名古屋めしの代表格「味噌カツ」の発祥は、実は名古屋ではなく三重県津市の店という説があります。発祥とされる店の味噌カツを考案したシェフに話を聞きました。

 2023年に「間違いだらけの名古屋めし」という本も出した、名古屋めし取材歴30年の大竹敏之さんは、味噌カツの発祥について…。

大竹さん:
「味噌カツはいくら調べても、いつ・ここのお店がという決定的な証拠となるような文献がないんです。はっきりはわからないというのが実情です。一般的によく言われるのが、『戦後の屋台で、どて鍋の中に串カツを付けたら美味しくて、そこから生まれた』というのが一番よく知られている。岐阜が元祖だという説もあったりとか、三重県の津に元祖とおぼしきお店がある」

 インターネットで「味噌カツ」「発祥」と検索すると、一番上には「味噌カツ発祥の地と言われているのは三重県津市」と出てきました。

 名古屋から車で約1時間半、三重県津市の洋食店「カインドコックの家 カトレア」は、昭和40年(1965年)創業で、ランチタイムは地元客で賑わいます。

【動画で見る】名古屋めしの代表格・味噌カツに“三重県津市の店が発祥説” 老舗洋食店のシェフ「自分が作ったメニュー」

「みそカツ」は、お昼時には客の半数以上が注文する看板料理です。

メニュー表には「日本人に親しまれ愛される洋食メニューをと思い考案され、当店で誕生したのがみそカツです」と書いてあります。

男性客:
「ここが元祖だぞ!と思っています」

別の男性客:
「いつの間にか名古屋名物みたいになっていて、ちょっとパクられた感はありますよね」

 店の味噌カツを開発した、オーナーシェフの谷さんに話を聞きました。

オーナーシェフの谷さん:
「自分で作ったメニューですから、私が発祥の元だと書いてもいいんじゃないかなと。洋食の中の味噌カツとして作っていますから」

カトレアは「洋食の味噌カツ」で、名古屋とは別物だといいます。作り方を見せてもらいました。

肉は豚ロースを使います。余分な脂身や筋などを丁寧に取り除き、冷蔵庫で3時間寝かせてうま味を引き出します。

ソース作りでは、フランス料理のだしにあたるブイヨンを使います。鶏ガラや牛すじ、玉ねぎ、ニンジン、セロリなどを入れて、丁寧にアクを取りながら弱火で6時間以上煮込み、一晩寝かせたものです。

豆味噌にブイヨンを加え、味噌の風味を飛ばさないよう、砂糖と一緒に少しずつ溶かします。仕上げに加えたのはレモン汁。カツの脂が中和され、さっぱりとした味に仕上がります。

豚肉に小麦粉・溶き卵・粗めのパン粉をつけて油へ。約2分でこんがりとしたきつね色になりました。鉄板にカツを乗せ、味噌ソースをたっぷりとかけて完成です。

ナイフとフォークで食べる「みそカツスペシャル」は、ライスとサラダが付いて1300円。

女性客:
「(味が)結構染み込んでいるのに、めちゃくちゃ濃いわけじゃなくちょうどいい味で、すごく美味しいですね」

男性客:
「そこまで甘くないですけど、そこまで味噌辛くもないですし。名古屋の方が甘いんかな?いくらでも食べられるという感じです」

 味も作り方も全然違う、カトレアの味噌カツ。開発の経緯も聞きました。

谷さん:
「(創業当時は)まだ洋食を召し上がる方が少なかったんです。歴史が浅いから、自分で一般の人にも親しまれる洋食メニューを作ろうと決心したんです」

創業した約60年前、洋食は高級料理でした。気軽に食べられる洋食を提供したいと、日本人になじみ深い味噌とポークカツレツを合わせ、このオリジナルの味噌カツが誕生しました。

谷さん:
「やっぱり食文化が発展することは、僕自身が望んでいることで。(名古屋名物になっていても)何の抵抗もないですね」

 味噌カツの発祥に関して、大竹さんは「東海地方の人が食べている豆味噌の特徴は、煮込んで美味しくなる、油となじみが良い、肉や魚の旨味を高めるといったもので、トンカツと相性バツグン。トンカツが普及するにしたがって、東海地方の様々な料理人が『味噌と合うんじゃないか』と味噌カツを開発したのではないか。名古屋に限らず、それぞれの店が味噌カツの発祥地ではないか」と説明しています。

「カインドコックの家 カトレア」は金曜定休で、午前9時に開店し、午後8時がラストオーダーですが、木曜日は午後3時がラストオーダーです。

2023年3月3日放送