岐阜県海津市の「千代保稲荷(ちよほいなり)」は、商売繁盛と家内安全にご利益があるとして、「おちょぼさん」の愛称で親しまれている。久しぶりに行動制限がなかった2023年の正月、希望と活気に溢れる初詣を取材した。

■「賽銭箱に1000円札」「名刺を奉納」「大きな熊手を」…商売繁盛を願う「おちょぼさん」の参拝客

 午前7時。「おちょぼさん」の参拝客は、まず“並ぶ”ことから始まる。

【動画で見る】金ピカ社長の串カツ店は大行列…行動制限のない元日の「おちょぼさん」

店員:
「揚げ2個です」

並んでいた人が手にしたのは、「油揚げ」(ローソクと1組50円)。

賽銭に加え、神の使い・キツネに油揚げを供えるのが、「おちょぼ」流のスタイルだ。(※諸説あり)

愛知県北名古屋市から来た家族の父親(40代・自営業):
「毎年恒例で来ていますね。変わらぬことが一番ですけど、少しでも稼げれば…」

息子(10):
「どうか家族が元気でいられますようにって」

岐阜県笠松町から来た家族の母親:
「去年(2022年)はコロナで、妊婦の時(8月に出産)は、外出するのにすごく気をつかったので、今年はみんなで外に出て遊べる年にできたらいいなって」

大胆にも、賽銭箱に1000円札を投げ入れる男性がいた。

名古屋市から来た男性(50代・飲食店経営):
「商売がずっとうまくいっているので、お礼というか報告で来ています。今年もより一層、うまくいくように」

10代の初々しいカップルは…。

三重県津市から来た男性(18・自営業):
「僕が(2022年に)転職をしたので、成功しますようにってお願いしました」

女性(18・専門学生):
「いま専門学生で、勉強をちゃんとできるように。動物看護師になる予定です」

Q.2人の仲についてのお願いは?
女性:
「お願いしなくても仲良し(笑)」

名刺を奉納する人もいた。

石川県小松市から来たという齊藤悠(さいとう・はるか 37)さんだ。

記者:
「名刺ですか、入れられていたのは?」

齊藤さん:
「うどん屋さんをやっているので、なんか(商売が)成功するみたいな」

石川県でうどん店を営む齊藤さんは2019年から、毎年元日に「おちょぼさん」を訪れているという。

齊藤さん:
「“熊手”を買いに来たんですけど、でっかいの」

商売繁盛を願って、“熊手”を探しに来た。

齊藤さん:
「(うどん店は)じいちゃんがやっていたんですけど、それを引き継いで5代目なんです。(熊手を買うお店は)たぶん、ここやと思う」

お店に到着し、悩むこと10分。

店員:
「商売繁盛、家内安全で!ありがとうございます!」

齊藤さん:
「買って来ました。いいですね、立派!」

8000円の豪華な熊手を選んだ。

齊藤さん:
「今以上にたくさんの人に来て欲しいかなと思います。頑張って仕事をして、なんか遠く行きたいな、旅行。コロナも、もうちょっと落ち着いて欲しいなと思います」

熊手は、繁盛を願って神棚の下に…。

■名物「金ピカ社長」の串カツ店は大行列 参道には油揚げを使った新名物も

 午前9時半。店が並ぶ参道も、少しずつ賑わってきたが、大行列ができている店があった。

おちょぼさん名物、「串カツ 玉家」の揚げたてサクサクの串カツ。

社長:
「はいご苦労さんでーす」

「金ピカ社長」でお馴染みの有名店だ。

名古屋市から来た男性:
「おいしい!最高!ここに来ないと(1年が)始まらない」

Q.いま何本目くらいですか?
男性の息子:
「3本目。あと7本くらいいけそう」

「おちょぼさん」の醍醐味といえば、食べ歩き参拝だ。

参道には、10軒以上の串カツ店が立ち並ぶほか、年末年始には多くの屋台も出ている。

愛知県岡崎市から来た女性(30代・パート):
「食べながらいこうかなと」

東京から来た女性(24・音楽家):
「もう3軒目です、串カツ食べてます」

愛知県愛西市から来た男性(18・大学生):
「うまい」

愛知県愛西市から来た男性(19・大学生):
「ブラボー!」

「おちょぼさん」らしい新名物もあった。

見た目は、油揚げの丸焼きのように見えるが…。

稲沢市から来た男性(32・サービス業):
「すごくジューシーで、和風な感じの餃子でおいしいなって思いました」

餃子の皮の代わりに油揚げで餡を包んだ「稲荷餃子」だ。

今ではこれが目当てという人もいるという。

■「受験合格」に「恋愛成就」願う人…おみくじの「大吉」に笑顔

 午後3時。午後になると、神社の前には道路を埋め尽くすほどの参拝客がいた。

人が増えるにつれて賑わっていたのは、初詣には欠かせない“おみくじ”だ。

千葉から来た女の子(中2):
「大吉でした!学業は泰然自若。落ち着いて取り組めば思いのごとくなる。焦らずしっかり勉強に取り組んで…」

気になる「神様のお告げ」。

愛知県岡崎市から来た中学生と専門学校生の姉妹も、2人そろって「大吉」だった。

愛知県岡崎市から来た女の子(中3):
「受験生なので、ちゃんと高校に受かりますようにってお願いをしました」

そして姉が気になるのは…。

女の子の姉(19・専門学校生):
「恋愛です(笑)。『O型が最も良い』と書いてあったので、O型を狙っていこうかなって思います」

Q周りにいますか?
姉:
「いますよ!ちょっとうまくいけたらいいなって思います」

■初詣は別の神社で…「おちょぼさん」の参道で“毎年恒例の”買い物する2人

 午後5時。日が暮れた頃、正月らしい着物姿の女性がいた。

和服の女性(55):
「違う神社に初詣に行って、こちらの神社は参拝しないですよ。ハハハ」

13年来の友人という2人。「おちょぼさん」では、初詣ではなく、買い物をするのが元日恒例だという。

和服の女性:
「わらびもち、いいですか買って?わらび餅ソフト」

コートの女性(54):
「抹茶と北海道」

食べ歩きのあとは買い物だ。

和服の女性:
「さっき鞄を買ったんですよ。そこに預けているので。めちゃくちゃかわいいですよ。びっくりしますよ」
「これ色違いで!かわいいですよ、大満足です」

大きな花がついたカバンを、お揃いで購入。今年も満喫できたようだ。

■「おばあちゃんが生き返って欲しい…」切なる思いを抱えて新年迎えた一家も

 滋賀県から来た家族がいた。

娘(6):
「もう1回、おばあちゃんが生きてほしい」

息子(7):
「おばあちゃんが生き返って欲しいこと。それだけ」

2022年、2人の子供たちは、大好きな曾祖母、藤本サダ子さん(享年89)がいない1年を過ごした。

2人は切なる思いを抱えたまま、2023年の正月を迎えた。

息子:
「お風呂入らせてくれたりしてたから、もう1回戻ってきてほしかったから…」

母親(28):
「な、悲しいんやな?」

娘:
「いまの話、めっちゃ泣きそうや。いま涙出るわ」

 福を呼び込む、正月の「おちょぼさん」。2023年が皆さんにとっていい年になりますように。