅の入口にあったのは名古屋市が作成した海抜表示。市内でも中川区や港区など海が近い7つの区におよそ560か所設置されています。

西川教授:
「もし高潮とか津波が来ると、ここは水に浸かってしまうということ。『どこだったら安全に逃げられるかな』と普段からちょっと意識しておくと、いざという時に安心して行動できます」

 普段見逃している情報も、避難の際には安全に逃げるためのヒントになります。

 次に教授が気がついたのが、区内を流れる荒子川です。普段は散歩をする人も多い穏やかな小川ですが…。

西川教授:
「津波は海から川に沿って先に上ってくるんですよね。伊勢湾の津波が陸地を襲う以前にこの荒子川をさかのぼってきて、ここから海水が溢れるということは考えといた方がいいです」

 さらに、進んだ先で見つけたのは「震災用」と書かれたマンホール。

西川教授:
「もしここが避難所になった時にトイレが足りなくなるから、そのために用意しているのかもしれませんね」

 このマンホールは、災害時には「簡易的なトイレ」に早変わり。断水などでトイレが使用できなくなった時のために、主に避難所の近くに設置されています。

 続いて発見したのは「避難所」ですが、見つけたら安心というわけではありません。

西川教授:
「『指定緊急避難所』というのは、一時命を守るために一瞬逃げる場所。そして『指定避難所』というのは、家が壊れてしまった時に、寝る場所としてとりあえず『ここで避難できますよ』というのが指定避難所です。名前が似ているんですけど、実は役割が違うんですね」

 災害から命を守るため一時的に避難する「指定緊急避難場所」と、災害後も家に戻れなくなった人などが滞在する「指定避難所」は役割が分かれています。

西川教授:
「東日本大震災の時に、普段使っている公民館で本当は津波の時には逃げてはいけない場所と書いてあるけれども、普段の習慣からそこに行ってしまって、結果的に津波に飲まれてしまったということもあるんですね」

 この保育園の場合も…。

西川教授:
「よく読むと『×印の災害時には別の場所に避難してください』と書いてありますね。多分ここは割と低い土地なので、洪水とか高潮とか津波の時には、ここは水に浸かってしまうかもしれない」

 どんな災害時に利用できる避難所か理解した上で、確認する必要があるといいます。

西川教授:
「やっぱりゆっくり歩いてみると、普段は何気なく通り過ぎちゃうものが見えてきますよね。だからぜひ、休みの日なんかに通学路をご家族でゆっくり歩いてみて、『こっちは安全だ』とか『ここ避難所なんだ』とか『電柱には表示あるんだ』って一度見てみるといいかもしれないですね」