愛知県津島市に、筋肉隆々の“マッチョ”な若者が介護士として所属している施設があります。施設を運営する代表は、人手不足の介護の現場に若者を集めるため、2018年に「フィットネスの実業団」を設立し、“マッチョな人”の採用を始めると若い男性が集まってきました。マッチョだらけの介護施設は、業界に旋風を起こしています。

■筋肉隆々の介護士がサポート…マッチョだらけのグループホーム

 愛知県津島市にあるグループホーム「NOIE TSUSHIMA(ノイエ ツシマ)」では、知的障害がある人などが共同で生活を送っています。

【画像20枚で見る】フィットネス実業団設立で若い人材続々…マッチョだらけの介護施設が業界に起こす旋風

この施設で入居者たちを手助けするのは、5人のマッチョな介護士です。

男性介護士:
「週に5回くらいはジムに行っています」

別の男性介護士:
「部位ごとで日がある。胸の日、肩の日、腕の日みたいな」

彼らは仕事終わりには「筋トレ」。

減量のための食事制限も欠かしません。

中には、筋肉自慢を競うフィットネスの全国大会で入賞したスタッフもいます。

■仕事が終わればトレーニングジムへ…パワーリフティングの大会に向けて自らを追い込む男性

 マッチョな介護士の一人・山中悠嗣さん(24)は、2021年から介護士として働いています。

山中さん:
「(上半身を脱いで)まだまだ、ここから5キロぐらい絞る。腹筋はもうちょっと見えてくるかな」

学生時代に、部活のために始めた筋トレでトレーニングにハマりました。介護士の仕事は、力仕事も多いといいます。

山中さん:
「腰を痛めちゃったりするスタッフもいる。体幹部分はしっかりしていないと移乗(移すこと)はできない」

午後4時に8時間の勤務を終えて向かった先は、トレーニングジム。山中さんは、週に5日通っています。このジムは、施設のスタッフであれば、会社の福利厚生の一環として無料で使うことができます。

山中さん:
「パワーリフティングの大会があるので、そこに向けて減量」

介護の仕事をしながら、趣味でパワーリフティングを続けている山中さんは、大会に向けて自らを追い込んでいます。

■「人の成長の瞬間に立ち会えるのが面白い」…働いていくうちに変わった介護士のイメージ

 山中さんは、なぜこの業界に入ったのでしょうか。

山中さん:
「(趣味で)トレーニングをしていて、実業団に入るのを目標に(会社に)入ってきたので、介護が目的ではない。もともと全く興味がなかったです、正直」

パーソナルトレーナーを目指し専門学校に通っていましたが、コロナで求人が減り断念。

専門学校の先生から“マッチョな介護士”の求人募集があると聞き、興味を持ったといいます。その頃の介護業界のイメージは…。

山中さん:
「キツいし、汚物とかも扱わないといけないし、給料もそんなに良くないってイメージが」

しかし、働いていくうちに…。

山中さん:
「生活していけるお金はもらっていますし、汚い場面もあるってだけで、それ以外のところの方が多いので。人の成長を見て仕事ができるのがすごく楽しく、できなかったことができるようになる瞬間に立ち会えるのが面白い」

■きっかけは介護業界が抱える深刻な人手不足…“マッチョな人”の採用を始めると問い合わせが急増

 山中さんのようなマッチョな人たちを介護の世界に呼び寄せたのが、東海3県で19の施設を運営している「ビジョナリー」の代表・丹羽悠介さん(37)です。

丹羽さん:
「介護の業界がずっと人手不足なので、人が来る業界になってほしいと…。ただ介護がしたい人を探しても集まらないと思ったので、会社に魅力を持ってもらって…」

きっかけは、介護業界が抱える深刻な人手不足でした。

介護職員の数は、2023年には約22万人、2025年後には32万人、さらに、2040年には70万人ほど不足すると予測されています。

丹羽さん:
「若い子たちが目指す業界にしたいって。マッチョの実業団を作って募集をしたらたくさん集まってきた」

以前は募集をかけても年間1、2件しか問い合わせがなかったといいますが、2018年頃から“マッチョな人”の採用を始めたところ、問い合わせが急増。2018年には、福祉業界として初めて「フィットネスの実業団」も設立しました。

2021年度の新卒採用には、300件近い応募がありました。

■入居者「力があるから安心感ある」…力があるだけでなく体の使い方も上手なマッチョな介護士

 マッチョな介護士たちには、こんな強みもあります。

丹羽さん:
「ボディメカニクス(力学を応用した介護技術)とか、毎日トレーニングでやっているので、上手なのでケガしない」

自分より体重の重い人を抱える必要があるなど、体力勝負の面もあるのが介護の現場です。

丹羽さん:
「介助する時ってこちら側(サポート側)も大事ですけど、される側も安心して体を預けてくれないと危なかったりする。(マッチョだと)見た目的にめちゃくちゃ安心感ある。任せてもいいよって感じも出せるので」

普段からトレーニングで鍛えている彼らは、体の使い方がうまく、利用者の安心にも繋がっています。

入居者の男性:
「力があるから安心感ある」

別の入居者の男性:
「(介助が)安定しているので危険はない」

■噂を聞いて面接にやってくる女性も…マッチョだらけの介護施設は業界に旋風を起こす

 今ではマッチョな男性だけでなく、女性も働きたいと面接にやってきます。

女性:
「興味があって、介護の仕事に。思いやりとか、いいなと」

ユニークな介護施設があると噂を聞きつけ、面接にやってくる女性も増えているといいます。

丹羽さん:
「『介護の仕事って素敵ですよ』って推すより、『楽しい会社が介護やっていますよ』の方がいいんだろうなって。まだまだ福祉の会社、ちょっとした工夫でどれだけでも可能性あるって思っています」

 マッチョな介護士の山中さんは、帰宅後もトレーニング系の動画を見るのが日課です。

山中さん:
「介護士でトレーニングやっているって面白くないですか。筋トレとかパワーリフティングで結果を出して、(自分を)知ってもらう所から始めて、楽しく利用者さんと過ごしていけるような、カッコイイ介護士になりたい」

マッチョだらけの介護施設は、業界に旋風を巻き起こしています。