新型コロナの感染拡大で打撃を受けた人たちを支援する「新型コロナ対応地方創生臨時交付金」には、約16兆円の予算が付きました。その使い道は自治体の判断に委ねられていますが、取材をすると、町の花火大会やサル対策など、一見コロナとは関係がない事業に使われていることがわかりました。

■町「イベント事業者の支援も兼ねて」…町の花火大会にコロナ交付金1000万円

 2020年のクリスマスに、岐阜県養老町で行われたサプライズ花火大会では、700発余りの花火が打ち上げられました。

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実は、この花火大会の費用1600万円のうち、1000万円がコロナ対策の臨時交付金が使われていました。

養老町の担当者:
「花火は昔からの“鎮魂”とか“祈願”とか…。イベント関係はコロナで相次いで中止ということもあり、イベント事業者等の支援も兼ねて、花火大会にさせていただいた」

 岐阜県輪之内町の雑貨店には、「徳川将軍家 御膳酒」と書かれたラベルのお酒が並んでいます。

江戸時代に、輪之内町で作ったお米を将軍家に納めていたこともあり、2013年に「徳川将軍家 御膳米」と「御膳酒」を商品化しました。

輪之内町では、この御膳米の紙袋のデザインや紙袋200枚と箱1000箱の制作に、臨時交付金およそ275万円を使用していました。

輪之内町の担当者:
「交付金のメニューの中に、“地域名産品の魅力発信”があったので、使わない手は無いと…。ダイレクトに効果があるものでは無いかもしれないけど、将来的に輪之内がPRしていく商品展開ということで」

■外出自粛で農地見回りが減り被害拡大…サル捕獲のおりにコロナ交付金92万円

 三重県度会町では、サル対策にコロナ交付金を使っていました。山林の中に置かれた高さは2.5メートルほどの鉄製のおり。中にはサルをおびき寄せるための果物を模したカラーボールが転がっています。

度会町の担当者:
「サル用の大型捕獲おり。いわゆる地獄おりという囲い罠」

地獄おりは、一度落ちたら二度と出られないという構造で、値段は92万4000円です。

度会町では、収穫前の野菜や果物などをサルに食べられる被害が毎年50万円ほどあります。コロナ対策とサルは関係無いように思われますが、実は「ステイホーム」の思わぬ影響がありました。

同・担当者:
「コロナ禍で外出自粛が強くなって、農家さんの農地見回りが減少し、(サルによる)被害も多くなったので、この交付金を活用させていただきました」

町は、2年間で39匹のサルを捕獲しました。これに町民は…。

町民の男性:
「賛成。(サルが)あまり畑に寄って来なくなった」

一方で…。

町民の女性:
「サルのおり?コロナと関係あるんですか?高いです。町の子供達のための使い方をしてくれたら嬉しいけど」

■グラウンド整備作業での「密回避」のために…コロナ交付金360万円でトラクター購入

 三重県南部の海沿いに位置する御浜町。

草野球などが行われる町営グラウンドの片隅の倉庫に、トラクターが止められていました。このトラクターは、コロナ交付金360万円を使って購入されました。

この日、試合が終わってトラクターの出番かと思いきや、選手たちはトンボを使ってグラウンド整備を始めました。このトラクターは使われているのでしょうか。

野球をする人:
「(トラクターは)使ったことない」

何のために購入したのかを町に聞いてみると、文書で返信がありました。

<御浜町からの文書>
「グラウンド整備作業において複数人作業による密の回避、整備道具の共有等による感染リスク軽減に寄与しております」

その理由は、グラウンド整備の時の“密の回避“とのことですが…。

野球をする人:
「感染対策のために?そうなんですね」

町民には、グランドでの感染対策という認識はないようです。

自治体によって異なるコロナ交付金の使い道。本当に必要なところに使われているのか、疑問が残ります。