海水浴場で海の安全を守るライフセーバーに、注意すべき海の事故について聞きました。

■事故につながる一番の危険は“意外な風”の影響

 家族連れに人気の愛知県知多市・新舞子マリンパークに伺い、ライフセーバー歴20年以上の水川さんに話を聞きました。

【動画で見る】波が穏やかな海水浴場にも危険性…『風』が要因で結果的として“溺れ”に ライフセイバーが語る浮き具の事例

水川さん:
「愛知県の海水浴場の場合は内海(うちうみ)が多いので、波というよりも風、風が要因で結果的に溺れにつながることが割と多いかなと」

浮き輪に乗ったまま沖まで流されてしまうなど、特に風の影響を強く受けるといいます。

中でも多いのが…。

水川さん:
「普通の浮き輪もあれば、青色をしたイルカのタイプの浮き具もありますよね。空気の塊のモノが風の影響を受けて人の手を離れた瞬間に、どんどん流されていってしまう。今まさに、ビーチボールがちょっとだけ流れています。(風向きによって)どんどん沖の方に流されてしまう。それを追いかけていくうちに、体力がなくなって溺れてしまう」

浮き輪などは手放さないこと。もし手放してしまっても、無理に追いかけないことが重要です。

■無防備で危険な素足…岩場やゴミなどによるケガに注意

 救護所では小学生の男の子が手当てを受けていました。浅瀬で膝をついて、貝殻や石で切ったといいます。

水川さん:
「海水浴ですので、皆さん素足で歩かれる、楽しまれる方が多いと思います。足も濡れてふやけているので、より切りやすい」

岩場やゴミなどによるケガを完全に防ぐのは難しいので、絆創膏など簡単な救急セットを備えておくことが大切です。

■「飲んだら泳がない」 飲酒をすると水難事故での死亡率が2倍に

 とてもキケンだと水川さんが指摘するのが、飲酒した状態での入水です。

水川さん:
「アルコールを飲んで、平常ではない体の状態で水の中に入るのは非常に危険だと」

海上保安庁によると、飲酒をすると判断能力や運動能力が下がり、水難事故での死亡率が2倍に跳ね上がるといいます。

水川さん:
「ビーチに来るとお酒を飲みたくなるかなと思います。それ自体は悪いことではないですが、『飲んだら泳がない』これに限ります」

■クラゲ以上に危険!全国どこの海でも見られる"アカエイ"

 水川さんが、ある写真を見せてくれました。

水川さん:
「常滑市のりんくうビーチで、こういった海洋生物が打ちあがっていました。アカエイですね」

7月に撮影した体長50センチほどの大きな「アカエイ」。鋭いトゲに刺されると、激痛を伴い患部が腫れあがります。

水川さん:
「なにかヒラヒラしたようなものが泳いでいるのを見かけたら、アカエイの可能性が非常に高いので、そういった海洋生物の近くには寄らない」

アカエイは全国どこの海でも見られ、もし刺された場合は「患部を45度くらいの熱めのお湯に長め(15分以上)につけて温める」と、毒が弱まったり腫れや痛みが和らぐということです。

 海の危険を長年見てきた水川さんは、「みんながルールを守って遊べば、海の事故は起きません。そして海の美化にもつながります。僕たちライフセーバーの出番がなくなるのが理想です」と話していました。

 警察庁によると、2021年に起こった水難事故による死者・行方不明者のうち、半分が海で事故に遭っています。

東海地方では2016年~2020年の5年間で、遊泳中に海の事故に遭った人は82人、そのうち死者・行方不明者は25人です。