2月に行われた名古屋大学の入学試験で、世界史の問題に出題ミスがありました。なぜミスが起きてしまうのか、長年入試問題を作ってきた元教授に話を伺いました。

 こちらは、2月25日に名古屋大学の文学部と情報学部で出された世界史の入試問題。中国国内で起こった「乱」にまつわる文章の空欄を埋めていく記述式の問題です。

 本来(8)の番号の空欄に(7)と書かれていて、これにより文章のつじつまが合わなくなり、合わせて4つの問いの答えが導き出せなくなっていました。受験生が試験終了間際に試験担当官に指摘したことで明らかになりました。

 名古屋大学はお詫びとともに、答えが出せない4問をすべて正解として採点し合否判定するということです。

 また2月に行われた中京大学の入試では、マークシートの読み取りで正しく採点されないエラーが発生し、修正の結果、79人が追加合格に。

 こうした大学入試のミスは毎年起きていて、2020年度は218の大学で476件のミスが発生しました。しかも増加傾向にあるということです。

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 ミスが出る理由について、慶応義塾大学で長年入試問題を作ってきた元教授で、「入試問題の作り方」という著書もある延近充さんに話を伺いました。

 まず試験問題の作り方について、慶応大学では大学の教員が複数人体制で2月の試験に向け、10か月前から準備をしていたといいます。

 作った問題は、出題経験がある第3者にチェックしてもらったり、教員自らが「模擬受験」をして内容を精査します。受験生に公平になるよう最低でも4社分の教科書を参考にし、さらに難易度のバランスをとって作るといいます。

 入試問題になぜミスが出るのか、延近さんは主に2つの理由を挙げています。

 1つは教員のオーバーワークです。教員は授業や自身の研究の合間に入試問題を作るため多忙になり、加えて責任重大ということで「余分な、できたらやりたくない仕事」と考える教員が多いといいます。

 また最近は、複数の入試枠を設けることで、作る入試問題そのものが増えているところもあり、オーバーワークにつながっているということです。

 もう1つは、経験がうまく引き継がれていない可能性です。

 問題を作る心得やコツは経験がモノを言うところがあり、経験者からの引継ぎなどが欠かせませんが、それが欠如することでミスにつながりやすくなると説明しています。

 今回の名古屋大学のミスについて、延近さんは「番号の振り間違いは、教員による模擬受験をするなどチェック体制をしっかりしていれば防げる単純なミスだった」と指摘。

 さらに、問題そのものについて「これは入試問題として非常に適切じゃないという感想を持った。〇〇の乱と言っても無限にあり、何年とかではなく、唐の時代や元の時代というだけだと縛りが甘すぎる。解答を限定する条件が曖昧だ」と話します。

 今回の問題は記述式でしたが、正解を限定する条件が弱く、受験生が作成者の想定と違う解答をした場合に答えが誤っていると証明することが難しいので、適切ではないとしています。