3月20日、三重県菰野町・湯の山温泉にある廃業ホテルで火事がありました。火はおよそ10時間後に消し止められ、ケガ人はいませんでした。また3月19日には、愛知県南知多町の廃業ホテルでも火事があり、カーペットの一部が焼けました。

 2つのホテルは「心霊スポット」として知られていて、警察は火事との関連を調べています。

 全日本温泉研究会会長の郡司勇さんによると、こうした廃墟のホテルや旅館は全国に現在1000軒近くあるといいます。温泉ブームが起こった昭和40年代に多くのホテルや旅館が建てられましたが、平成に入ったころからバブル崩壊やスーパー銭湯に押され、廃業するホテルや旅館が増えていったということです。

 火災のあった湯の山温泉を取材すると、思わぬ新発見がありました。

■火災発生前には若者らしき集団の姿が…「心霊スポット」として注目を集めた廃墟ホテル

 名古屋から車でおよそ50分、三重県菰野町の湯の山温泉。1300年以上の歴史を誇る、由緒ある温泉町です。火災があったのは、温泉町に入ってすぐにある「鶯花荘(おうかそう)」という廃墟ホテル。

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 廃墟ホテルへの入り口へ向かうと、立ち入りを禁止する柵や看板が設置され、規制線も張られていました。

 周囲には比較的新しいゴミも落ちていて、人がいた形跡が残っています。

 近所の人に話を聞くと…。

近所の住人:
「車で夜中に数人で来て、大きな声を出してうろついている感じです。金属バットを持っているような人がいたこともあったので」

 さらに、廃墟ホテルの隣にある旅館「寿亭」にも話を聞きました。

寿亭の大橋取締役:
「春休みに若い子らが心霊スポットみたいな感じで来ていたんですが、だいたい夏が多かったんです。(火災の)前々日ぐらいにインターネットで全国の心霊スポットっていうのをやって、そこが全国で1番になったらしいんですよ」

「心霊スポット」として取り上げられ注目を集めてしまい、春休みや夏休みを中心に侵入者が絶えないといいます。

 火災当日の防犯カメラを特別に見せてもらうと、発生のおよそ2時間半前の午前3時すぎ、明かりを持った若者らしき集団の姿が見えます。その15分後、画面奥の廃墟ホテルがある方に向かっていきました。この集団がいた場所は、廃墟ホテルの入り口以外はなにもありません。

 午前3時30分すぎ、集団はこの道路へ戻ってきて周囲を徘徊したのち、車に乗るなどしてその場を去りました。

 その後、車は通るも人影は見えず…。火災発生時刻の午前5時ごろ、炎の影響か、反対側の山が明るくなり、午前6時ごろには消防隊の姿も見えました。

 三重県警も若者らしき集団が防犯カメラに映っていたことを把握していて、関連を捜査しています。

 こうした廃墟を解体することはできないのか、湯の山温泉協会に伺うと…。

湯の山温泉協会の伊藤会長:
「所有者の方が高齢のため、今はそっとして置いてほしいという反応ですね」

 伊藤会長によると、この廃墟ホテルは所有者がいて再三お願いをしていますが、折り合わず、手が付けられない状態だといいます。

湯の山温泉協会の伊藤会長:
「30年ぐらい前にバブル崩壊とともに閉鎖されまして、それ以降ずっとあの形になっております。非常に目立つ場所に建っております。本当に何とか早期に取り壊しをお願いしたいというのが本音ですね」
 
 今後は廃墟への一本道に防犯カメラを増設して、監視を強化したいとしています。

湯の山温泉協会の伊藤会長:
「いわくつきの建物ではないので、無断で立ち入って事故が起きて、本当の心霊スポットになってしまわないように。立ち入りは困りますね」

■「廃墟ホテルや旅館が無くなることはない」 イベントや撮影場所として提供する取り組みも

 廃墟を管理・運営する会社を営む「株式会社GG.PRO」の大福地さんによると、ビル型のホテルを解体する場合、少なくとも3000万円以上はかかるといいます。加えて、ホテルや旅館は景観を求めて崖などの立地条件が悪い所に立っていることが多く、さらに費用がかさむため、解体は現実的に難しいということです。

 また、廃墟のホテルや旅館の所有者は高齢者が多く、その後、子供が相続を放棄して所有者不在の廃墟になるパターンが増えているといいます。

 こうしたことから、大福地さんは「これからも廃墟のホテルや旅館が無くなることはないだろう」と見ています。

 大福地さんの会社では、所有者から廃墟を借りて、しっかりと管理して有効活用する取り組みを始めました。例えば、肝試しや謎解きゲームなどのイベントを行ったり、ユーチューバーやコスプレイヤーの撮影場所として有料で貸し出したりしています。

 完全な解決には至りませんが、所有者の収入面の改善や防犯につながることが期待されています。