小学生の「ランドセルが重すぎる」ことが問題になっている。重すぎるランドセルが、子供の健康や集中力にも影響を及ぼすと指摘する専門家もいる。なぜランドセルは重くなったのか。

■“60キロの大人なら10キロ”…約5キロのランドセル背負って登校する子供たち

 4月6日、待ちに待った入学式を迎えた子供たち。

【動画で見る】教科書やタブレットで重量化…『重すぎるランドセル』前傾姿勢で猫背の子供も 専門家が指摘する“負の影響”

新入生の男子児童:
「楽しみ」

別の男子児童:
「テストで100点取れるか、ドキドキしてワクワクする」

新入生の女子児童:
「(友達を)いっぱい作りたい」

みんなピカピカのランドセルを背負ってご満悦だがいま多くの小学生から「ランドセルが重すぎる」という声があがっている。

名古屋市立の小学校に通う、2年生の宇田偉吹(うだ・いぶき 7)君。

偉吹君:
「暑かった…」

偉吹君の母親・華子さん:
「暑かったね、顔が日焼けしてる」

毎日25分ほどかけて小学校に通っているが、ランドセルの中身を見せてもらうと、教科書に体操服など、たくさんの荷物が入っていた。

華子さん:
「週末と週のはじめの月曜日はたくさんですね。あと当番だと給食の割烹着みたいな、それもプラスされて持って帰ってきます」

実際に重さを量ってもらうと、3.9キロあった。偉吹君の体重は 23キロ。体重60キロの大人に換算すると、10キロの荷物を背負っている計算になる。

手提げ袋や水筒を持った状態で体重計に乗ってみると28キロ近くになり、荷物の総重量は、約5キロもあった。

華子さん:
「5キロねぇ…。そうやって聞くと、それは重たいよなっていう感じですよね。大人で考えても、そんな荷物持って歩くのは嫌だなって思いますね」

■前傾姿勢になり“猫背”の子供も…「重すぎるランドセル」が健康にも影響

「重すぎるランドセル」は「ただ大変」というだけではなく、子供の健康面にも悪影響があるといわれている。

名古屋市西区のかさまき接骨院。

愛知県江南市の小学校に通う熊澤亜柚希(くまざわ・あゆき 11)君は、重すぎるランドセルが原因で、猫背になったという。

亜柚希君の母・裕衣さん:
「きっかけはやっぱり、下校の時にランドセルを背負っている姿を見たんですけど、うつむいてうな垂れているみたいな感じで歩いていたので、ひどいなっていう印象があって」

亜柚希君:
「4教科の教科書とノートと連絡帳とか、筆箱とか体操服とか…。やっぱり重いです」

かさまき接骨院の森田誠院長:
「理想的には、真横から見て耳と方と骨盤、それからくるぶしですね、一直線に並んでいるのが理想的です。床から垂直に線を引いたときに、肩がだいぶ内巻きにでているというのと、さらに耳が前に出ている状態ですので、重心が前に倒れているような状態にはなっています」

肩が前に出て、頭の重心も前に傾いていた。

森田院長:
「まずはストレッチしていきますよ。合図に合わせて深呼吸してくださいね。体がカチコチになっています…」

ランドセルが姿勢に悪影響を与えるという統計データはないが、接骨院の院長は健康や集中力にも影響を及ぼす可能性があると指摘する。

森田院長:
「外見上の問題だけではないと思いますので、猫背に伴って筋肉の緊張だとか、姿勢不良による内蔵が圧迫されたりとかで呼吸が浅くなってきたりすると、運動だとか勉学のところで集中力の部分にもマイナスの影響を及ぼす影響が高い」

整形外科が専門の、名古屋大学大学院の今釜史郎(いまがま・しろう)教授によると、重い荷物を背負い続けることで、腰痛や肩こりなどが生じる可能性があるという。また、ランドセルが重いと前傾姿勢になってしまうため、歩く時のバランスが悪くなり転倒するリスクが高まる。さらに、小さい頃に背骨や椎間板に負担をかけすぎることで、大人になって椎間板ヘルニアになる恐れもあるとしている。

