
名古屋高速で22日、バスが横転して炎上し、9人が死傷した事故はなぜ起きたのか、現場の状況などを専門家に分析してもらい、その原因を探りました。
また、万が一こうした状況に遭遇したらどうすればいいのかも取材しました。
交通事故鑑定人の熊谷さん:
「速度はさほど出ていなかったというところ。もし速度が出ていて衝突しているのであれば、もっと先の方までバスは滑走していくんですね。ただそれが中央分離帯よりわずか先に行ったところで横転して止まっている状況」

こう指摘するのは、交通事故鑑定人の熊谷宗徳さん。事故現場にブレーキ痕がなく、運転席の正面が大きくへこんでいることから運転手は衝突の直前、何らかの原因で意識を失った可能性が高いといいます。
【動画で見る】直前に“意識失った可能性”指摘…9人死傷のバス横転炎上事故 専門家「本能的に避けられない状態だったか」

熊谷さん:
「意識があったら必ず人っていうのは本能的に逃げるというか、避けようとします。それができない状況であったのは間違いない。50代で持病がない方が急な疾患で、例えば車を運転中に単独事故を起こして、現場に行ったらもう亡くなられていたという事故は結構あるんです」
また、現場に残された跡から、事故の直前に降りるはずの出口のある右車線から、本線の方へ動いたと分析します。

熊谷さん:
「中央分離帯の上に標識だとかがあるが、それが衝突で後ろに倒れているのが左側なんですよね。そうすると右から左の方に向けて衝突した可能性を考えると、(出口に向かう車線から)徐々に中央分離帯に向かって進んでいった可能性の方が高いとは思いますね」

また、今回の事故では発生からおよそ20分後にはバス全体が炎上。出火の原因について、車両火災の鑑定などの専門家は…。
法科学鑑定研究所の冨田研究員:
「正面から衝突をして、中央分離帯に車体が乗り上げて、左にドンッと横転をしている。この乗り上げた時に、車両の前方と車体のフロントのお腹の部分、この辺りをやはり強く損傷しているという風に見えますので。通常想定されないような場所の損傷を受けた場合、火災の危険性や燃料の漏出の可能性というのは否定ができなくなると。車両の前方から後方に向けて、燃料のポンプやホースがありますので、状況的に燃料ホースだとかブレーキオイルとかに何らかの損傷が起きたことで火災につながったのではないのかと」

乗り上げた際にバスの底を打ったことも、出火原因の一つとして考えられると分析します。急速に燃え広がった理由については…。
冨田研究員:
「今回の場合ですと、直接そういった燃料系とかオイルへの延焼が火災を早めた直接の原因ではないかと思われます。少しでも漏れ出ていったん着火した、火炎が発生したらそこからどんどん延焼していきますので」

また、車両が炎上した場合の脱出の難しさについてはこう指摘します。
冨田研究員:
「バス自体は横幅が2m強ありますので、よじ登って反対側から脱出するというのはなかなか困難なことだと思いますので、今回の場合ですと、運転席に近いところでやはり火災が発生しておりますので、なかなか逃げることも困難かと思います」
バスが横転した際、どうやって脱出すればよいのか、愛知県東郷町の旅行代理店「ワールド旅行」で事故を起こした車両と同じ60人乗りの観光バスを見せてもらいました。(※事故を起こした会社とは別の会社です)

30人以上が乗車する大型バスなどは、非常口の設置が義務づけられていますが、多くは右側の後部に設けられています。事故のあったバスにも右後部に非常口の跡が確認できます。

ワールド旅行の大海本部長:
「外から開ける場合はこちらの窓を強く中に押してもらう。レバーを下に下げてもらうとドアが開きます」

タイヤが大きいため、非常口自体も高い位置にありますが、いざという時はここから飛び出さなければなりません。

バスが横転した場合には、運行前の点検で使うハンマーが運転席の脇に置かれていて、いざという時はガラスを叩いて割って、脱出にも使用できます。

しかし、最も大切なのは「シートベルト」だといいます。
ワールド旅行の大海本部長:
「乗ってもらったら直ちにシートベルトつけるということですね。急ブレーキとか急に追突したりとかした時に、やっぱり座席から飛ばされたり窓から外に飛び出したりすると、後続車にひかれたりする。もし何かあった時は乗務員さんがちゃんとしているなら、案内や誘導に従って行動してもらえればいいと思います」