文化庁がスタートした「100年フード」は、世代を超えて長く地域に愛されてきた食文化を認定する取り組みで、北海道の「ジンギスカン」や岩手の「わんこそば」などが選ばれています。

100年フードの中で、「きしめん」などと共に“愛知の食文化”として認定された、聞きなれない「おひら」とはどのような料理なのか。調べてみると、愛知県豊根村など奥三河地方で年末年始に食べられる郷土料理であることがわかりました。

■名古屋の人はほとんど知らない…愛知県豊根村に伝わる汁もの「おひら」

 2022年3月に始まった文化庁の「100年フード」。

【画像で見る】きしめん等と共に愛知の食文化に認定…文化庁の100年フード“おひら”ってナニ

地域の食文化を次世代に受け継ぐのが狙いで、秋田県の「きりたんぽ」や高知県の「カツオのたたき」など131件が認定されました。

愛知県からは、「きしめん」や「高浜とりめし」など、お馴染みのグルメ10件が認定されましたが…。

その中に聞き慣れない「おひら」というグルメがありました。

 100年フードのホームページによると、「おひら」とは、見た目はおでんのようなグルメで、「豊根村をはじめ山里に伝わる具だくさんの汁物」と書かれています。

「おひら」は、どれくらい知られているのか。名古屋の街で聞いてみました。

女性:
「知らない」

別の女性:
「聞いたことない。(写真を見て)おでんにしか見えない」

男性:
「全く知らないわけではないけど…。詳しくはわかりません」

「名前は聞いたことある…」という人が1人いただけで、ほとんどの人は知りませんでした。

■お正月に大きな鍋で煮る…豊根村に代々伝わる郷土料理

 名古屋では全く知名度がない「おひら」ですが、実際に食べられている場所ではどうなのか。名古屋から車で2時間半の奥三河エリアに位置する愛知県豊根村へ。人口およそ1000人、村の9割以上を山林が占める自然豊かな豊根村の人に、「おひら」について聞きました。

酒店の店主:
「(おひらは)年取りに大きな鍋で…。正月に女の人が、三が日でも仕事せんでもええように」

女性:
「お正月に煮る大きな鍋。一週間くらいで食べる」

村の人たちによると、「おひら」とは、年末年始に食べる家庭料理のことのようです。

■煮込むことで野菜の旨味が溶け出す…年末年始に大きな鍋で食べる家庭料理

「おひら」は一体どのような料理なのか。100年フードのホームページに掲載されていた道の駅「豊根グリーンポート宮嶋」へ。

この道の駅では普段「おひら」を提供していませんが、特別に作ってもらいました。「おひら」は、糸昆布や椎茸、油揚げに、里芋や大根などたっぷりの野菜を加えた煮込み料理。

長時間煮込むことで野菜の旨味が出汁に溶け出し、深い味わいに…。醤油やみりん、砂糖などを使った少し甘めの料理でした。

道の駅の担当者:
「大きなお鍋で煮て、大晦日から(1月)5日くらいまで火を入れては食べる。最後は(具が)溶けかかっているような感じ」

「おひら」は、冬野菜を大量に煮ておいて、大晦日から少しずつ食べていくスタイルのため、毎日食べても飽きない味付けと、栄養がしっかりとれるたくさんの具が入っています。

平たい器に盛り付けて食べていたことから「おひら」という名前が付けられたといいます。

 この道の駅では、そんな美味しくてカラダにもいい「おひら」を次の世代にも伝えていきたいと、村の若い人たちを対象に料理教室が開かれています。この日は、群馬や兵庫から移住してきたという若者たちが参加していました。

移住してきた女性:
「色々教えてもらって、村外にも伝えていくことが大事かな」

別の移住してきた女性:
「豊根村の伝統の味と思うので、今後も長く続いていくといいな」

文化庁のホームページによると、100年フードは「食文化の継承」がテーマ。豊根村では、世代を超えて長く地域に愛されてきた「おひら」の継承が進められていました。