「ランドセル問題」は、子供の健康面にも影響を与えているようだ。

■メーカーも軽量化に注力…ナイロン使い通常より600グラム軽いランドセルも

「ランドセル問題」は、デパートのランドセル売場にも変化を及ぼしていた。

ジェイアール名古屋タカシマヤのランドセルアドバイザー:
「すべてナイロンを使用した、ランドセル型のリュックとなっています」

ランドセル型リュックは、ナイロンを使うことで重さを880グラムに抑えていて、従来の革製のものより600グラムほど軽量化している。(※従来のランドセルは約1.5キロ)

父親:
「これも軽いね」

店員:
「軽量化モデルです」

父親:
「これカッコよくない?僕はなるべく軽い方が良いんじゃないかなって思うんですけど」

別の父親:
「基本的には子供が好きなやつ選ばせたいんですけど、でも軽さももちろん大事。デザインと軽さかな」

軽さのニーズが高まり、多くのメーカーが軽量化に力を入れていた。

この店でも「ランドセル型リュック」を探しに来店する客も増えているという。

■教科書の重さは20年前の“倍以上”に…名古屋市は“改善の考え”示す

 なぜいま「ランドセルの重さ」がこれほど問題になっているのか。原因の一つと言われているのが「教科書が重くなった」ことだ。

2000年、2011年、そして現在使われている2022年の6年生の教科書について、高さを比べてみると、厚みが増えているのがわかる。

重さは、2000年は2.2キロ、2011年は3.3キロ、2022年は4.6キロもあり、20年余りで倍以上に増えていた。

写真やイラストが増え、20年前の教科書と比べるとサイズがひと回り大きく、ページ数も大幅に増えたためだ。

ランドセルが重くなった原因は他にもある。「1人1台のタブレット端末」だ。

2020年から国が進める「GIGAスクール構想」で、タブレット端末が児童1人に1台ずつ配布された。このタブレットを持ち帰ることで、ランドセルが重くなっているという。

名古屋市西区の「なごや小学校」の教室には、タブレット専用の保管スペースがあるが、児童は毎日持ち帰っているという。

タブレットの重さを計ってみると1.2キロあった。

名古屋市立なごや小学校の垣見誠志教頭:
「1.2キロですね。ちょっと意外に重いなという感覚はあります。数字でみると1キロ超えているんだなっていう実感としてありますね」

一部の教科書は「置き勉」で学校に置いたままにしているが、重いタブレットを持ち帰っているため、負担は減っていない。

垣見教頭:
「コロナ禍が広がって休校とか学級閉鎖とかが広がった時も、オンライン授業とかができるようにということで、持ち帰りが多くなるということで行ってきました。保護者の声として、タブレット端末が重いので持ち帰りの数を減らすことはできないかとか、持ち帰らず学校で使うことはできないかという声はいただいています」

タブレットを持ち帰るかどうかは、名古屋市立の小学校の中でも対応はバラバラで、児童にかかる負担の大きさに格差が生じている。

この問題について、市の教育委員会に見解を聞いた。

名古屋市教育委員会の小島治彦指導室長:
「タブレットをどのように活用するかいうことは、学校が主体性を持って工夫して取り組んでいくところかと思いますので、その部分については、教育委員会の方で一律に画一的にこのようにしなければならないというところではないと思います」

タブレットを活用する度合も学校によって大きな差があるため、ルール作りは難しいとしているが「ランドセルが重すぎる」という現状を踏まえ、今後、対応を検討する考えを示した。

小島室長:
「子供たちが学校に通う際に重すぎる荷物というのは健康面でも問題があると思いますし、子供たちの苦痛になるようではいけないと思いますので、そこを十分に認識して取り組んでまいりたい」

子供たちが直面している「ランドセルが重すぎる問題」。実態を踏まえた改善が求められている。

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2023年4月6日放送